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    Drummer’s Disc Guide – 2022-23 Winter

    – Winter 2022-23 –

    【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray


    【A】スティーヴ・ガッド、エディ・ゴメス、ロニー・キューバー、WDRビッグバンド『センターステージ』

    d:スティーヴ・ガッド

    小細工なしのガッドのビートは
    ただただグルーヴィーで気持ちがいい

    あと数年で80歳になろうかというレジェンド=スティーヴ・ガッドが、友人のエディ・ゴメス、ロニー・キューバーと共にWDRビッグ・バンドとの夢の組み合わせで収録されたアルバム。マイケル・アベネのアレンジ&指揮のもと、大きなWDRスタジオにて、日本では今やめずらしくなってしまった大人数の奏者が一堂に会して録音。誰かがミスをすれば全員に迷惑がかかってしまう緊張感と、優れた奏者達が温かくリラックスした雰囲気で楽しんでいる様子が音に表れており、空気感も自然体で優しく身体に染み渡ってくる。公開されているレコーディング風景の映像では、ドラムのミュートは多めのように見受けられた。それでも非常にナチュラルで、ガッド・サウンドは健在。何もしないすごさとダイナミクスと説得力、小細工なしのガッドのビートはただただグルーヴィーで気持ちがいい。しかも小さく細かなアプローチまで極上のバランスで収録。とにかく癒される温かで楽しいアルバムです。(長谷川浩二)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】スティーヴ・ガッド(d)、エディ・ゴメス(b)、ロニー・キューバー(sax)、ブルーノ・ミュラー(g)、ボビー・スパークスⅡ(org)、サイモン・オスレンダー(p、org)、WDRビッグ・バンド

    発売元:キング 品番:KKJ-194 発売日:2022.10.09

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    【A】菅沼孝三『The king of many strokes』

    d:菅沼孝三

    楽しそうに11/8拍子のソロを取っている姿を
    鮮明に思い浮かべることができます

    私の恩師である菅沼孝三さんの遺作となった『The king of many strokes』は、“手数王”というタイトル通り、彼らしいフレージングや音数が堪能できる1枚になっています。変則的な奇数拍子の中でも、平然と16部の5つ割りフレーズでソロをしているところを聴くと、思わずニヤニヤしてしまいます。そして個人的にうれしい点は、私が初めてFRAGILEのライヴにうかがったときに聴いて、あまりに強烈な演奏で衝撃だった「Handle with Care」が収録されている点です。今回の演奏を聴いていても、とても楽しそうに11/8拍子のソロを取っている孝三さんの姿を、鮮明に思い浮かべることができます。もちろん、終始ドラム・ソロなんじゃないかとも思えるようなバッキングも存分に堪能できるところが、ライヴ音源の素敵なところですよね。満遍なく散りばめられた“手数王”のエッセンスを楽しめる、最高な“オマケ”だと思います。(川口千里)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】菅沼孝三(d、etc.)、織原良次/H.J.フリークス(b)、矢堀孝一(g)、パク・キョンソ(gayageum)、ハン・ガプス(haegum)、他

    発売元:コーゾー・コーポレーション 発売日:2022.10.25(菅沼孝三オフィシャルHPにて)

    ◎菅沼孝三 関連リンク

    https://drumsmagazine.jp/player/set-up-kozo-suganuma2/
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    【A】神保 彰『燦燦』

    d:神保 彰

    楽曲の主役でもあるドラムは
    演奏、音色、録音共に“端正”の一言

    アカデミックな音楽的背景を持ったミュージシャンの活躍が巷を騒がす昨今、彼らが生み出す欧米の音楽をアレンジ・ツールの1つとして扱ったかのようなユニークな音楽と、名実共に日本を代表するスーパー・ドラマーの新作に収められた楽曲の感触は、ある面で不思議なリンクを見せている。時代が一周した、と端的に言うこともできるが、M1冒頭のソフト・シンセの音色やベース・ライン、あるいはM2のクラップ(個人的には00年代にファレル・ウィリアムスが無加工のトライトンをあえて使ったニュアンスに近いものを感じました)、ハイハットのパターンなどを聴けば、神保自身もまた現在進行形であることがわかる。もちろん楽曲の主役でもあるドラムは演奏、音色、録音共に“端正”の一言。最初に書かせてもらったような時代性を感じつつ聴き進めて、しかし、やはりこれはタイムレスなものだよなー、と思いを新たにいたしました。ノスタルジックなM6がとても良かった。(木暮栄一/the band apart)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】神保 彰(d)、オトマロ・ルイーズ(p)

