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フー・ファイターズ新ドラマー|アイラン・ルービンの実力をルーツ&キャリアから紐解く【新作発売記念】
- Photo:Elizabeth Miranda(Main)
昨年ドラマーが変わったデイヴ・グロール率いるロック・バンド、フー・ファイターズ。今は亡きテイラー・ホーキンスの後を継いだジョシュ・フリーズに代わり、新たにそのポジションを担うことになったのがアイラン・ルービン。ナイン・インチ・ネイルズでの活動で知られ、日本でも高い人気を誇る剛腕ロック・ドラマーだ。アイランがフー・ファイターズに迎えられた理由とは? 彼の初参加となった『ユア・フェイヴァリット・トイ』の発売を記念し、そのルーツとキャリアからその実力を掘り下げる。
ボンゾのフィールにジャズ・レジェンドの
スキルを組み合わせたアイランのスタイル
アイラン・ルービン(レーベル表記はイラン・ルービン)は1988年生まれ。父親がドラマーであり、自宅のガレージにドラム・セットがあったことが、彼がドラムを始めるきっかけになったという。本人の記憶ではないものの、2〜3歳の頃から身の回りのものを叩いていたというエピソードが残っており、極めて早い段階からリズムへの強い関心を示していたことがうかがえる。
本格的にドラムを始めたのは7〜8歳頃。最初の数年間は独学で腕を磨き、その後に譜面の読み方などを短期間学んだ以外は、耳から得た情報と実践によってスキルを習得。ジム・チェイピンの教則本『Advanced Techniques for the Modern Drummer』を愛読しつつも、単なる反復練習にとどまらず、習得したパターンを応用し、自身のプレイに落とし込むことを重視していたという。

影響を受けたドラマーはレッド・ツェッペリンのジョン・ボーナム。父親からレッド・ツェッペリンのアルバムを手渡され、ボンゾのグルーヴとサウンドに惹かれたそうだ。2015年11月号のインタビューでは「ビートやフィールという意味で言うなら、僕は彼の3連のフィールに大きな影響を受けている。スネアだろうが何だろうが、僕の叩く3連はジョン・ボーナム風だと思うよ(笑)」と述べている。フー・ファイターズのフロントマンであり、凄腕のロック・ドラマーでもあるデイヴ・グロールは、熱心なジョン・ボーナム・フォロワーとして有名。“ボンゾ”という共通項も、彼がフー・ファイターズのドラマーに抜擢された根底にあるのかもしれない。
ボンゾ以外にポリスのスチュワート・コープランドからシンコペーションやダイナミクスを学んだ他、ジョー・モレロ、バディ・リッチといったレジェンド・ジャズ・ドラマーの影響も受けており、これらのドラマー達のスタイルの組み合わせが、ドラマー、アイラン・ルービンの“核”を形作っている。
10代でプロのキャリアをスタートし
ナイン・インチ・ネイルズに抜擢
本人が最初の大きな仕事と語るのが、イギリスのバンド=ロストプロフェッツでの活動。抜擢されたのは2005年のことで、アイランは当時まだ17歳。そしてロストプロフェッツのステージを観ていたトレント・レズナーの目に留まり、オーディションを経て、19歳でナイン・インチ・ネイルズに加入。天才ドラマーの出現に、ドラマー界隈で話題を集めたことを覚えている。そしてアイランの前任を務めていたドラマーがジョシュ・フリーズだったことも、何か運命を感じてしまう。
ナイン・インチ・ネイルズでの活動は、アイランのドラマーとしての存在を決定づけた重要な転機になった。楽曲は打ち込みと同期しており、ライヴでは常にクリックに合わせて演奏。幼少期からメトロノームに慣れ親しんできたという彼にとって、クリックは意識する対象ではなく、演奏の中に溶け込むものとして捉えているという。その感覚を持った彼のドラミングは、クリックと同期しているとは思えないほどアグレッシヴ。正確なタイム・キープと、エネルギッシュなパフォーマンスを兼ね備えている点も彼の特徴だ。
さらに彼は、パワフルで大音量のプレイを特徴としながらも、“うるさくならない音”を出すことを重視。強く叩くのではなく、自然なフォームの中で最大音量と音質のバランスを見極める――その感覚は長年の経験の中で身についたものだという。スティックを短く持ち、オープン・ハンドでダイナミックに叩く姿は、ステージでも一際存在感を放っている。
ナイン・インチ・ネイルズ以外にもBlink182のメンバーが結成したバンド、エンジェルズ&エアウェーヴスやパラモアなどでも活動。さらに自身のプロジェクト=ザ・ニュー・レジームでは作曲・ヴォーカルを手がけるなど、マルチな才能を発揮。
機材は長年アメリカのカスタム・ドラム・メーカー、Q Drums Co.を愛用していたが、2023年からはグレッチのエンドーサーに。敬愛するボンゾと同じ1バス、1タム、2フロア・タムの4点で、来日公演でも使用したグリーン・スパークルのドラムはブロードキャスター・シリーズ。USAカスタムも所有しており、ライヴでは26”BD、14”TT、16”FT、18”FTを使っているそうで、やはりボンゾと同じサイズ構成となっている。シンバルはジルジャンで、本人のSNSを見る限り、Kシリーズをメインに使っているようだ。
フー・ファイターズのサウンドに
新しい風を吹かせるアイランのプレイ
若くして豊富なキャリアを持つアイランは、オーディションを経て、2025年よりフー・ファイターズに加入。デイヴ・グロールから直接連絡があったと、そのきっかけを語っている。そして10月には来日を果たし、日本のオーディエンスの前で圧巻のドラミングを披露。テイラー・ホーキンス、ジョシュ・フリーズに代わる新しいドラマーとして、日本のファンから大きな喝采を浴びた。
2025年7月号の「究極のテクニック&至高のグルーヴ」特集で、史上最高のテクニカル・ドラマーにアイランを選んだ売れっ子ドラマーの河村吉宏(Mrs. GREEN APPLE、ずっと真夜中でいいのに。、etc.)も、「最高最強。FOO FIGHTERSに合いまくってる」と実際にアイランのプレイを体感し、絶賛していた。
ジョン・ボーナムから学んだスウィングするロック・フィールと、ナイン・インチ・ネイルズで培ったソリッドなタイム。その両方を併せ持つアイランが加入して、初となるアルバム『ユア・フェイヴァリット・トイ』が4月24日にリリースされる。バンドのホーム・スタジオでレコーディングが行われたそうで、オリヴァー・ロマンとの共同プロデュース。タイトル曲では初期衝動を感じさせるアグレッシヴなロック・サウンドを轟かせている。
フー・ファイターズのバンド・サウンドに新しい風を吹かせる、現代最高峰のロック・ドラマーの存在が、進化し続けるロック・バンドの次なるフェーズを形作る重要なピースになることは間違いない。

◉作品情報
『ユア・フェイヴァリット・トイ』
フー・ファイターズ
ソニー SICP-6778 4月24日発売
01.コート・イン・ジ・エコー
02.オブ・オール・ピープル
03.ウィンドウ
04.ユア・フェイヴァリット・トイ
05.イフ・ユー・オンリー・ニュー
06.スピット・シャイン
07.アンコンディショナル
08.チャイルド・アクター
09.アーメン、ケイヴマン
10.アスキング・フォー・ア・フレンド
↓詳細はこちら↓
https://www.sonymusic.co.jp/artist/foofighters/info/582562
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