NOTES

CHAPTER11:スティック・トリック Vol.2

みなさんこんにちは、松尾啓史です。今回も引き続き、魅せるドラミングにフォーカスして“スティック・トリック”を用いたアプローチをレクチャーしたいと思います。前回とはまたひと味違う、ドラム・セットに応用可能な新たな2種類のトリックを用いたパフォーマンスを解説していきます!

2種類の“スティック・トリック”の奏法解説!

まず、Part.4 の動画では、今回ご紹介する“フリップ”、“トス”の奏法を解説していきます。

▲“フリップ”や“トス”のバリエーションを一挙紹介! 奏法ポイントや“魅せ方”もお伝えしています。

これからスティック・トリックに挑戦したい方や、いきなりドラム・セットに応用してやるのは難しいと考えている方は、ハイハットでのパフォーマンスに挑戦してみてはいかがでしょうか?

ドラム・セット上でのパフォーマンスと言えば、そのパイオニアでもあるマックス・ローチさんが有名ですが、通常のドラミングはもちろんのことハイハット1つで魅せる“ミスター・ハイハット”としてもその存在を確固たるものとして現代まで語り継がれています(演奏中の映像も残っています)。ハイハットという楽器はまさにドラマーならではの楽器であり、フット・オープン/クローズが可能なぶん、スネア・ドラムなどよりもある意味では表現の幅を広げることができるというところがポイントでもあります。さらにはハイハット・スタンドそのものを叩いたり、ボトム/トップでのシンバルの叩き分け、手でミュートするなどさまざまな角度からのパフォーマンスできます。

トリックをドラム・セットへ導入するための第一歩として、ハイハットのみでまずは叩きながら遊んでみるというのも良いかもしれません。

奏法パターン Ver.1

フリップ

“フリップ”というのは放り投げるとか指ではじくという意味が含まれますが、一般的な“スティック投げ”と呼ばれる部類の技のことを表します。投げるという意味では後に紹介する“トス”とも似ていますが、フリップはただ投げるのではなく、主に回転の軸を設けた投げ技のことを言います。

投げ方に関してもさまざまで、1回転や半回転、逆回転投げなどのバリエーションも豊富であり、トワール系の技と同様に昔から多くのドラマーに親しまれているスティック・トリックです。注意点としては、当然手から離れる技なので、演奏中にスティックを落下させてしまうリスクがあります。目視せずともスティックを投げられる不安を感じない段階まで練習をしておくことをオススメします。また、フリップ系の技を行う際には、万が一スティックが落下してしまっても演奏がストップしないように、必ずスペアのスティックを用意しておくようにしましょう。

Check!

フリップ のエクササイズ

奏法パターン Ver.2

トス

“トス”はフリップと同様に投げ技ではありますが、こちらは回転をかけて投げるというよりも、もう少しシンプルに放り投げるようなイメージの技を総称したものです。実際に投げ捨ててしまうと演奏がストップしてしまうので、左右のスティックが入れ替わるような形になるところが判断ポイントです。またスティックを投げ渡しながら持ち替えて、ジャグリングのように叩く奏法そのものをトスと呼んだりもします。

今回は、ノーマルなトスとそこに少し変化を加えた“スパイダー・トス”や“オーバヘッド・トス”という技を使って、ドラム・セットへと応用してみたいと思います。

スネア・ドラムなど自分が座っている位置から近い楽器で、コンパクトに技を繰り出す方がコントロールもしやすくオススメです。それに留まらず、タムなどを絡めた高低差のあるフレーズにも展開することができるので、余裕のある方はチャレンジしてみましょう。スティックが入れ替わる技の性質上、両手で同時にトリックを行うのがマストになるため、フリップ系よりも少し難易度は高くなると思います。

Check!

トス のエクササイズ

まとめ

これまでご紹介したスティック・トリックはほんの一例にすぎません。今回を皮切りにパフォーマーとしての道を更に極めたい方は自分で新たに技を習得して、それらをどのようにドラム・セットへ応用できるのかを考えてみると面白いかもしれませんね。

Ultimate Drum Technique – BACK NUMBER

CHAPTER 1:モダン・フット・ワーク
CHAPTER 2:左足のハイハット・コントロール
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年7月号をチェック!


■CHAPTER3:ゴースト・ノート
■CHAPTER4:ワン・ポイント・モジュレーション
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年10月号をチェック!

■CHAPTER5:トラップ・ビート
■CHAPTER6:トラップ・ビート Vol.2
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン21年1月号をチェック!

■CHAPTER7:オッド・グルーヴ
■CHAPTER8:オッド・フィル

■CHAPTER9:メトリック・モジュレーション
■CHAPTER10:メトリック・モジュレーション<奇数分割 ver.>

■CHAPTER11:スティック・トリック Vol.1
■CHAPTER12:スティック・トリック Vol.2

◎Profile
まつおひろし:豊富なドラム知識を生かし、リットーミュージックより自身の執筆する教則本『究極のドラム・トレーニング・バイブル』をリリース。現在はリズム&ドラム・マガジンでプレイ分析や執筆を担当している他、ドラム・セット・プレイヤーとしてのみならず、ドラム・スティックを投げたり回したりと視覚的に楽しませるパフォーマーとして、東京ディズニーシーや打楽器アンサンブル・チームでの公演の経歴もある。また、サウンド制作スタジオ「INSPION」のメンバーでもあり、ゲーム音楽を中心としたレコーディングは多岐に渡る。20歳の頃より音楽教室でのレッスンなど、クリニシャンとして後世のドラマーの育成にも積極的に取り組み、吹奏楽からプログレまでジャンルを問わずさまざまなバンドでのライヴ・セッション活動を行っている。

◎Information
松尾啓史 HP Twitter YouTube