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Ultimate Drum Technique #10-Metric Modulation Vol.2

  • Text & Score & Video:Hiroshi Matsuo

CHAPTER10:メトリック・モジュレーション<奇数分割 ver.>

みなさんこんにちは、松尾啓史です。前回に引き続きメトリック・モジュレーションについてレクチャーしていきます。今回はさらに一歩踏み込んだ“奇数分割”でのモジュレート・パターン。より複雑なパルス転移を行うので、一歩間違えれば崩壊するかもしれないギリギリのスリルを味わいたい方は、ぜひトライしてみましょう。“モジュレーション沼”へあなたを誘います。

奇数分割のメトリック・モジュレーション

重複する複数のパルスを操るには、アカデミックかつ地道な練習が不可欠です。特に今回扱う“5”や“7”のグルーピングというのは間違いなく非日常的であり、“なんとなく”の感覚で叩けてしまうことはまずありません。

そこで、ドラム・セットでのモジュレーションにチャレンジする前の予備練習として、練習パッドなどの単面で16分音符や3連符を5つ/7つずつの音符の固まりで、アクセントで区切って分割させる練習をしておくことをオススメします。また、ただ分割させて叩くだけではなく、口で拍のアタマをカウントしながら、今自分が叩いている音価が、何小節目の何拍目に位置しているのかをハッキリと認識して挑めるようにしておきましょう。

この練習をして奇数分割の感覚を鍛えておくだけでも、ドラム・セット全体を使ったモジュレーション・パターンにスムーズに取り組むことができるようになりますよ!

奏法パターン Ver.1

メトリック・モジュレーション Ⅲ

“5つ割り”を題材にしたメトリック・モジュレーションです。奇数連符のときと同様に“5”というグリッドのどこを叩き、どこを休符とするかでさまざまなリズム・バリエーションを展開することができますが、重要なポイントは一定モチーフを繰り返す必要があるということです。

ちなみに、モチーフとなるリズム・パターンは“5”で繰り返しても良いですし、“5+5”のパターンを構築しループさせても良いでしょう。つまりは5の倍数であれば何でも大丈夫なのです。分割線、つまりイマジナリー・バー・ラインの目印となるアタマの部分に、キックやバック・ビートにあたるスネアなどを配置すると、聴感上グルーピングが把握しやすいですし、聴いている人をうまく錯覚にハメることができると思います。

例えばライド・シンバルを使ったパターンであれば、カップ部分などでサウンドの起点を強調しても良いですね。さらに“5”というグルーピングは、言い換えれば“2+3”“3+2”という分割にも置き換えることができる(結果的に5つという数字を感じさせる状態になっていればOK)ので、そのような分割を意識したキックやスネアの配置でモチーフとなるリズム・パターンを構築してみると良いかもしれません。ちなみにモジュレートしたパターンから元のリズムに戻る際は、キリの良いポイントや小節アタマなどで適宜復帰させる形が良いと思います。

Check!

メトリック・モジュレーション Ⅲのエクササイズ

奏法パターン Ver.2

メトリック・モジュレーション Ⅳ

「5つ割りでは物足りない!」……そんなあなたにオススメなのが、この“7つ割り”のメトリック・モジュレーションです。

モチーフそのものが長くなるぶん、元の小節の感覚やリズムのパルスをほぼ消し去ることが可能です。これを行うことで誰が得をするのか……それは問題ではありません。もはや数学的探究心に他ならないのです。

考え方は“5”の分割と同様に、“3+4”“4+3”、あるいは“2+5”などというグループ内の細分化で、多種多様にモジュレート・バリエーションを広げることができます。

Check!

メトリック・モジュレーション Ⅳのエクササイズ

まとめ

ここまで進めてきてまだ余力のある方は、9や13などのさらに長いサイクルでのモジュレート・パターンを自分で考えてチャレンジしてみましょう。あなたのモジュレーション生活はまだ始まったばかりです。

Ultimate Drum Technique – BACK NUMBER

CHAPTER 1:モダン・フット・ワーク
CHAPTER 2:左足のハイハット・コントロール
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年7月号をチェック!


■CHAPTER3:ゴースト・ノート
■CHAPTER4:ワン・ポイント・モジュレーション
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン20年10月号をチェック!

■CHAPTER5:トラップ・ビート
■CHAPTER6:トラップ・ビート Vol.2
 ▶︎上記2つについてもっと詳しく知りたい方は、リズム&ドラム・マガジン21年1月号をチェック!

■CHAPTER7:オッド・グルーヴ
■CHAPTER8:オッド・フィル

■CHAPTER9:メトリック・モジュレーション

◎Profile
まつおひろし:豊富なドラム知識を生かし、リットーミュージックより自身の執筆する教則本『究極のドラム・トレーニング・バイブル』をリリース。現在はリズム&ドラム・マガジンでプレイ分析や執筆を担当している他、ドラム・セット・プレイヤーとしてのみならず、ドラム・スティックを投げたり回したりと視覚的に楽しませるパフォーマーとして、東京ディズニーシーや打楽器アンサンブル・チームでの公演の経歴もある。また、サウンド制作スタジオ「INSPION」のメンバーでもあり、ゲーム音楽を中心としたレコーディングは多岐に渡る。20歳の頃より音楽教室でのレッスンなど、クリニシャンとして後世のドラマーの育成にも積極的に取り組み、吹奏楽からプログレまでジャンルを問わずさまざまなバンドでのライヴ・セッション活動を行っている。

◎Information
松尾啓史 HP Twitter YouTube