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Column – アプリで変わるドラム・ライフ Gadget for Drummers ♯3

  • Text:Makito Yamamura Photo:milindri(iStock) Illustration:PCH-Vector(iStock)

みなさんいかがお過ごしでしょうか。ドラマーのためのデジタル・ガジェット・コーナー、前回までのメトロノーム、練習お助けアプリに続き、今回は変拍子がテーマ! 今や変拍子を使ったアレンジ&アプローチは一部のマニアックなジャンルだけのものでなく、若いドラマーの変拍子スキルも上がってます。そんなドラミングに役立つアプリを紹介します!

Vol.03 変拍子を扱えるメトロノーム&ガイド・アプリ

前回紹介したアプリ達は、メトロノームの機能を軸にしながら、ドラマーの演奏形態、トレーニング・メソッド活用法などに合わせて一段進化したものでした。今回は変拍子がテーマですが、シンプルなアプリでも、4拍子の他、3、5、6、7などの拍子を設定できるものは多くあります。しかし、実際の楽曲には、拍子が移り変わるようなものや混合拍子、23/16などのさらにマニアックなアレンジもあります。

そんな拍子を設定していくのは、ある意味マスター・リズム・トラック作成とも言うべき範疇でもあり、今までならシーケンサーやDAWソフトなどで組むしかなかったような機能ではあります。それだけのことをするとなれば、多少はアプリの操作や設定も複雑になりますが、使ってみてわかってくれば、なるほどの世界で、そしてまたこれからのトレーニングやパフォーマンスの可能性を感じさせてくれます。

■変拍子メトロノーム(Irregular METERonome)/komaki(iOS版:610円 Android版:600円)

プロドラマーKOMAKI氏プロデュースによる、その名も「変拍子メトロノーム」。8つのセグメントが並び、スワイプでそれぞれ0〜8まで設定。これが拍子の分子になります。4+3+7+5+4+1+3+6のように、異なる拍子を連結した混合拍子、変拍子トラックが簡単に組み立てられます。3種類のクリック音、4分、8分、16分、3連のサブディバイズにダウンビート(1拍目)のアクセントの音量を個別に設定できます。

拍子の分母は基本4分と思われますが、テンポが20〜400まで設定できるので、たとえば4/4+5/8みたいなことをしたいときには、4+4+5としてテンポを倍にするなど、いくらでも対応できるでしょう。そして、作成したものは保存したりSNSでシェアできます。やたらと設定を複雑にしていくよりも、非常に使いやすい形のまま拍子設定の自由度を上げているのが、とても良いアイディアだなと思います。プログレッシヴなドラミングのお供に!

変拍子メトロノーム(Irregular METERonome) Apple Android

■Metronomics Metronome/John Nastos(iOS版:610円 Android版:520円/App内課金あり)

“サブディバイズ帝王”という言葉を連想しました……。これはなかなかにマニアック&ヘヴィなアプリです。海外のレビューでも高評価ですが、日本ではマイナーな感があります。正直、今のところ現実的に必要とされる範疇を軽く越え、どこまでできてしまうんだろうというほどです。

操作の基本は、拍子、テンポの設定と、“Subdivision”パートの組み合わせですが、それぞれの設定範囲やカスタムの幅が広いです。拍子はトップ画面の矢印クリックで1/4から199/4拍子まで設定することができました。こんなに使うんでしょうか(笑)?

拍子をタップすると詳細設定となり、“Segment”を増やして拍子を追加することができます。ここでの設定でも、拍子の分母、分子ともに1〜200まで設定できます(Pro版にアップグレードが必要な設定もあります)。これによって混合拍子も設定自在なわけですが、98/199拍子とか、いったいどうなるのかと思います……。

Subdivisionパートによって、設定した拍子とテンポでどんな音符を鳴らすかを決めます。4分、8分、3連など代表的な設定のほか、クラーベなどの音型も用意され、Customでは100/100の設定やシーケンスで音型を組むことも可能となっていて、スライダーが増えていくほどに、途方もないほどの複合的なサブディバイズが可能です。掲載した画像は、5/4+23/16という混合拍子の上で、4分、8分、3連、付点8分、2分、7/5、2−3ルンバ・クラーベがそれぞれ小節線を越えながら一斉に鳴り響きます(笑)。

 高機能のPro版も含め、このアプリの使い方で1冊本が書けそうですが、アプリ画像を見て“これは!”と思うマニアックな人は、このアプリで新たな世界へ飛び立てますね!

