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沼澤尚が語るジェームス・ギャドソンの「すごさ」|厳選8曲で迫る師匠の教え【レポート】
- Text:Isao Nishimoto/Photo:Akito Takegawa
沼澤 尚をナビゲーターに迎え、レジェンド・ドラマーの名演/名曲を実演と共に解説するイベント「the Greatest Playlist」。その第3弾となる「feat. ジェームス・ギャドソン」が、6月21日に御茶ノ水RITTOR BASEで開催された。ギャドソンと言えば、沼澤が20代の頃にアメリカで薫陶を受けた“師匠”でもあり、披露されたエピソードは他では聞けないものばかり。その様子を以下にレポートする。なお、実演を交えた解説は、会員限定公開のダイジェスト映像で後日確認することができる(サブスク登録:こちら)。
沼澤 尚が選んだ
ジェームス・ギャドソンの名演・名盤8選
Title:『Impossible』
♯1 V.A.「Mama I Want to Sing」
♯2 Charles Wright And The Watts 103rd Street Rhythm Band「Loveland」
♯3 Marvin Gaye「Come Live With Me Angel」
♯4 Bill Withers「Lonely Town, Lonely Street」
♯5 Charles Kynard「Grits」
♯6 Bill Withers「I Don’t Want You on My Mind」
♯7 Peaches & Herb「Reunited」
♯8 Leon Haywood「Don’t Push It Don’t Force It」
※ #1は、Spotifyでの配信がないため、プレイリストには含まれていません。
“先に答えを聞く”からこそ
名演がまた違った印象で聴こえる
第1弾ではスティーヴ・ガッド、第2弾ではジェフ・ポーカロを取り上げた「the Greatest Playlist」。傍らにドラム・セットを置き、具体的な演奏解説になると実際にプレイしながら話すスタイルは今回も変わらない。ただ、前回までは曲を聴いた後に解説を行ったのに対し、今回は「ここに注目して聴いてくださいというポイントを先に言った方がいいんじゃないか」という沼澤の意見から、解説の後に曲を聴くという流れに変更された。
ギャドソンの場合、何気なく聴いているとその「すごさ」に気づきにくいプレイが多い。すなわち、それがどれだけ自然で音楽的な演奏かということの証なのだが、素通りしやすい「すごさ」の説明を先に聞いてから曲を聴くという今回の進行は、より理解を深めるという意味で、特にギャドソンのようなドラマーに合っているだろう。

これまでも沼澤には、さまざまな企画でギャドソンの名演をセレクトしてもらっている。本誌2009年5月号では必聴アルバム20枚を選び、短いコメントを添えて紹介。今年4月にギャドソンが亡くなった際には、それをドラマガWebの記事として公開している。今回は、トーク&実演によるリアル・イベントであることを踏まえ、実際にギャドソンと接する中で見聞きしたことを話せる曲、という基準で8曲をセレクト。いわゆる代表作にとどまらないユニークなプレイリストが出来上がった。
と言っても、重要なのは“何を選んだか”でない。その中には、誰もがギャドソンの代表作と挙げるビル・ウィザーズの『Still Bill』からも2曲セレクトされていたが、本人から直接聞いた話に、プレイヤーとしての沼澤の解釈と実感を交え、さらに実演も加えた解説を聞くことで、よく知られた曲も新鮮な耳で受け止めることができる。それこそが「the Greatest Playlist」の大きな魅力である。

実演のために用意されたドラムも特別なもので、沼澤がギャドソン本人から譲り受けたソナーの1960年代製ヴィンテージ・キット。自宅スタジオの棚にサビとほこりまみれで置かれていたのを「捨てるつもりだったから持って行って」と言われて持って帰ったという逸話で会場を沸かせた。その生音を間近で聴けた参加者は幸せ者だ。
名演を”聴く”から
名演を”理解する”へ

今回選ばれた曲に共通する特徴として沼澤が繰り返し話していたのが、「クラッシュ・シンバルがほとんど使われない」ということ。曲のセクションが切り替わる場面で、区切りのように使われることが多いクラッシュ・シンバルを、ギャドソンは(ほぼ)使わない。あるセクションの終わりにフィルインを叩いても、次のセクションはきちんと1音目からビートに戻ることが大切なのだと、沼澤はギャドソンから教わったという。「ギャドソンの超人ぶりは誰にも真似できませんが、自分なりにできるかもしれないと思ってトライしているのがこういうところです」。
他にも、ドラマーなら思わず膝を打つであろう言葉が次々と飛び出したこの日のイベント。印象的だったものをいくつかピックアップしておこう。
◉「あれだけ盛り上がった演奏なのに、ものすごくリラックスして淡々と演奏している姿を今でも鮮明に覚えている」
◉「基本はファンキーなハイハット片手16分音符のすごいグルーヴ。サビではハイハットが一気に4分音符だけになる。これを歌いながらやっているのは本当に信じられない」
◉「盛り上げるために音量を上げたり手数を増やしたり、そんなことは一切せずに全体を表現している」
◉「バラードでもしっかりしたビート感がずっと流れているから、もちろん身体が動く」
◉「ごくシンプルで誰でもできそうに聴こえるキックの4つ打ちを、サウンドとタイミングでとんでもないグルーヴにしてしまう」
これらはどの曲についての解説なのか、当日のダイジェスト動画を含む有料会員限定記事(後日公開)でぜひ確かめていただきたい。今や世界中の偉大なドラマーの演奏を、音や動画で簡単に楽しめる時代になった。しかし……いや、だからこそ、その素晴らしさを真に伝えるには、それ以外の“何か”が必要だと思う。この「the Greatest Playlist」のような試みは、間違いなくその1つになり得るのではないだろうか
【有料会員限定
実演を交えたダイジェスト後日公開!

本記事で紹介した内容は、実演を交えたダイジェスト映像として会員限定記事で後日公開予定! 文章だけでは伝えきれないグルーヴのニュアンス、プレイの特徴をぜひ映像で体感してほしい。沼澤さんがギャドソンから学んだドラム・プレイの核心は、上達にもきっと役立つはずだ(サブスク登録月額:990円/いつでも解約可能→こちら)。