ハンドメイドにこだわる
“Made in England”の新進ドラム・ブランド

2015年にイギリスで創業し、その洗練されたルックスと個性的なサウンドで注目を浴びるBritish Drum Co.。熱を加えずにシェル成形を可能にする独自の“Cold-Press Moulding”製法や、自社オリジナルのラグやストレイナーなど、こだわり満載で、新進ブランドながら、アイアン・メイデンのニコ・マクブレインを筆頭に、トップ・ドラマーから高い評価を獲得している。そんな同社が今冬、ついに日本上陸！　ドラマガWEBでは、本誌2021年1月号でフィーチャーした内容に、本国スタッフへ行ったインタビューの完全版を補完！　お勧めのスネア・ドラム3台の試奏レポートも併せて、“Made in England”のドラムの実力を検証していく。

Contents

　Snare Drums Review
　　●MERLIN
　　●Nicko McBrain Signature “ICARUS”
　　●Nicko McBrain Signature “TALISMAN”
　　
　Interview
　　＃1　British Drum Co.設立と創業者Keith Keough
　　＃2　職人による伝統的な“妥協のない”製造工程
　　＃3　さまざまなパーツを自社生産　スピーディな納品も実現
　　＃4　British Drum Co.“究極の目的”と日本のドラマーに向けて

Snare Drums Review

さっそく国内で販売を始めたスネア・ドラム×3の試奏レポートをお届けしよう。こだわりの製法とハンドメイドによるサウンドもさることながら、細部まで美しいルックスも含め、その実力を検証していく。（試奏：山本拓矢［bohemianvoodoo］）

MERLIN

立ち上がりの太さとキレの良さ
ダークさとブライトさの塩梅も絶妙

20 プライと聞くと、極端に分厚いシェルを想像すると思いますが、このスネアは10.5mm しかありません。ドラムに適した硬めの木材として、メイプルとバーチは欠かすことができない存在で、その2 種類の木材を交互に重ねて成形されています。一般的に、異なる硬さ（密度）の材同士を組み合わせると音が短くなりますが、この楽器はまさにその通りのキャラクターで、立ち上がりの太さとキレの良さという、プライ・シェルの優れた点を体現しています。チューニング・レンジは広く、音色の明暗もどちらとも言いきれない絶妙な塩梅なので、このスネアに加えてブラスなどの華やかに鳴るタイプの楽器があれば、どんな状況でも困らないと思います。

Nicko McBrain Signature Snare “ICARUS”

ジャンルを問わない懐の広さ
個性と汎用性が共存

10 プライのバーチ・シェルに、オークの化粧板を施した、独特な仕様です。赤く染められた内側のレインフォースメントや、細かな装飾が施されたワッシャーなど、細部に至るまで妥協のない、美しい仕上がりです。シェルが持っているトーンの傾向はややダークながら、パーツ類とのマッチングもあって、ヌケや飛びに関しては優れた性質が感じられつつ、テンションを落としたときのナチュラルな質感はソフトなタッチにもよくマッチする印象で、個性と汎用性が共存しています。長い歴史を持つHR/HM バンドのメンバーとして、レジェンドの領域にいるドラマーのモデルですが、音楽性を問わず使用できる懐の広さは特筆すべきものがあります。

Nicko McBrain Signature Snare “TALISMAN”

音ヌケの心配とは一切無縁
ミュートしたディープなサウンドも◎

2mmスティールということで、とてもパワフルなサウンドです。しっかりとテンションをかけると、ライヴでの音ヌケの心配とは一切無縁だろうなという安心感があります。独特なブラックのフィニッシュは、ピーキーになりがちなスティールのキャラクターを整えているようで、ビードなしという形状ゆえの張り出した帯域はあれど、決して不快感はなく、心地良いバック・ビートを奏でてくれます。特にパワーが求められる状況での使用が想定されている設計だと思いますが、この質量とトーンは、極端なロー・ピッチでの音の密度を確保することにも利用できるので、ハードにミュートを施したディープなサウンドのスネアとしても適性があります。