NOTES

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“煩悩の数”だけリズム・パターン108
- 講師:菅沼道昭
- 演奏(Jazz & Fusion):能村亮平
- イラスト:伊藤丈丸
Traditional編
伝統的なルーツ系リズム
8パターン
Traditional編は、現在そのままの形ではあまり使われないが、さまざまなリズムの“ルーツ”となっているような、伝統芸能的パターンを8つ紹介。身につけてアイディアの糧としよう!

Traditional 01 ジャンプなどで用いられたバウンス特化型ビート

後のロックンロールにつながるR&B系のジャンプといったジャンルなどで用いられた、バウンスに特化したアプローチ。8ビートの確立前にバウンスしたR&B系のリズムにもある種の“エクストリーム化”が起こっていたことを示すアプローチ。今使っても十分“おいしい”ビートである。

Traditional 02 ブルース伝統のシャッフル・ビート

“テキサス・ドライヴィング・シャッフル”とも異名を取るシャッフルのパターン。スネアのゴースト・ノートでスウィング感を出しているのが特徴で、ジャズからの影響も感じられるアプローチ。8ビートを3連で弾ませたのがシャッフルという単純な図式ではないことを認識させられるパターン。

Traditional 03 ロックンロール黎明期の8ビート・アプローチ

リトル・リチャ-ズなどのロックンロール黎明期に見られる8ビートのパターン。バック・ビート以外の8分もスネアを連打しているのが特徴で、レッド・ツェッペリンの「ロックンロ ール」でもボンゾが継承しているアプローチ。8ビートの歴史を語る上で欠かせないパターンである。

Traditional 04 ベンチャーズ風のロックンロール・ビート

1960年代にエレキ・ブームを起こしたベンチャーズを彷彿とさせる定番パターン。メル・テイラ-などが叩くこのビートは単純に“ドンタタ・ドンタン”と叩いてはダメ。2拍目のウラにアクセントをつけるように叩くのがポイント。ビ-トルズの地元の“マージー・ビート”も同様のパターンを用いている。

Traditional 05 ニューオーリンズ伝統のジャズの4ビート

ニューオーリンズ~スウィング時代のジャズ・ドラムはモダン・ジャズのようなアドリブ性はまだ発展途上で、このようにある種パターン的なアプローチが多く見られた。バック・ビ ートに相当するような2、4拍のスネアも叩きバス・ドラムはフェザリングと呼ばれる4分をキープ。

Traditional 06 カントリー・ミュージックの“トレイン・ビート”

カントリーで使われる2ビートの通称“トレイン・ビート”。スネアのアクセントの移動によるパターンで、列車が走る感じからこの名がついたと思われるが、アメリカの開拓精神ともつながっているとも想像できるような、伝統のアプローチ。ブラシで演奏されることも多いパターン。

Traditional 07 セカンドラインを使った元祖ジャングル・ビート

ジャングル・ビートと称されるパターンは時代によってさまざまに移り変わって来ているが、これはその元祖とも言うべきアプローチ。ニューオーリンズのセカンドライン的なリズムをタムで叩くパターンで、TOTOの「ロザーナ」のバス・ドラム・パターンは実はこれがもとになっている。

Traditional 08 カリプソ的パターン

ソニー・ロリンズの楽曲「セント・トーマス」でのマックス・ローチのカリプソ的なパターン。ジャズでのアフロ・キューバン・リズムとは違ったアプローチで、左手がスネアのリム・ショット、右手がタムを移動する形で、カリブ海のリズムの雰囲気を見事に表現したパタ ーンである。

World編
多国籍でモダンな
アプローチ10パターン
World編では世界中から地域独特の音楽をルーツに持つ、一風変わったリズム・パターンを紹介していく。ラテン・アメリカ、中近東、アフリカなどから幅広く使えるものを10発厳選!

World 01 アフロ・キューバンの“ハチロク”ビート

6/8拍子のアフリカン・クラ-ベに添った形のアフロ・キューバンのパターン。中南米においてアフリカの民族音楽の影響が強いことを示すグルーヴで、リム・ショットとタムのコンビネーションはコンガの奏法を模していると考えられる。キューバのリズムのルーツと言ってもよいだろう。

World 02 ジャズ・マンボ・スタイルのアフロ・キューバン・ビート

ジャズのマンボ・スタイルのパターン。カップのリズムは2・3クラ-ベに添った“カスカラ”のリズムになっている。上記の01と比較すると同じリズムを土台に3連から16分のノリに変化(進化)しているのがわかると思う。本場のリズムではわずかに3連的な訛りが残 っている。

World 03 キューバン・ビートの定番”ソンゴ”のパターン

ヒスパニック系移民によってアメリカで発展したサルサで生み出されたソンゴのパターン。 今ではフュージョンなどでラテン・ビートを演奏する場合の定番となっている。4分に重きを置いた独特なノリが特徴で、スネアのゴースト・ノートは多くの打楽器での合奏の感覚を示している。

World 04 ブラジルのリズム“パルチード・アルト”のバリエーション(1)

サンバのルーツとも言われるパルチード・アルトの特徴を表わしたリズム・パターン。実際にラテン系リズムは2/4拍子で表わされるので2拍ごとのフレーズを入れ替えてプレイすることも可能。( )のように16分で細かく刻むと、よりサンバの感覚に近いパターンとなる。

World 05 ブラジルのリズム“パルチード・アルト”のバリエーション(2)

パルチード・アルトのリズムを利用しながらスネアの連打とフロア・タムを使って構成したパターンの一例。このフロア・タムはブラジルのバス・ドラムとも言えるスルドのサウンドを表していて、バス・ドラムはいわゆるサンバ・キックを利用している。サンバ・カーニバルのイメージのパターンである。

World 06 ボサノヴァの定番パターン

サンバのリズムをもとにしてジャズと結びついたボサノヴァのパターンの1つ。リム・シ ョットのフレーズは3・2クラ-ベに近いもので、小節を入れ替えて2・3にしてもプレイ可能。両足はサンバ・キックと同じオスティナートをキープし、ライドは一定の音量で叩くのがブラジル流。

World 07 東京生まれのレゲエ~スカ・ビート

東京スカパラダイスオーケストラに見られる茂木欣一のレゲエ~スカ・アプローチ。ワン・ドロップのバス・ドラムとスカ特有のスピード感を合わせ持ったようなパターンで、ハイハ ット・オープンはスネアのショット時だけクローズする形。そのスネアの直前のハイハットをやや強めに叩くのがポイント。

World 08 トニー・アレン風アフロ・ビート(1)

アフリカ発信でファンク界にも影響を与えたと言われるトニー・アレン風のアフロ・ビートのパターン。バス・ドラムを“ドドッ・ドドッ”とキ ープするのがその基本型で、それに絡むスネアはごくわずかにハネた感覚を持っているのが特徴。ファンク・ビートとはまったく違ったリズム構造を持っている。

World 09 トニー・アレン風アフロ・ビート(2)

バス・ドラムとスネアの絡みに動きを持たせたアフロ・ビートのバリエーション。“ドド・タタ”という音型が3拍フレーズのようにつなが っているとも見ることができる。リズム・パタ ーン作りのイマジネーションが欧米以上にオ ープンであることが認識できるようなアプローチと言えるだろう。

World 10 中近東的な雰囲気のアプローチ

これは民族音楽的なパターンではないが、ラテンやアフリカンとも違う中近東的な雰囲気を持ったアプローチである。リム・ショットとタムによるフレージングがコンガやジェンベではなくアラブ諸国の“リク”などの皮モノ・パ ーカッションを演奏しているようなフィーリングを持っている。
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