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ドラムが叩ける!お宅訪問[Webオリジナル]#3 東京都在住 石川 洋さん 宅スタジオ

  • 取材:編集部
  • 文:西本 勲
  • 撮影:関川真佐夫

ドラムに触る時間が確実に増えて
いろいろな面でプラスになっています

レコーディングのノウハウは、スタジオができてから学んでいったという石川さん。ドラムの音に対する視野が広がり、初めて気づいたことも多いという。

「もともとMIDIの打ち込みの仕事はやっていましたが、生ドラムを録るのはほぼ未知の状態でした。でも自分でレコーディングを始めてからは、今までのように外のスタジオで録ってもらうときも、“このマイクだからこういう音なんだ”という方向に意識が向いて、叩きながら聴いている音だけがすべてではないとという部分を、より意識するようになりました。

生音がいまひとつだと感じても、マイクを通すとけっこう良い音になったりして。レコーディングを依頼されたときに何種類かのスネアで録った音を送って、先方に選んでもらうことがあるのですが、そこで面白いのは、意外と安いスネアで録った音が“これがいいです”って言われたりするんです。そんなときは“よっしゃ!”ってなりますね(笑)」

出入り口は木製防音ドア×2枚。「合原君のスタジオを見せてもらって、木製ドアでもこんなに音が止まるのかと驚きました。2枚の間がこれだけ空いているし、向こう側もドアのすぐ前にいることはないので、遮音としてはこれで十分です」。右に見える扉は収納スペースになっている。

レコーディング以外にも、ドラム・レッスンをリモートで行ったり、仕事の仕込みをするなどフル稼働しているこのスタジオ。以前ならリハスタを借りて行っていた作業も自宅でできるようになったメリットは、想像以上に大きかったと石川さんは話す。

「小さい子供がいると、自分のために使える時間は限られるので、ちょっとした空き時間にも仕事ができるのはとても助かります。

たとえば朝、子供を保育園に送って、昼からリハがあったとしても、家にスタジオがあれば2〜3時間は準備ができる。夜も、子供が寝たらすぐドラム・セットに向かえます。

以前のリハスタ代や移動時間を考えると、十分に元は取れていると思います。ドラムに触る時間は確実に増えたので、タッチやバランス、チューニングなどの面でもプラスになっていると感じます」

スネア・ドラム、マイク保管庫などを収めたラック。「ここにスネアを置くとレコーディング時に鳴ってしまって良くないかなと思いましたが、スナッピーの間にフェルトを挟んで対処しています。いろいろなスネアを試したいときに、その都度スタジオの外に出る必要がないので効率が良いんです」。ラックの向きは、いろいろ試した末にこの形に落ち着いたそうだ。

そんな石川さんに、今後どのようにスタジオを活用していきたいかを聞いてみた。

「レコーディング機材に関しては、プロのエンジニアさんに納品しても恥ずかしくないレベルのものが最低限そろったので、ひとまずはこれくらいで良いかなと。マイクやマイクプリも楽器のように音色やキャラクターを変えるためにオプションがあるに越したことはないですが、ここから先はまず楽器でバリエーションを広げていこうと思っています。

タイコはヘッドやチューニングでもキャラクターを変えられますが、シンバルはそうはいきません。“もっとピッチ感の低いハイハットが欲しいので、15″のハットありますか?”なんて言われることもあって、15″なんて今までそんなに興味もなかったけど、“だったらオプションとして買ってみようかな”ってなるんです。

そういうリクエストって、レコーディング・スタジオだとなかなか言いにくいかもしれないけど、宅録だと良い意味で依頼者の本音を聞ける気がします。

今は、ドラムのサウンドをもっと俯瞰で見ることができて、アレンジ的な視点でも曲に接するようになったと思います。いろいろな意味で、スタジオを作って本当に良かったです」

Profile●いしかわひろし:1981年宮城県生まれ。 高校入学後、友人とバンドを組むためにドラムを始める。 在学中に1年間アメリカへ留学し、そこで吹奏楽やマーチングも経験。「当時はいろいろな打楽器を経験しました。今でもティンパニの仕事がきたりするので、やってて良かったなと思います」。大学在学中から、バンドでの活動やサポート・ドラマーとしての活動を始める。現在はさまざまなアーティストのレコーディング/ライヴに参加している他、ミュージカルのオーケストラやレッスンなど、幅広く活動している。

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株式会社アコースティックエンジニアリングは、音楽家・音楽制作者のための防音・音響設計コンサルティングおよび防音工事を行う建築設計事務所。1978年に創業して以来、一貫して「For Your Better Music Life」という理念のもと、音楽家および音楽を愛する人達へより良い音響空間を共に創り続け、携わった物件の数は2,000件を超えている。現在も時代の要請に答えながら、コスト・パフォーマンスとデザイン性に優れ、「遮音性能」、「室内音響」、「空調設備」、「電源環境」、「居住性」というスタジオの性能を兼ね備えた、新しいスタイルのスタジオを提案し続けている。

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