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【有料会員記事】『The Sure Shot』期間限定特別公開|沼澤 尚への質問も募集!
- Text:Yusuke Nagano(Analysis)
7月29日に開催された「James Gadson × Takashi Numazawa『The Sure Shot』上映&トーク」。イベント内で上映された映像『The Sure Shot』を、2013年1月号の連動記事と併せて期間限定公開。会場で沼澤と共に映像を振り返った方はもちろん、残念ながら参加できなかった方も、この機会にぜひ師弟が織りなすグルーヴを堪能してほしい。また、ページ内では沼澤への質問も受付中。イベントでは時間の都合で聞けなかったこと、『The Sure Shot』に関する内容や、ギャドソンにまつわる質問を募集し、後日、沼澤本人の回答と併せて記事として公開する予定だ。
期間限定公開『The Sure Shot』
Ⅰ .沼澤がプロデューサー視点で語る
“The Sure Shot”の見どころ!

タイトルの “Sure Shot” は、もともとウッチー(内田直之)が使っていた言葉なんです。フェス特集の号(2012年10月号)で、自分のプレイについてそうコメントしてくれていて、もったいないけど“良い言葉だなぁ”と。で、ギャドソンが来て……ウッチーはギャドソンが楽器を選んでいるところからずっと見て、さらに彼の教則DVD『ファンク・R&Bドラミング』も見たんです。で、“やっぱり、そこ(Sure Shot)が一番大事なんだな、これがすべてなんだな”、と。
“Sure”は、“確実な、確かな、明確な”……っていう意味になりますよね。ドラムに関して言えば単純には “Shot” = “打つ” だけになってしまうけど、ギャドソンは “ドラマーが指揮しなければいけない”、“ドラマーが支配しなければいけない” ということを繰り返し言ってて。つまり表現しているものすべて……ショットが正確ってことだけじゃなくて、ドラマーとして、音楽の中で存在していることっていうこと= “Sure Shot” なんだ、と。ウッチーが具体的にそう説明したのではないけど、僕にはそう感じられたんです。
正確なショットは練習すればできるし、それは世界でも日本でも上手な人がたくさんいますし、そういう意味でのショットに関しては、僕自身がどれだけ遅くてルーズなのかよく知ってるし(笑)。音楽の中で “ドラマーがするべきこと” っていうのを “Sure Shot” という言葉が表していると思うんです。
映像の見どころは、やっぱり “動くギャドソンを見ることができる” ……これに尽きるんじゃないですかね(笑)。ライヴを観に来ていた人も、DVDでは落ち着いていろいろな角度から見ることができるだろうし。今回は見せ方として、部分的にひっかかるところにフォーカスしたり、彼が話している内容をよりわかりやすく見せたり……。あの人は自分のプレイをすごく簡単に説明しているけど、決して簡単ではないので(笑)。それを彼の声と字幕の両方で見せられたら、と思って。音声と字幕を入れることで、英語がわかる人もわからない人も、彼がどういうことを言おうとしていたかをより感じられるといいな、と。
それと最初から最後まで通して流れで見てもらいたかったので、特にチャプター分けをしてません。ギャドソンのドラムって音だけを聴いていると、“どんだけ激しくプレイしているんだ” って思うけど、実際に間近で見ると実は全然動いてなくて。横綱相撲というか(笑)。でもギャドソンという “秘境” がここまで見られるものもないから、“そうやってるんだ!” みたいなことが見られると思います。でも、あんなグルーヴは彼にしみ生み出せないので、“やる、やらない” でなく、“この人ってこんな感じでこういうふうにこのビートをやっているんだ” みたいなところでものすごく楽しめるはずです。
テクニック的な部分ではやはり手の動き。ギャドソンは左利きなので、その左主導のいろいろがものすごいんです。音だけ聴いていると気持ち良さだけの印象なんだけど、冷静になってみると、技術的にとんでもないことをやっているのがわかる。「待てよ?」みたいな。ものすごいことをやっているのに、全然難しそうに聴こえない。現実的じゃない。実際、まるで大変そうやってないのですから。“何かをやっている” ってことに気がいかないのが本当に不思議。だから彼のテクニック的な部分って見過ごされがちなんです。驚異のグルーヴとサウンドだけに耳がいっちゃうので。でも意識してそういうふうに見ると、ただただびっくりするのは間違いないです。

Ⅱ .ギャドソン流グルーヴ・ドラミングの
奏法的ポイント!
