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Ultimate Drum Technique #21 Metronome Hack Part 1

  • Text & Score & Video:Hiroshi Matsuo

CHAPTER21:メトロノーム・ハック Vol.1

みなさんこんにちは、松尾啓史です。今回は一風変わった、メトロノーム(クリック)を用いたタイムキープ・トレーニングの方法をご紹介したいと思います。

メトロノームの起源と練習のポイント

メトロノームがない時代は、人間の脈拍がテンポの基準になっていたときもあるようです。もともとはオランダの発明家、ディートリヒ・ニコラウス・ヴィンケルさんが考案し、その後、発明家のヨハン・ネポムク・メルツェルさんが特許を取得。現在私達が学校の音楽室などでよく見かけるような、錘(おもり)がついた機械式のメトロノームが誕生しました。長い間この機械式が主流でしたが、長年の使用による劣化で拍(振り子のタイミング)にズレが生じることもあり、最近では電子式のメトロノームやスマートフォン用のアプリも増えてきました。

メトロノームは楽曲のテンポを正確に把握し、キープするためのガイドとして用いたり、正しいタイム感を養うためのツールとして使用することが一般的です。メトロノームで拍のアタマを感じながら、それに合わせてドラムを演奏することで、確かに正確なタイムでグルーヴをキープできるのですが、それはあくまでキープできている状態であり、本当の意味でのタイム・キープ力が向上しているわけではありません。

もちろんクリックが使用可能な現場であれば、それを用いてブレることなく、正確なテンポでドラム演奏することさえできれば何の問題もないのですが、例えばクリックやガイドとなるものが
使用できない(使用しない)現場であればどうでしょうか? ドラマー自身にテンポ感やリズム・キープ力がなければ、バンド全体のアンサンブルが崩壊しかねません。

そこで今回はメトロノームが提示する拍、テンポをさまざまな角度から捉えて練習することで、最終的にはメトロノームを使用せずとも、正確なテンポ感でドラムが演奏できるようになるためのエクササイズをご用意しました。

クリックが鳴っている部分を単なるメトロノームとして捉えるのではなく、疑似的に別のプレイヤーが奏でる演奏やパルスだと捉えることで、他者とのアンサンブル力向上もねらいます。

メトロノーム活用術
〜Basic編〜

Ex-1はジャズなどでは定番の8分ウラで感じるエクササイズです。オンビートにガイドとなるクリックが存在しないため、拍のアタマのタイミングを自ら提示することになり、自ずとキープ力が向上する超定番のエクササイズです。

Ex-2は1、3拍目(強拍/中強拍)で捉えるエクササイズです。2分音符間隔でのクリックになるため、通常の4分音符で鳴らすクリックに合わせるよりもテンポ・キープが少し難しくなります。


Ex-3は2、4拍目にクリックを位置づけることで、まるでバック・ビートのようなリズムに、グルーヴを重ねていく練習となっています。

Ex-45は16分音符の4つ目と2つ目に、Ex-67は3連符の3つ目と2つ目にそれぞれクリックを捉えて演奏する、ややハイレベルなエクササイズです。雑念が入るとテンポが揺れてしまい、クリックを適切な位置で感じられなくなってしまうので、自分の奏でるビートに自信を持ちながら演奏しましょう。

Ultimate Drum Technique – BACK NUMBER

■CHAPTER 1:モダン・フット・ワーク
■CHAPTER 2:左足のハイハット・コントロール
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年7月号をチェック!


■CHAPTER3:ゴースト・ノート
■CHAPTER4:ワン・ポイント・モジュレーション
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年10月号をチェック!

■CHAPTER5:トラップ・ビート
■CHAPTER6:トラップ・ビート Vol.2
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン21年1月号をチェック!

■CHAPTER7:オッド・グルーヴ
■CHAPTER8:オッド・フィル

■CHAPTER9:メトリック・モジュレーション
■CHAPTER10:メトリック・モジュレーション<奇数分割 ver.>

■CHAPTER11:スティック・トリック Vol.1
■CHAPTER12:スティック・トリック Vol.2

■CHAPTER13:ミスター・ハイハットに挑戦 Vol.01
■CHAPTER14:ミスター・ハイハットに挑戦 Vol.02

■CHAPTER15:チェンジ・アップ/ダウンで緩急自在 Vol.01

■CHAPTER16:チェンジ・アップ/ダウンで緩急自在 Vol.02

■CHAPTER17:レフトボディ・オスティナート Vol.01
■CHAPTER18:レフトボディ・オスティナート Vol.02

■CHAPTER19:リニア・ゴースト Vol.01
■CHAPTER20:リニア・ゴースト Vol.02

◎Profile
まつおひろし:豊富なドラム知識を生かし、リットーミュージックより自身の執筆する教則本『究極のドラム・トレーニング・バイブル』をリリース。現在はリズム&ドラム・マガジンでプレイ分析や執筆を担当している他、ドラム・セット・プレイヤーとしてのみならず、ドラム・スティックを投げたり回したりと視覚的に楽しませるパフォーマーとして、東京ディズニーシーや打楽器アンサンブル・チームでの公演の経歴もある。さらにゲーム音楽を中心としたレコーディングも多岐に渡る。20歳の頃より音楽教室でのレッスンなど、クリニシャンとして後世のドラマーの育成にも積極的に取り組み、吹奏楽からプログレまでジャンルを問わずさまざまなバンドでのライヴ・セッション活動を行っている。

◎Information
松尾啓史 HP Twitter YouTube