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    ヤガミ・トール64歳のBirthday Liveをレポート|ルーツと“現在”が交差した「IT’S A NOW! 2026」

    • Photo:MASA/Report:Seiji Murata

    “現在”のヤガミを形作った
    音楽が交差した一夜

    毎年恒例となったBUCK∞TICKヤガミ・トールのバースデイ・ライヴ“IT’S A NOW! 2026”が、64歳となる誕生日当日の8月19日に、下北沢Shangri-Laで行われた。BUCK∞TICKの構築された世界観とは一線を画し、この日だけはハッピー&リラックス・ムード。自身が率いる“Yagami Toll & Blue Sky”のメンバーと共に“ロックンロール・パーティー”が繰り広げられ、ヤガミの“現在”に大いなる影響を与えてきた“音楽”と“人”が大きくフィーチャーされる非常にパーソナルなライヴとなるため、この日も見逃せないと駆けつけたファンで、会場はすし詰め状態だ。

    そもそも開演前BGMが、南 佳孝、尾崎亜美……と、BUCK∞TICKでのヤガミしか知らない人には想定を超えた“シティ・ポップ”な選曲。もちろんキャロルのコピーから始まったヤガミの音楽人生だけに、矢沢永吉「時間よ止まれ」が流れ、本編でもキャロルの定番カヴァーが毎回お馴染なのだが、10代の頃から荒井由実をはじめとした大のシンガー・ソングライター好き。そのドラマーである林 立夫や村上“ポンタ”秀一なども欠かさずコピーしていたというバックグラウンドが、“現在”のヤガミの大いなる一部を形成している……そんな影響関係を、あちこちに見ることができる。

    キャロルのカヴァーで幕を開けた
    64歳のロックンロール・パーティー

    定刻の18時半が迫る中、いきなり「盛り上がる準備は万全か!! ヤガミ・トールと我輩は、世を忍ぶ仮の姿では同学年だ」というデーモン閣下の影アナウンスで、笑いと突然のシークレットゲストによる演出の驚きと共に開幕。映画『エデンの東』のテーマ曲がストリングスの雄大なアンサンブルで響き渡ると、大歓声に包まれながらヤガミが1人で現れ、まずはドラム・ソロからスタート。

    キックでフリーにアクセントを入れながらのスネア・ソロから入るが、“70’sビスタライト+20’sブラックビューティー”という、“ドラム・セットという1つの楽器”としての鳴り方、そして低音から高音までのバランスが絶妙に良い。その後、キックが4分打ちになったところで、“Blue Sky”の面々が1人ずつステージに登場し、原田喧太(g&vo)、屋宜昌登(g)、そして今回は、療養中のKANAME(b&vo)の代役として人時(b)、さらに助っ人として“JET FINGER”横関 敦(g)が出揃った。

    このパーティーの定番曲「憎いあの娘」から始まった第一部はキャロルのカヴァーで構成。続くファストR&R「Slow Down」でも、ヤガミの身体に染み込んでいる超タイトなR&R 8ビートに、屋宜のレスポールから繰り出される分厚いリフが絡みつき、横関の歌心溢れる速弾きソロで、いきなり沸点に達したかのような盛り上がりに。2分半があっという間に終わったところで、原田から毎年恒例の「この歳の抱負」を問われたヤガミは、「65歳もここでできるように頑張りたいと思います」とひと言。

    続いて、2人目のシークレットゲストでBOW WOW創設メンバーでもある斉藤光浩(g&vo)が横関と交代で入ると、「ヘイ・タクシー」、「ルイジアンナ」と飛ばしまくり、また横関も加わって、かつてはこのパーティーの大団円を飾ったこともある「ファンキー・モンキー・ベイビー」を早くも披露し、第一部が終了。この日のヤガミは、いつにも増して力みがなく、スティックの重みを感じつつそれを自在にコントロールしている分、よりシャープなエイトの刻みがビートのスピード感に拍車をかけていたように思う。

    Photo:Akito Takegawa

    多彩な楽曲で際立つヤガミのドラミング

    続いて、“Yagami Toll & Blue Sky”のバンド名義で自主レーベル“IT’S A NOW RECORDS”から19年に発表されたミニ・アルバム『WONDERFUL HOME -Thunder & Cold wind-』からのレパートリーを中心に、シークレットなゲストも飛び入りする第二部へ。

    「Lovers Of The World(マンダム〜男の世界)」に乗って、常連のゲストであり、BUCK∞TICK 87年の2ndアルバム『SEXUALxxxxx!』をはじめ、「Just One More Kiss」や「惡の華」にも参加している、“困ったときの大先輩(ヤガミ談)”だというキーボーディストの中山 努を先頭に、バンド・メンバーも次々登場すると、風と雷のSEから、屋宜作曲の12/8拍子ブルース「Wonderful Home -Thunder & Cold wind-」で幕を開ける。