Point 1:片手16のダウン・アップ奏法
ギャドソンのトレード・マークでもある片手でハイハットを刻む16ビート。時としてものすごい高速&躍動感で刻まれているが、トルク感たっぷりにグイグイと邁進する勢いがカッコいい。そのトルク感の秘訣は、16分ウラの音を特有のハネ気味なタイミングで刻むことで生じる、ナチュラル・スウィング感によるところが大きいと感じるが、そのフォーム自体も実に個性的。片手で16分音符を刻むとき右手は、人差し指をやや伸ばし気味に構え、スティックをカッチリとホールドしており、手の平の中のスティックの遊びはかなり少ない。そして強力なバネの効いた手首を返す動きを軸にダウン・アップ奏法を使い、前腕やさらには身体の重さまでがスティックに乗せている印象。タイトに閉じたハイハットの揺れ具合いからも、その圧力の強さを察することができる。また前腕が下がる際に、やや内側に回転運動しているようでもあり、上からの映像では、スティックが左右に微妙に揺れる独特な軌道を描いているのが確認できる。さらにライドで同様に16分音符を刻む場合は、ライドのカップ付近の金属が厚くてリバウンド感の良い箇所をねらい、加えてシンバルのホールよりも上側を叩くことで、シンバルの揺れも押さえる効果を得ている。
Point 2:片手8分刻み
ギャドソンがハイハットで8分を刻むときは、8分すべての音をプッシュする感覚で演奏されることが多く、それが特有の躍動感や微妙なハネ感を演出している印象を受ける。その際の右手はスティックを左右に揺らす動きを伴い、前腕の回転運動も確認できる。ちなみに8分ウラを叩くタイミングで親指側をやや斜め下方にひねりを加える動きになり、同時に肘もやや開き気味となる。
Point 3:連打&バック・ビート
細かい高速の片手連打を左右共に、自由に繰り出すことができるのもギャドソンの特徴的な部分。自身の教則DVDでも、指と手首の重要性を語っているが、今回の映像でも手首と指で、リバウンドを巧みに拾っている様子が確認できる。特に指は、動きは大きくないが、手の少しの空間の中で非常に小刻みに仕事をしているのが印象的。また手首の強さはそのバック・ビートの音の太さにも良く表れており、腕をほとんど振り上げない状態でも、ピッチの低めのスネアを鳴らしきった音色を得ているのがすごい。
Point 4:フット・ワーク
今回のギャドソンは、バス・ドラムをほぼヒール・ダウンで演奏。過去の映像ではヒール・アップの姿も確認でき、そのあたりは状況に応じて使い分けているようである。本映像では細かい16分音符もすべてヒール・ダウンで処理しているが、モーションは大きくなく、太ももの動きからはバス・ドラムのフレーズが推測できないことも多い。ただし音量が上がっていないときでも、しっかりと太くて温かい脈動が伝わってくるのは素晴らしい。ちなみにハイハットではヒール・アップも用いている。
総評
イスに深くどっしりと重心を落として座り、常にリラックスした状態を維持しているギャドソン。手足の動きは、身体の芯から沸き起こる脈動を汲み上げて伝えている印象。それゆえヒール・ダウンのバス・ドラムも音が深く、スティックも必要以上に振り上げずに楽器を鳴らし切ることができるのだろう。また片手16などは、驚愕の速さとキレを維持するが、それは肉体的な才能と同時に、日々の磨きをかける努力を怠っていないことも大きいはず。