    発売元:キング  品番:KICJ-861 発売日:2023.01.11

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    【A】V.A.『ヒア・イット・イズ:トリビュート・トゥ・レナード・コーエン』

    d:ネイト・スミス

    ネイト・スミスはブラシやマレット中心のプレイでアプローチ
    インストゥルメンタルへ自然に流れる歌とバンドの関係も理想的

    ジェイムス・テイラー、サラ・マクラクランなど豪華な歌手が歌い継ぐ本作。アルバム全編を1つのバンドが演奏しているからそう思ったのだろうか、レナードのトリビュート・コンサートを客席で聴いているようだ。ジャズとカントリーが混ざり合う浮遊感あるサウンドは、ビル・フリゼール周辺の音楽性と重なる。歌からインストゥルメンタル(インプロヴィゼーション)へ自然に流れる歌とバンドの関係も理想的だ。ネイト・スミスは、ブラシやマレット中心のプレイで、終始小さな音でアプローチしている。力強くバウンスするグルーヴが印象的な彼だが、アナザー・サイドも素晴らし過ぎる。また、言葉と同様にメロディの美しさにもスポットが当てられており、イマニュエル・ウィルキンスのサックス、アルバムのラストを飾るビル・フリゼールのギター・インスト曲も心に染みた。継承されることでレナード・コーエンは音楽の中で生き続ける。そして、聴いた私達の中にも何かが宿るのだろう。(坂田 学)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】ネイト・スミス(d)、スコット・コリー(b)、ビル・フリゼール(g)、ケヴィン・ヘイズ(p、etc.)、ラリー・ゴールディングス(org)、グレゴリー・リース(pedal steel)、イマニュエル・ウィルキンス(sax)、他

    発売元:ユニバーサル 品番:UCCQ-1170 発売日:2022.10.14

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    【A】Jeff Denson – Romain Pilon – Brian Blade『Finding Light』

    d:ブライアン・ブレイド

    自由に音を詰め込んでも
    サウンドに溶け込んでしまうドラムのマジックに感服

    若い現代ジャズ・ミュージシャンとアメリカを代表するドラマー、ブライアン・ブレイドとのトリオによるシンプルで美しい新作。骨太なジェフ・デンソンのベースのリフが中心となり、フリゼールやアバークロンビーに影響を受けたであろうと思われるギタリスト、ロメイン・ピロンのキャッチーなクリーン・トーンのサウンドが基本だが、時に凛としてステディなリズムを乗せ、時に力強くフリー・スタイルのパルスを溢れさせ、そしてやはり最後には、見事なスウィングを提供するブライアンの存在がこのトリオの色を決めている。これだけ自由に音を詰め込んでもサウンドに溶け込んでしまうドラムのマジックに今さらながら感服するのだ。録音の生々しさも心地良い。(芳垣安洋/Orquesta Libre、On The Mountain、他)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】ブライアン・ブレイド(d)、ジェフ・デンソン(b)、ロメイン・ピロン(g)

    輸入盤(iTunesで購入可能) 発売日:2022.10.20

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    【A】ベンジャミン・ラックナー『ラスト・ディケイド』

    d:マヌ・カチェ

    各々が密接に関連し合って
    1つの共同体を生み出した、素晴らしい音楽芸術

    ベルリン生まれのアメリカ育ち、チャーリー・ヘイデン、ブラッド・メルドーのもとで学んで、現在はドイツを中心にヨーロッパで活動しているピアニスト=ベンジャミン・ラックナーの自身初となるECMからのリリース! ベルリン・フィルの元チェロ奏者でECMの創設者、マンフレート・アイヒャー本人がプロデュース、トリオとして共に来日も果たしたベーシスト=ジェローム・ルガール、現代のECMを牽引するトランペッター=マティアス・アイク、そしてドラムはマヌ・カチェ! ラックナー本人がインタビューで繰り返し語っていたのが、オーガニック/有機的なサウンド……各々が密接に関連し合って1つの共同体を生み出した、それはそれは素晴らしい音楽芸術!(沼澤 尚/シアターブルック、ブルース・ザ・ブッチャー、他)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】マヌ・カチェ(d)、ベンジャミン・ラックナー(p)、 ジェローム・ルガール(b)、マティアス・アイク(tp、vo)

