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Column – アプリで変わるドラム・ライフ Gadget for Drummers ♯5

  • Text:Makito Yamamura Photo:milindri(iStock) Illustration:PCH-Vector(iStock)

みなさんこんにちは! ドラマーに役立つガジェット周辺情報、メトロノームやチューニングのアプリを紹介する本連載。今回は、アプリそのものの機能紹介というよりは、ドラマーにとってスマホやガジェットはどんなふうに役に立つか、どんな使い方があるかを軸に、そんなときにこんなカテゴリーのアプリを使っていこう、という流れで進めてみようと思います。

Vol.05 楽しく叩くためのモチベーション&インスピレーション・アプリ

ドラムを練習したい、奏法を習得したい、もっともっと上達したい……。ドラムの基礎と言われるスティックの使い方、ペダルのコントロールなど楽器の扱いに慣れてくると、見えてくるのは音楽そのもの。車で言えば、運転までの道のりと、運転ができるようになってからの世界でしょうか。多くのドラマーを見ていると、普段から音楽を聴いて感じ入ることで蓄積された、その人の音楽に対するバック・ボーンが大事になってくると感じます。

ドラムだけでなく、曲が書ける、ピアノやギターが弾ける、歌える……そんなドラマーを見ていると、演奏のアプローチやアイディアが曲に根ざしていて音楽的だなと感じることがあります。ドラマーもメロディへの理解、コード進行やスケール、曲のストーリーを考えること、そもそも曲ってどうなると曲になるんだろうとか、今この瞬間この演奏に必要なものは何だろうか、それは言ってみれば音楽やアンサンブルの“しくみ”や“設計”に意識を持つことではないでしょうか。

ピアノを覚えて譜面を書いて曲を作る……それは王道でありながら、なかなかハードルが高くもあります。パソコンの音楽ソフトが誕生し、打ち込みで音楽が作れるようになってから久しくなりますが、それもまた機材を揃えたりパソコンを使いこなすハードルもありました。そして今はスマホがあります! ベテランの作曲家にはかなわずとも、楽しく音楽の設計をイメージしてドラムの演奏を楽しむことができます。今回はその入り口を攻めてみましょう。それぞれアプリは参考を1つ紹介しますが、自分のスマホで使えるものをいろいろ試してみてください。

1)コピー・アシスタンス

■mimi copy/:ART Teknika Inc.(iOS:610円 *アプリ内課金あり)

音楽は音楽から学ぶもの! まず自分の耳で聴くのが大事! しかし……カッコいい曲ほど難しかったり、どうなっているのかわからなかったり。昔はレコードからカセット・テープやオープン・リールにダビングして、何度も繰り返し再生したり、遅く再生したり……いろいろ苦肉の策がありました。音楽再生アプリの中でも、演奏する人に特化したものはとても便利ですね。ここで紹介するmimi copyは、曲データをアプリに取り込むと波形で表示されます。拡大表示もできるので、ループ設定などもかなりきっちり設定できて、同じ箇所を流しながら何度も練習したいときに本当に便利です。そして、ピッチを変えずにテンポを上下することで、まさしく耳コピの精度が上がるし、練習のときも曲を再生しながらテンポを落とすことができるので、本当に便利です。

余談ですが、コピーするときに大事なのは、各楽器の音、特に低音がよく聴き取れるようなスピーカーやイヤホンを使いましょう。耳が育ちますよ!

mimi copy Apple

2)メロディ遊び

■Oval Synth/OVAL SOUND, SL(iOS:無料)

メロディや和声を学ぶには、ピアノやギターが最適でしょうけれど、もう少し打楽器感覚で遊べるものはないでしょうか。ギターや鍵盤の画像をタップして音階を鳴らすアプリもありますが、音階を演奏できる打楽器=スティールパンのようなアプリがOval Synthです。7つのエリアに音階が割り当てられていて、音色や音階もさまざまに、ドラムやパーカッションのサウンドも用意されています。シンプルなインターフェースながら、サウンドのエディットやMIDI機能などもなかなかに充実しています。

ドラマーで言えば、タムをたくさん並べてメロディアスに演奏するイメージで、リフや短いメロディのアイディア・スケッチとして遊んでみるのはどうでしょう。リズム・パターンやフィルインのインスピレーションも広がるし、ラテン系のイメージ・トレーニングなんかには特に有効でしょう。“キミのドラムを聴いていると、メロディやオーケストレーションを感じるよ”なんて褒められたら最高ですね!

