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Archive Interview−ジンジャー・ベイカー

  • Interview:Seiji Murata/Translation & Interpretation:Akira Sakamoto/Photo:Eiji Kikuchi

本日8月19日は2019年に急逝したジンジャー・ベイカーの生誕記念日。伝説のトリオ=CREAMのドラマーとして世界を席巻し、その後はジャズ、アフリカ音楽へ傾倒するなど、唯一無二の活動を貫いてきたジンジャー。ここではあらためてその功績を振り返るべく、2012年に実現した対面インタビューの一部をお届けしよう。

何よりもまず、俺は“ミュージシャン”なんだ

●あなたの長いキャリアについてはすでに広く知られていますが、本誌では初めての対面インタビューということで、あなたが今演奏している音楽=ジャズとの関連もあるのですが、あなたの音楽背景についてうかがいたいと思います。

GB ジャズのアルバムなら1990年代に3枚作っている。良い作品だったからビルボードのチャートにも入ったんだ。

●それは、ビル・フリゼールとチャーリー・ヘイデンとのトリオによる『ゴーイング・バック・ホーム』と『フォーリング・オフ・ザ・ルーフ』、デンヴァー・ジャズ・クインテット・トゥ・オクテットの『カウワード・オフ・ザ・カントリー』ですよね。今回はそこから遡って、50年代末から60年代にかけてのイギリスのジャズ・シーンについてうかがいたいのですが。

GB ロニー・スコットの店や“サンドウィッチ”といったクラブがたくさんあって、ジャズ・プレイヤー達がそこに集まって、一晩中プレイしていたよ。

●ブルースや初期のロックなど、他のジャンルのプレイヤーとは親交がありましたか?

GB ロックは一度もやったことはない。俺をロックンロール・ドラマーだと思っているとしたら、それはとんだ見当違いだ。何よりもまず、俺は“ミュージシャン”なんだ。

●ええ。では、60年代にはどんなミュージシャンに最も大きな影響を受けましたか?

GB フィル・シーメンやマックス・ローチ、エルヴィン・ジョーンズ、フィリー・ジョー・ジョーンズ、それ以前に活躍したベイビー・ドッズだね。

●ザ・ビートルズなどの初期のロックンロールやスキッフルといった、50年代から60年代初頭にかけて、イギリスで流行っていた音楽には興味をお持ちでしたか?

GB 当時俺が活動していたアレクシス・コーナーのブルース・インコーポレイテッドは、ジャズやブルースのミュージシャンの混成バンドだった。その後、グラハム・ボンド・オーガニゼーションでの活動を経て、クリームを結成したんだ。

●それらの音楽はすべて、あなたが演奏したいと思っていたジャズの延長線上にあったものということになりますか。

GB クリームの音楽も、ほとんどインプロヴィゼーションだったからね。同じ曲でも二晩続けて同じように演奏したことはなかった。テーマの部分は同じアレンジでも、その後は成りゆき任せで、あらかじめ計算したものではなかったんだ。

●なるほど。世間ではクリームを、60年代における最も偉大なロック・バンドの1つというふうに認識していますが、実際には……。

GB あれはロックンロールじゃない。ロックンロールだったことは一度もない。まあ、俺達はバカげた服を着ることを考え出したけれど、あれはただ……バカげたことをやっていただけだしね(笑)。

●クリームも音楽的にはあくまでも、インプロヴィゼーションが主体だったということですね。

GB そういうことさ。

●それがご本人のコメントというところに興味をそそられます。

GB とにかく、同じ曲を同じようにはやらなかったんだ……事前に計算し過ぎて、毎晩まったく同じ演奏をしていた他の誰かとは違ってね。俺なら、そんなのは我慢できなかっただろうな。

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