Metronomics Metronome Apple Android

■PolyNome: THE Metronome/PolyNome Ltd(iOS版:1,220円)

PolyNome(=多項式)と聞いてドラマーがイメージできるものは何と申せましょうか。ポリリズムや変拍子、割り切れない音符の組み合わせなど、ドラマー界にも数学や物理をイメージさせる要素はありますが、これは学者の計測&研究用ツールのような印象ですらあります。

まず基本的なメトロノーム機能ですが、なんとBPM1〜2000まで設定可能です。スタートしてから何小節経過したか、秒数も表示されるのは練習に便利ですね。Seq(シーケンス)を2つ設定でき、基本の4分音符と各種音型、ポリリズム、複合拍子、そして4/4で6拍と5/4拍子の組み合わせのようなこともできます。

音符や音型の設定は自分でパターンを組むこともできますが、メニューでポリリズムを選択すると、1〜60:1〜32の比率で設定することもできます(画像のものは23:15で、15/4拍子1小節を23で割った音符となる)。またパターン・エディットの画面では小節や拍の追加も可能で、15/4のシーケンスと、15/4の1小節を23分割した音符+2/4(3連と16分)で進行するシーケンスが同時に進むという、ある意味インドのコノコルでも聴いているような複雑系が可能です。

 そんな超マニアックな面もありますが、GAP CLICKのようなトラックも用意されていたり、ドラム・セットのサウンドでリズム・パターンを鳴らす機能もあり、プリセットには著名な曲のリズム・パターンが登録されています。手順的なシンボルとの表示で、練習やパターン作りにも活用できますね。

PolyNome: THE Metronome Apple

番外編■GAP CLICK App by Benny Greb/Sun Rising Application Development LLC(iOS版:370円 Android版:近日発売予定)

最後に、原稿作成中に飛び込んできた、ベニー・グレブ氏監修メトロノーム・アプリの発表ニュース。ベニー本人が登場するオフィシャル動画を観てもらえれば機能も一目瞭然ですが、ギャップ・クリック系のトレーニングに特化したアプリで、ドラマー達が慣れ親しんだ練習方法に対応する機能が盛り込まれています。

“CLICK”セクションと“GAP”セクションそれぞれに1〜8小節を設定し、何小節クリックを鳴らして、その後何小節は休符、8分や3連、16分のウラの音符が鳴るように設定できます。テンポ・キープ・トレーニングはとても良い練習法のガイドになるでしょう。

ベニー氏は古くからアプリ系には関わってきていて、ファンク・ドラミングのアレンジ・アプリなどもよくできているものでした。このアプリも、デザインがとても良く、そしてシンプルな操作で活用法は多いという、実に彼らしいインテリジェンスとセンスを感じさせてくれますね。

GAP CLICK App by Benny Greb Apple

変拍子アプリの比較

今回のアプリはどれも強者揃いですね。正直、Metronomics MetronomePolyNomeは、機能や設定の幅がありすぎるほどです。一般的なテンポ・ガイドとしては使うには高機能過ぎる面もあるし、どのアプリも有料ではあるのですが、オリジナルかつ未知な発想をしたときに、それを検証できるツールがあることの意味を考えると、マニアック・ドラミング好きなら持っておいて損はないものばかりと思います。

変拍子メトロノームGAP CLICKは、実に使いやすく、つい起動したくなります(笑)。日々の練習法にもちょっとしたアイディアを加えてマンネリ化防止にも役立ちそうです。

今まで、自分自身の練習やレッスンなどでメトロノームを活用しながら、テンポ・キープというよりも小節数によって拍子が変わるようなときのガイドとして手軽なものがあれば……混合拍子のガイドがあれば……と思うことはありました。これから、レッスン生などにもインストールさせて、それを使った自習メニューとか作ろうかと考えたりもします。

まさに今はそうしたアイディアがアプリで実現されていて、こうしたものを使うことで、今まで“そんなの考えてみてもできっこねぇ”と思っていたものが、比較的容易に確認/練習できるようになると思います。

まとめ

いやはや、ドラム界、リズム界の可能性はどんどん広がりますね。もはや人間的発想を越えた感もありますが、しかしドラマーだけでなく、他の楽器、アレンジャー、作曲家もこうした環境を手に入れるわけです。

個人的には、マニアックなことをやりさえすれば練習になる、演奏のレベルが上がるなどとは思っていませんが、振り返れば以前は特殊と思われていたような変拍子や複合拍子も、今ではかなり市民権を得ていたりしますから、今は“何か複雑〜”と思っても、それが当たり前になる時代も来るのかもしれませんね。

さて、まずはドラマーにとっての基本中の基本であり、なんだかんだお世話になることの多いメトロノーム周辺をやってきましたが、次回は少し毛色を変えていきたいと思います。お楽しみに!

◎Profile
山村牧人(Makito Yamamura):ドラム・マガジンでライター・デビュー。セミナー記事や教則本出版、ドラム教室、専門学校、音大のレッスンを通して数多くのドラマーを輩出。リズム教育研究所、尚美ミュージックカレッジ、横浜ミュージックスクール非常勤講師。



◎Information
山村牧人 Twitter

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