Oval Synth Apple

3)フレーズで遊ぶ

■KORG iKaossilator/KORG INC.(iOS版:2,440円 Android版:2,020 円 *アプリ内課金あり)

ピアノやギターは、ある意味殿堂入りした楽器ではありますが、世の中にはいろいろな実験的な楽器も多くあります。音階、音色、奏法など既存の楽器の制約や難しさを超えるような試みや、そもそもこれは楽器なのか?というようなものもあったり。逆説的に言えば、打楽器では木箱ですら楽器にしてしまったりするわけですが。それは電子楽器やパソコン登場以降も試みが続いていますが、スマホのタッチ・パネルが操作性を変えるポイントになりました。タップして音を出す、なぞって音を変化させる。直感的な楽器の楽しさがありますね。

KAOSSILATORは10年以上前に発表された電子楽器ですが、スマホに移植されてより手軽に使えるようになりました。音階とかわかんねぇ〜! ビートにガンガンノりてぇ〜!っていうときには、これを立ち上げてプリセットを再生、指でウニウニするだけでもイケます! こうしたアプリのフレーズは、ドラム・ソロのバックにするのも楽しいですね。

KORG iKaossilator Apple Android

4)曲を作る/アレンジする

■GarageBand/Apple(iOS:無料 *アプリ内課金あり)

音楽の打ち込みには、シーケンサー→パソコンのシーケンス・ソフト→DAWという流れがありますね。大きな画面、専用キーボードなどを使ったデスクトップ環境も素晴らしいですが、スマホやタブレットでも驚くほどの機能を持ったアプリがあります。メロディやコード進行を曲に仕上げていく……のはもちろんですが、ドラマー的には変拍子アレンジや、奇数音符やポリリズムの構築に、メトロノームやリズム・パターン・アプリに比べて操作的には多少手間が必要でありますが、より自在と感じます。

GarageBandは、デスクトップ版とスマホ/タブレット版とでは機能の違いもありますが、プリセットのループを組み合わせたり、ドラマー機能である程度自動でリズムを生成してくれたり、手軽に音楽を組み立てて、録音やミックスも可能。プロ用ツールを持ち出さなくてもけっこうなことができてしまいます。音楽の設計に頭が馴染んできたら、ぜひこうしたシーケンス/DAWソフトへ!

GarageBand Apple

まとめ

アイディアっていうのは、頭の使い方を変えたとき、考えるのをやめたときにふっと出てきたりすることがあると思います。古い言い方をすれば、スマホをいじっていてもドラムはうまくなんねぇんだ!とも思いますが、お手軽に音で遊ぶことも大事だと思いますし、自由な発想、新しいアイディアというものが、どれだけ演奏を発展させるか。それは練習のプロセスも同様でしょうし、何より創造の喜びだなと思います。

1960年代のロック・バンド隆盛以降から考えると60年近く、バス・ドラムとスネアの2&4拍のスタイルも今だに愛されています。オリジナルなメロディを模索する面もあれば、カヴァー曲やリミックスなど過去の作品を元にした音楽制作もあり、そこに作り手やリスナーのポリシーも垣間見えつつ、楽曲制作やアレンジもさまざまではあります。それに加えて、今ではスピーディな映像投稿にもシフトしてみたり、音声だけのコミュニティも出てきたり。SNS自体が壮大な創作アプリの領域になり得るようでもあります。

最後に、先日残念ながら亡くなられたチック・コリア氏の、SNSで公開された言葉を以下に引用します。

「演奏したい、作曲したい、パフォーマンスしたいと思っている人は、そうしてほしいと願っています。自分のためではなくとも、他の人々のために。世界はより多くのアーティストを必要としているだけではなく、それは単にとても楽しいことなのだから(抜粋)

次のヒット曲を産むのは、“今はドラムしか叩けないし、作曲とかアレンジとかあんまわかんねぇ〜”なんて思っているアナタかもしれませんね! 音楽とドラムを楽しみましょう!

Gadger for Drummers

Vol.01 ドラマー“必須”のメトロノーム・アプリ!
Vol.02 ドラマーの練習お役立ちアプリ!
Vol.03 変拍子を扱えるメトロノーム&ガイド・アプリ
Vol.04 チューニングに役立つアプリ

◎Profile
山村牧人(Makito Yamamura):ドラム・マガジンでライター・デビュー。セミナー記事や教則本出版、ドラム教室、専門学校、音大のレッスンを通して数多くのドラマーを輩出。リズム教育研究所、尚美ミュージックカレッジ、横浜ミュージックスクール非常勤講師。



◎Information
山村牧人 Twitter