NOTES

CHAPTER6:トラップ・ビート Vol.2

みなさんこんにちは、松尾啓史です。今回は、前回に引き続き、トラップ・ビートの分類について踏み込んでいきたいと思います。それぞれのリズム・パターンの特性とルールのようなものを感覚的に掴むことができれば、実際の演奏時にも楽曲に合わせた適切なスタイルをチョイスし、リズム・パターンに統一感を持たせることができるようになります。ぜひ覚えておくと良いでしょう!

“トラップ・ビート”はどんなジャンルの音楽で使う?

トラップ・ビートはさまざまな音楽シーンで使用されており、トラップ・ミュージックという限られた音楽ジャンルに限定されるものではなく、EDMなど近しいジャンルの音楽にも積極的に用いられています。世界の大ヒット・ソングにトラップ・ビートを組み込んだ楽曲も多く、プリミティヴなHIP-HOPトラップの概念から徐々に形を変え、我々の馴染みのある音楽ジャンルへ浸透し、ポピュラー化しつつあるのは間違いないでしょう。そもそも何を持ってトラップかというのは未だに曖昧なところでもあり、いち音楽ジャンルではなく生き方そのものとして唱えている者もいるくらいに、トラップという言葉自体が複数の定義を持っていると考えて良いでしょう。

奏法パターン Ver.1

ダブルタイム・トラップ・グルーヴ

バック・ビートとなるスネアが1小節に2打、2拍目と4拍目に存在するトラップ・ビートを“ダブルタイム・トラップ・グルーヴ”として定義されています。前回ご紹介したホールタイム・トラップ・グルーヴとは対照的にスピード感を演出する際に効果的なグルーヴです。

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ダブルタイム・トラップ・グルーヴのエクササイズ

ダブルタイム・トラップ・グルーヴはパターンが1小節で解決するので、実際にドラミングに取り込む際は同じフレーズを永遠とループさせても良いですし、毎小節違うパターンをつなぎ合わせて演奏しても良いでしょう。いずれにせよ、ビートとして成立させられるので非常に使い勝手が良いです。自分でパターンを構築する際は、スネアを1小節内でバック・ビートの2発のみに限定して組み立てることで、より明確に他のグルーヴと差別化することができるでしょう。

他のトラップ・グルーヴ同様、ハイハットのパターンは一定ではなく複数のグリッドを組み合わせる必要があるので、楽曲のテンポに応じて片手で刻むのか、それとも両手に手順を分散するのかを臨機応変に判断して演奏しましょう。

奏法パターン Ver.2

アザータイム・トラップ・グルーヴ

これまでご紹介したトラップ・ビートの他にも、さまざまなビートの種類があり、ここではそれらを“アザータイム・トラップ・グルーヴと総称します。

まず“スリーサイド・トラップ・グルーヴ”は、3-2クラーベの“3”の部分のモチーフをなぞるような形で構築されたリズム・パターンです。ちょうどブラジルのバイオンのグルーヴにも似ていますね。

次に“6/8トラップ・グルーヴ”は、その名の通り8分の6拍子で展開され、4分の4拍子とは違った独特の時間感覚とクールさを兼ね備えているパターンとなります。

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アザータイム・トラップ・グルーヴのエクササイズ

“スリーサイド・トラップ・グルーヴ”は、必ず毎小節の1拍目に強拍となるキックが存在することが大きな特徴です。必ずしもキック・ノートが3打しか存在しないのではなく、補助的な音符を含めてパターン全体のノリが3-2クラーベのAサイド(3)ようなイメージであるということです。

“6/8トラップ・グルーヴ”に関しては、8分音符1つ分がどのように細分化されているかを見極めることがスムーズに演奏する為のコツになります。譜面にイマジナリー・バーラインを引いて練習すると分かりやすいかもしれません。

まとめ

今回のトラップ・ビートというリズム表現を、まったく新しいスタイルの演奏方法だと構えるのではなく、調味料の1つとしてあなたのドラミング・ボキャブラリーに加え、役立てていただければと思います。

Ultimate Drum Technique – BACK NUMBER

CHAPTER 1:モダン・フット・ワーク
CHAPTER 2:左足のハイハット・コントロール
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年7月号をチェック!


■CHAPTER3:ゴースト・ノート
■CHAPTER4:ワン・ポイント・モジュレーション
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年10月号をチェック!

■CHAPTER5:トラップ・ビート

◎Profile
まつおひろし:豊富なドラム知識を生かし、リットーミュージックより自身の執筆する教則本『究極のドラム・トレーニング・バイブル』をリリース。現在はリズム&ドラム・マガジンでプレイ分析や執筆を担当している他、ドラム・セット・プレイヤーとしてのみならず、ドラム・スティックを投げたり回したりと視覚的に楽しませるパフォーマーとして、東京ディズニーシーや打楽器アンサンブル・チームでの公演の経歴もある。また、サウンド制作スタジオ「INSPION」のメンバーでもあり、ゲーム音楽を中心としたレコーディングは多岐に渡る。20歳の頃より音楽教室でのレッスンなど、クリニシャンとして後世のドラマーの育成にも積極的に取り組み、吹奏楽からプログレまでジャンルを問わずさまざまなバンドでのライヴ・セッション活動を行っている。

◎Information
松尾啓史 HP Twitter YouTube