    ここからバンドのレパートリーが続くが、ヴォーカリスト/コーラスなど歌の要であるKANAMEが不在のため、この日は、レコーディング時の“KANAMEパート”を流しながらの生演奏となった。原田曰く「KANAMEさんの声が若い」、「今日はキーが下げられない」と笑いをとり、ヤガミもこれまでと違い、イヤモニで歌とクリックを聴きながらなのだが、百戦錬磨のメンバーのR&Rは、さすがのバンド・グルーヴ。「SODA ROCK!!」中盤のドラム・ブレイクも、「Fire Girl」でのシェイキーな60’s歌謡ロック・グルーヴも、「ROCK’N’ROLL STAR」のカラッとしたアタマ打ちのアメリカン・ロックも、実にノリがシャープ。

    この日、あらためて気づいたのは、12”タムからスネアへの“トンタタタカタカ”フィルが、どれだけ高速でも、タム・ショット後のアップ・ストロークが素早く、さらにブラックビューティーのチューニングや音量感と相まって、このフレーズ全体の発音や“滑舌”が非常に良く、この場面になると、ジョン・ボーナムが「Dazed & Confused」などで多用するフレーズとダブる瞬間があった。研究家の1人としてこんなところも自然と身についている……などと言うのは考えすぎだろうか。

    続いては、このパーティーにも頻繁にゲスト参加していたが、残念ながら22年に亡くなってしまった盟友であるSHIMEの「TOP OF MOUNTAIN BAR」、「LOVE DREAM」へ。こういうじっくりと聴かせる8ビートを、シンバルを含めたドラム・サウンドとの“景色”で聴かせる揺るぎない“説得力”もヤガミの真骨頂の1つだろう。続けて、横関が合流したT.Rex「20th Century Boy」という名の、尺の決まっていないソロ回し曲では、人時の細かいフレーズのベース・ソロに反応したあと、4分キック上でタム→スネアのブロークン・ダブルを効果的に使ったソロで観客を沸かせた。

    すると、ここで、事前にまったく明かされていなかったシークレット・ゲスト、大槻ケンヂが登場し、会場の温度がさらに上がった! インディーズ時代から数少ない接点はあったが、ここ数年で距離が縮まり、昨年はFC会報誌でも対談が実現。この日の出演は、大槻が自らの誕生日にプレゼントをもらったそのお返しとのことで、急遽実現したという。

    大槻をヴォーカルに迎えて演奏されたザ・スターリン「ロマンチスト」では、まさに“ヴォーカリスト”としてパフォーマンスを、まざまざと見せつけられた気がした。このあとヤガミも「64歳にして“ロマンチスト”をやると思わなかった」と言っていたが、そんなエネルギッシュなパンク8ビートも、身体に染みついているかのようなプレイだ。そして本編最後は、Blue Skyの名曲「Blow Wind」。分厚いコーラスと共に、熟練ミュージシャン達による重層的なアンサンブルで紡がれたこのミディアム・ヘヴィなアメリカン・ロック曲は、まさにラストに相応しいと言える選曲だった。

    仲間達に祝福された“本日の主役”

    アンコールでは、恒例のヤガミによる“1人カラオケ・タイム”(笑)。04年発表の1stソロ『1977/BLUE SKY』に収録された、スムース&メロウ・リアレンジ・バージョンの「ファンキー・モンキー・ベイビー」を、ステージ中央で1人椅子に座り、“本日の主役”と書かれたタスキをかけて歌うヤガミ……そのギャップに萌えた人が大勢いたに違いない。

    そして、全員が登場したところで、BUCK∞TICKの今井 寿と樋口 豊、そしてD’ERLANGERのTetsuが、それぞれ花束やバースデイケーキを持って登場すると、観客と共に“ハッピーバースデイ・トゥ・ユー”の大合唱。樋口が「今日のアニイはかなり気合いが入ってました」と言うと、ヤガミは「ユータと今井が来てるなら、“ロマンチスト”演ってもらえば良かった(笑)」と言いながらドラムに戻り、ラストは恒例のSteppenwolf「Born To Be Wild」で、会場全体がハッピーな雰囲気に包まれながら幕が閉じた。

    終演後の客出しBGMは、松崎しげる「マイ・ラブ」、吉田美奈子「愛は彼方」、荒井由実「天気雨」……など。読者のみなさんは、そんな楽曲達もヤガミのバックボーンになっていることを意識しながら、Yagami Toll & Blue Skyの次作、そしてBUCK∞TICKの次なる展開を期待しよう!

    機材レポートは9月9日公開予定!