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Archive Interview – トニー・ウィリアムス

  • Interview:Masahiko Osaka
  • Photo:Michael Putland/Getty Images

私は先人達のやったことをそのままやるんだよ、彼らがもし自分だったらと考えてね

私を刺激し鼓舞する
先人達に敬意を表する

●あなたが以前、ヤン・ハマーと一緒にやっているのを見たことがあるんですが、それはもう完全にロックでした。そういったロックなどをやるのにも何も抵抗もないんですね?
トニー まったくないよ。私はカントリー&ウェスタンも、ファンクもロックもリズム&ブルースも、クラシックも全部好きなんだ。

●あなたのそういった音楽観のようなものを教えていただけますか?
トニー ダメだ。それはウィリアムス家に伝わる秘法だから教えることはできない。

●それでは今後もこのトリオで活動を続けていくのですか?
トニー そうだね。できれば年に1度か2度はツアーをやりたいと思っている。

●同じメンバーで、ですか?
トニー そうだ。

●以前のようにハンク・ジョーンズやハービー・ハンコックとトリオをやることは?
トニー おそらくそういう機会はないだろうね。

●今回のトリオのピアニストであるマルグリュー・ミラーとは長いつき合いですよね?
トニー 私は彼のプレイが大好きだし、良い友達でもある。音楽を続ける上で重要なことの1つに、そういった良い人間と仕事できるかということがある。これは長くやっていく上では大切だよ。

インタビューが実現した1996年12月号の誌面がこちら。インタビュアーは大坂昌彦が務めた

●ベーシストは何人か変わっていますね。あなたのクインテットでチャーネット・モフェットが弾いているのも見たことがあるし、ボブ・ハーストもやっていたことがありますよね。あなたはどういったベース・プレイヤーが好きですか?
トニー 音楽をよく知っているベーシストだね。ハーモニー的にもリズム的にも何か貢献してくれるプレイヤーが良い。でも多くのベーシストはそれができないんだ。そのコードが持っている色を変える能力や、それに対する正しいベース・ラインを弾く能力が必要なんだ。まぁこれはベース・プレイヤーに限ったことではなく、すべての楽器に言えることだけどね。トランペットだってサックスだってみんな、ただ安全なことをやるのではなく、チャンスを掴んで自分が音楽に対して何ができるか、試してみる姿勢が必要だよ。

●それがあなたの音楽に対するコンセプトというわけですか?
トニー いや、そうではないが、音楽は変わっていくものだ。いつも刺激が必要だし、刺激的なものだからこそ楽しいんだよ。だがそれは脳手術ではないからね。音楽は人を癒すことができるものだと思うけど、それはガン治療とかそういったものとは違う。おそらく少しはそういったものの助けにはなるだろうが、もっとセラピーに近い、まぁ基本的には楽しいことだけどね。

●最後にあなたのシンバル・レガートについてうかがいたいのですが……。
トニー それは非常に高くつく質問だよ。それこそ私の祖父の祖父の、そのまた祖父の祖父……たぶん紀元前12世紀から伝わる秘法だ。手書きしたものが封印されて、スイス銀行に保管されているよ。まぁそれは冗談として、シンバル・プレイは若いときに非常に時間を割いて練習した事柄だね。でも基本的にはアート・ブレイキー、フィリー・ジョー・ジョーンズ、ジミー・コブ、ロイ・ヘインズといった、私がよく聴いたプレイヤー達のコンビネーションだ。シンバル・プレイはね。考えるに私のプレイというのは単にそれらの人達がやったことを追っているにすぎない。マックス・ローチとかアート・ブレイキー、フィリー・ジョー、ロイ・ヘインズ、エルヴィン・ジョーンズ……偉大な先人達のやったことだ。私は彼らのやったことをそのままやるんだよ。彼らがもし自分だったらと考えてね。私のやっていることはそれだけのことなんだ。なぜなら基本的に新しいことなんて何もなくて、ただ間に入る解釈が違うだけなんだ。個人個人、解釈というものが違う。私は何も新しいことはしていないし、ただ彼らがやったのと同じようにドラムを演奏するだけだ。それはちょうど人々がラップと呼んでいるものがまったく新しいことではないのと同じようなものだよ。50年代にもビートニクスと呼ばれたものがあった。カフェなどでジャズ・バンドを従えて詩を読んだりするやつだ。ビート・ジェネレーションとか言われたやつだ。ビートのスウィングから今風のビートに変わっただけだ。何も新しいことはなく、ただ解釈が違うだけなんだ。同様に私のやっていることはマックス・ローチやアート・ブレイキーのやっていることと何ら変わりはない。ただ私というフィルターを通しているだけだよ。シンバル・プレイも同じことだ。私は彼らに対して、正直に敬意を表するよ。彼ら……私を鼓舞し続けて、世界には素晴らしいことがあると信じさせてくれた人々に敬意を表するだけだ。争いや殺りく、邪悪なことや飢餓とか、そういったことよりね。