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Pick Up Next Generations #3 -Corey Fonville

  • Score & Text:Yusuke Nagano Illustration:Yuji Shiozaki

#3 Corey Fonville

形を変えながら進化していく音楽の中で、めきめきと頭角を現す“新世代”のドラマー達。本連載では、次代を担うであろう、注目のプレイヤーをピックアップ! YouTubeで観られる映像をもとに、彼らのドラミング分析をお届けしていく。今回取り上げるのは、グラミー賞を獲得したトランペット奏者らと共演を重ね、かのネイト・スミスもプッシュしているという実力派ドラマー、コーリー・フォンヴィル。シンバル・メーカー、ジルジャンのトップ・エンドーサーが出演するライヴ・イベントの映像から、彼のプレイの魅力に迫ってみよう。

パルスが絡み合うようなグルーヴと
抑揚豊かなリズムの装飾センスが生む心地良さ

コーリー・フォンヴィルは、バージニア州リッチモンドを拠点とするファンク・フュージョン・グループ=ブッチャー・ブラウンのメンバーとして活躍するドラマー。2歳からスティックを握り、父親の影響でジャズ、R&B、オルタナティヴ、ファンクなどを聴いて育ったといいます。

高校を卒業後にはニューヨークのニュー・スクールで音楽を学び、その後カリフォルニア州にあるデイヴ・ブルーベック・インスティテュートに学習拠点を移動。その後知り合ったグラミー賞受賞歴のあるトランペッター、ニコラス・ペイトンのツアーやレコーディングに参加したことがきっかけとなり、2014年にブッチャー・ブラウンの1stアルバム『ALL PURPOSE MUSIC』をリリース。注目度を上げていきます。

今回の分析は、ジルジャンの動画“Zildjian Underground”の中で演奏しているヒップホップ系の曲「Yum Yum-Dila instrumental」から検証していきます。

抑揚を操作する
ハイハット・ワーク

Ex-1(動画内1:05〜 ※クリックすると分析箇所の映像を再生できます)のパターンは、小気味良いアクセントやオープンで変化を加えて、抑揚を操作するハイハットが印象的。タイトなキックが導く4分のサイクルと、ハイハットの細かい躍動が複合的に重なり合う流れも抜群の心地良さです。

ゴースト・ノートを効果的に用いて
楽曲の雰囲気に変化をつけるプレイ

Ex-21:24〜)では、基本の流れを維持しながら、ゴーストを多用して雰囲気を変えるプレイが秀逸。音量バランスの巧みさや、連打における微妙なハネを含むフィール。そして2・4拍の直後にゴーストを叩く際の、スティックを打面に押しつけて余韻を止めるような動きも見逃せません。

シンバルを叩く際の
鮮やかな身のこなしに注目

Ex-31:54〜)は、2枚のZildjian FX stackを用いて変化を加える部分。1小節目の4拍目では、腕をクロスし、左手で奏者右側のシンバルを叩きますが、その一瞬の身のこなしに身体の柔軟性がうかがえます。2小節目ではツブ立ちの良い32分を絡めて、リズムを小気味良くプッシュします。

ドライヴ感を演出する
リズム・チェンジの妙技

Ex-4は、2:06から少しアップ・テンポにリズム・チェンジしたパート。8″ FX stackの刻みを軸としたハネのあるリズムとなり、トルク感に満ちたツブ立ちの良いキックが、リズムを勢い良く邁進させます。2小節目のデッドなフロア・タムの絡め方にもセンスが光ります。

まとめ

大小のパルスが複合的に絡み合うようなグルーヴ。そして多彩な音色を効果的に織り混ぜながら、抑揚豊かにリズムを装飾するセンスが抜群のコーリー・フォンヴィル。その心地良さは、共演者達から自然にこぼれる笑顔からも伝わってきますが、あらためて“良いリズムは人を幸せにする”ということを実感させてくれます。

昨年はクリスチャン・スコット(tp)のバンドで来日するなど、活動の幅も広がっている印象。今後さらに注目度が上がっていく、要チェックのドラマーであることは間違いないでしょう。

【Another Playlist】

今回取り上げた映像の他にも、YouTubeには数々の動画がアップされている。こちらもチェックしてみよう!

◎Information
Corey Fonville Twitter Instagram
Buther Brown HP

◎Profile
長野祐亮(Yusuke Nagano):15歳でドラムを始め、つのだ☆ひろ、そうる透に師事。大学在学中からプロ活動をスタートし、数々のレコーディングやアーティストのサポートで活躍する。現在はインストラクターや執筆活動を通して後進の指導も行っている。「ドラマーのための全知識」、「1日15分!自宅でドラム中毒」など数多くの著書がある。

◎Information
長野祐亮 Twitter

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