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ドラムが叩ける!お宅訪問[Webオリジナル]#3 東京都在住 石川 洋さん 宅スタジオ

  • 取材:編集部
  • 文:西本 勲
  • 撮影:関川真佐夫

ここでレコーディングしたドラムの音は
エンジニアさんにも好評です

近年は石川さんのように自宅スタジオでレコーディングを行うドラマーが増えており、この連載でもそうした事例をたびたび紹介してきた。

主に依頼を受けるところから仕事が始まるサポート・プレイヤー/スタジオ・ミュージシャンにとって、家でドラムを叩ける/録れることは大きな武器になる。

「コロナで演奏の機会が減ったこともあって、ただ仕事が来るのを待っているだけでは厳しいなと。先ほど話した合原君や田中君も、宅録を始めたことでコロナ禍でも活動を維持できていて、そういう姿を見ていましたから。

このスタジオは去年の5月くらいから稼働していますが、世の中が少しずつ通常に戻り始めても宅録の仕事はあって、生ドラムを録れることは1つのオプションとして継続できると実感しています。

海外では以前から自宅でレコーディングするドラマーがたくさんいましたが、日本でもそういうスタイルがもっと進んでいくんだろうなと思います」

音楽制作用の自作Windowsパソコン(右下の黒い筐体)を核としたレコーディング・システム。下のラックに収められた赤い機材は、高品質のマイク・プリアンプを搭載したFocusriteのオーディオ・インターフェースRed 8Pre。
ドラム・セット後方には全体のサウンドをステレオで拾うためのマイク。ドラム・セットに近いマイクの音とブレンドすることでアンビエンス感を調整できる。

そこで重要なのが、ただレコーディングできるだけでなく、“良い音で録れる”こと。木造住宅に作ったコンパクトなスタジオでもそれが可能だということを、石川さんのスタジオは証明している。

そもそもアコースティックエンジニアリングの作るスタジオは、寸法比率を適切に設計することによって有害な共鳴が起こりにくいのが特徴で、これが録り音のクオリティに大きく貢献する。

「エンジニアさんには、“音の分離が良い”とめちゃくちゃ好評です。響き方は、かなりデッドにしてもらいました。これもエンジニアさんの意見ですが、部屋の鳴りを本当に活かしたドラム・サウンドを録るにはかなりの広さが必要で、ミックスのしやすさも考えると狭めの部屋ではデッドにした方が良いんです。

天井は音が反射する材質で、そっちの方にアンビエンス・マイクを置けば少しは響き感のある音も録れます。床がコンクリートなので、バスドラとフロア・タムの低音がすっきりタイトになるのも気に入っています」

内装は、石川さんの希望でモノトーンを基調としたデザイン。壁のほぼ全面を吸音パネルが覆い、デッドな響きに。見た目のアクセントになっている黒いライン(実際は濃いブラウン)は、アコースティックエンジニアリングのショールームを参考にしたそうだ。天井の黒い部分も併せて、ドラム・セットの色によく合っている。

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「意外と安いスネアで録った音が“いいです”って言われたりするんです(笑)」