NOTES

CHAPTER 3:ダイナミクス・コントロール

みなさんこんにちは、松尾啓史です。今回は“グルーヴの要”となるアクセント・ポジションとスネアのゴースト・ノートにフォーカスします! この2つを工夫しコントロールすることができれば、リズム全体の印象がガラッと変化します。また、アプローチにしっかり馴染んだパターンであれば、必ずしもシンプルである必要はなく、時に複雑でも良いのです。今回はそのバリエーションについても紹介していきます!

“ダイナミクス・コントロール” とは?

アクセント部分の音価とそうでない部分の使い分けは、ショットするときの力加減で調整することも可能です。一般的には、ストロークし始めたときのスティックの高さから打面への距離差によって、自然と音量の強弱をつけることが合理的とされています。

その他に、ショットする場所を打ち分けて、音色そのものを差別化することでもダイナミクスを表現することができます。1打1打に対する音量/音色の変化がリズム・パターンのウネリとなり、それが痛快さのある気持ち良いアプローチにつながっていきます。

ダイナミクスを放棄するということはドラマーとしての役割の8割を捨てているのと同等と言っても良いほど、音量や音色のコントロールはとても重要になってきます。

奏法パターン Ver.1

アクセント・トランスフォーメーション

まずは、アクセント・トランスフォーメーション(Accent Transformation)という奏法について解説していきます。

ビートを刻む際にハイハットやライド・シンバルで表現するアクセントは、通常ボウの部分のみか、ボウとエッジ(あるいはボウとカップ)などの叩き分けで強弱をつけます。ポピュラーな例として、8分音符刻みのオモテのアクセント(ダウン・ビート)や、ダンス系の音楽で用いられるウラ打ち系(アップ・ビート)などのリズム・パターンがあります。これらはシンプルでわかりやすく、ドラマーにとっても気持ち良く演奏できるものなのですが、逆に言ってしまえば、ありふれたリズム・パターンに陥りかねません。

今回はそんな日常的ビートから脱却したい人のために、さまざまなリズムやアクセントのバリエーションを、一味違った切り口で表現できるエクササイズ=アクセント・トランスフォーメーションを紹介していきます。

Check!

アクセント・トランスフォーメーションのエクササイズ

リズム・パターンにはさまざまなバリエーションがありますが、今回は両手でのアプローチを除いて、片手(右手)のみでコントロールできるパターンに限定してみました。リズムやグリッドのバリエーションに対して、使用頻度が少なめの箇所(16分音符の2つ目や4つ目など)にアクセントを設けています。

これらをコントロールすることで、アプローチのポテンシャルを最大限まで引き出したドラミングができるようになりますよ!

奏法パターン Ver.

ビジー・ゴースト

続いては、ビジー・ゴースト(Busy Ghost)という奏法について解説していきます。詳しくは動画をチェックしてみてください!

ゴースト・ノートとは、打面から約3cmくらいの高さからショットするタップ・ストローク(ロー・ポジションからショットするストローク)を用いた奏法のことを言います。主にリズム・パターン中で、バック・ビートとなるスネアの合間に味つけ的なウネリを加えるために用いられるアプローチです。もちろんパターンの中だけでなく、フィル・インなどでもゴースト・ノートを交えることも多く、もはやドラムの常套テクニックとして確立されている奏法ですね。

16分音符などの短い音間隔でメイン・ノートの直前あるいは直後にゴースト・ノートを入れると、オープン・リム・ショットなどを絡めたパターンのコントロールが難しく、好んで用いられることは少なかったのですが、近年は逆にそのコントロールの難しさを逆手にとって、新しさを追及したアプローチなども積極的に行われるようになってきました。これをビジー・ゴーストと呼びます。

Check!

ビジー・ゴーストのエクササイズ

ここでは、そんな前衛的なアプローチを含んだ応用パターンをいくつかピック・アップしてみましたので、ぜひチャレンジしてみてください。決して派手なテクニックではないですが、グルーヴの印象を大きく左右します。

まとめ

生理的に困難とされる動きにこそ、新しいアイディアや閃きが生まれるチャンスが眠っています。自分の中の既成の概念から一歩進んだドラミングに挑戦することで、新しい可能性が広がっていくはずです。みなさんもぜひ今回のテクニックを自分のモノにして、周囲とは一味違うユニークなプレイ・スタイルを形作っていってくださいね!

Ultimate Drum Technique – BACK NUMBER

CHAPTER 1:モダン・フット・ワーク
CHAPTER 2:左足のハイハット・コントロール
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年7月号をチェック!

◎Profile
まつおひろし:豊富なドラム知識を生かし、リットーミュージックより自身の執筆する教則本『究極のドラム・トレーニング・バイブル』をリリース。現在はリズム&ドラム・マガジンでプレイ分析や執筆を担当している他、ドラム・セット・プレイヤーとしてのみならず、ドラム・スティックを投げたり回したりと視覚的に楽しませるパフォーマーとして、東京ディズニーシーや打楽器アンサンブル・チームでの公演の経歴もある。また、サウンド制作スタジオ「INSPION」のメンバーでもあり、ゲーム音楽を中心としたレコーディングは多岐に渡る。20歳の頃より音楽教室でのレッスンなど、クリニシャンとして後世のドラマーの育成にも積極的に取り組み、吹奏楽からプログレまでジャンルを問わずさまざまなバンドでのライヴ・セッション活動を行っている。

◎Information
松尾啓史 HP Twitter YouTube