    発売元:ユニバーサル 品番:UCCE-1196 発売日:2022.10.14

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    【A】吉川晃司『OVER THE 9』

    d:湊 雅史/坂東 慧

    11曲でプレイした湊のスネアが
    聴く側の気持ちいいツボを押さえまくり

    6年半ぶり、通算20作目となる新作。共作含め、全12曲を吉川が手がけ、38年を超えるキャリアの中でも渾身のロック・アルバムに仕上がった。菊地英昭(g)、生形真一(g)、ウエノコウジ(b)、ホッピー神山(key)、湊 雅史(d)ら近年のライヴ・メンバーに、INORAN(g)、後藤次利(b)、小池ヒロミチ(b)、坂東 慧(d)ら、多彩な名手が参集。前作以後に配信リリースされたパワフルな5曲に加え、スピーディなロック・チューンのM1、スウィンギーなM5、ブルージーなM11など、吉川のディープでクールな七色のヴォーカルを堪能できる。ドラムでは11曲でプレイした湊のスネアが、とにかく聴く側の気持ちいいツボを押さえまくり。エンドレス・リピートに注意です。(岸田 智)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】吉川晃司(vo、g)、湊 雅史/坂東 慧(d)、ウエノコウジ/後藤次利/小池ヒロミチ(b)、菊地英昭/生形真一/INORAN(g)、ホッピー神山(key)、etc.

    発売元:ワーナー 品番:WPCL-13432 発売日:2022.11.02

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    【V】宮本浩次『縦横無尽完結編 on birthday』

    d:玉田豊夢

    主役が迷いなく自由に歌えるように全力を尽くしていく
    これぞ“サポートの極み”と言えよう

    今夏のフェス、宮本浩次のステージは“玉田豊夢を見たい”の一心で前方に陣取って待機。しかし始まってみれば宮本の声と一挙一動に釘づけ。何という異次元のエネルギー! 吸い込まれ、圧倒され、ウルッときて、笑顔になれて……目の前で見た彼はまさにスターであった。そして届いたツアー・ファイナルの映像。会場の代々木体育館は巨大で舞台も照明も豪華。それでもライヴ・ハウスで目の前の観客に向けて歌うような飾らない姿にフェスの感動が甦る。その彼を支えるビッグ・ネーム達がまた素晴らしい。4人それぞれがオーラをビシビシと放ちながらも、主役が迷いなく自由に歌えるように全力を尽くしていく。これぞ“サポートの極み”と言えよう。(山本雄一/RCCドラムスクール)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】玉田豊夢(d)、宮本浩次(vo、g)、キタダ マキ(b)、名越由貴夫(g)、小林武史(p)

    発売元:ユニバーサル 品番:【Blu-ray】UMXK-1094〜5 【DVD】UMBK-1309〜11 発売日:2022.11.23

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    【A】Original Love『MUSIC, DANCE & LOVE』

    d:佐野康夫/松浦大樹/mabanua

    絶妙なサスティーン・コントロール
    佐野のショットから生み出される唯一無二の音色

    極上の生ドラム・サウンド&グルーヴ炸裂! Original Love 30周年の集大成、20枚目のアルバムに相応しい田島貴男の“今”が表現された作品。シンプルかつ重厚なバンド・サウンドから田島のソウルフルな“詩(うた)”を真っ直ぐに受け取れるのは、アルバムを支えるミュージシャン、そして佐野&小松のリズム体のグルーヴによるところが大きい。特に佐野のスネアに関して、ハイ・ピッチのヌケとしっかり歌を支える中低域が同時に存在し、このタイトで乾いたサウンドはガチ・ミュートでは得られない絶妙なサスティーン・コントロールによるもの。まさに佐野自身のショットから生み出される唯一無二の音色だと確信する。Original Loveのネクスト・ステージへの期待が止まない。(波田野哲也)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】佐野康夫/松浦大樹/mabanua(d)、松井 泉(per)、田島貴男(vo、g)、小松秀行(b)、河合代介(org、p)、他

    発売元:ビクター 品番:VICL-65731 発売日:2022.11.16

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    【A】ルイス・コール『Quality Over Opinion』

    d:ルイス・コール

    どの曲も特有のクセがありながら
    スルスルと入ってくる絶妙なポップさを内包している

    ルイス・コールの4年ぶりとなるニュー・アルバムは、まさにルイス自身の内から止め処なく溢れ出る刹那的な爆発をぎゅっと1枚にまとめたかのよう。もはや“ジャンル”は何だと聞かれれば、それは“ルイス・コールだ”と答えるのが妥当なところだろう。“カテゴライズなんて時間の無駄だ。やりたいことやってるだけだが、何か?”と言わんばかりのアティチュードがビシビシ伝わってきてシビれる。ドラマーの目線で聴いても最高に“アガる”。特にM7の、硬質でスピード感のあるハイセンスなフレージング祭りにはニヤニヤしてしまう。どの曲も特有のクセがあり、不思
    議とスルスルと入ってくる絶妙なポップさを内包しているのがすごい。気づいたらゴキゲンなまま丸々1枚聴き終えてしまった。もう1回聴こ。(神田リョウ)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】ルイス・コール(d、per、b、key、etc.)、ネイト・ウッド(b)、カート・ローゼンウィンケル(g)、クリス・フィッシュマン(p、org)、サム・ゲンデル(sax)、マーロン・マッキー(vo)、etc.

    発売元:Brainfeeder  品番:BRC710(国内盤) 発売日:2022.10.14

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    【A】NEMOPHILA『Seize the Fate』

    d:むらたたむ

    超絶高速プレイのすごさは言うまでもないが
    注目すべきはミディアム・テンポにおける確実さと安定感

    むらたたむのドラマーとしての技量の高さは今さら語るべくもないが、そんな彼女の資質がより輝きを放っているのが本作でのプレイ。ラウド、グランジなどハードかつ重厚さを信条とする“地獄のゆるふわバンド”の中で、彼女がサウンドの中核となり、強烈な疾走感とヘヴィ感を演出している。曲に応じて放たれる超絶高速プレイのすごさは言うまでもないが、むしろ本作で注目すべきはミディアム・テンポにおけるビートの確実さと安定感。特にスネアのバック・ビートが心地良く響き渡るのが印象的だ。ゆるふわと言いつつ、縦横無尽に駆け回るツイン・ギターやハイトーン・ヴォーカルとも相まってすべてが尖っている、唯一無二のハイテク・バンドだと思う。(武田光太郎)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】むらたたむ(d)、ハラグチサン(b)、SAKI/葉月(g)、mayu(vo)

    発売元:マスターワークス 品番:DDCZ-2289 発売日:2022.12.14

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    【A】Skoop On Somebody『1997』

    d:KO-HEY

    情景を描くようにグルーヴをビルドアップさせる
    KO-HEYの丁寧な積み方はあらためて見事

    ブラック・ミュージック通をも“本物”と唸らせる歌とグルーヴで1997年にデビューしたSkoopが、12年半のKO-HEY不在を乗り越え再び3人のバンドで取り組んだ新作。KO-HEYの復帰は原点を意識させたのか、かつて共有したソウル、R&B、甘茶、ディスコ、AOR、ファンク、テクノ、ロックなどのエッセンスがバンド25年の経験を通して各曲に絶妙にブレンドされ、再始動の喜びと阿吽の呼吸によるサウンド&グルーヴ作りに満ち溢れている。冒頭から生ドラムの質感たっぷりのソウル・グルーヴに惹き込まれるが、曲ごとに違う景色を見せるのもSkoopの懐の広さで、各曲で情景を描くようにグルーヴをビルドアップさせるKO-HEYの丁寧な積み方はあらためて見事。(村田誠二)

    ◎Disc Information
    【参加ミュージシャン】KO-HEY(d)、KO-ICHIRO(key)、TAKE(vo)

    発売元:ソニー  品番:SECL-2814 発売日:2022.11.30

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