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Interview – オカモトレイジ[OKAMOTO’S]

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Photo:Yoshika Horita(page 3)

自然なグルーヴで自分達が納得できるテイクが出来上がったのは
自分達の“バンド・パワー”があってこそ

メンバーの多彩な音楽的バックボーンを現代的に解釈し、自らのスタイルに落とし込んできたOKAMOTO’S。今年8月にリリースした新作EP『Welcome My Friend』は、富豪刑事Balance:UNLIMITEDのエンディング・テーマである表題曲や、黒木 瞳監督の十二単衣を着た悪魔主題歌の「History」など注目の楽曲も並び、ポップさや歌謡曲のテイストを取り入れながらも、OKAMOTO’Sらしいロック要素もふんだんに盛り込まれている。今作について、オカモトレイジは“自然なグルーヴで納得できるテイクができた”作品だという。今回のインタビューでは、彼の楽曲でのドラム・プレイを掘り下げていった。

プリプロのつもりで演奏してるから
程良く気の抜けたレイドバック具合いだった

●今作『Welcome My Friend』は、フル・アルバム『BOY』から数えると約1年半ぶりのリリースになりますが、手応えはいかがでしたか?

オカモトレイジ(以下 レイジ) 全曲、納得のいくテイクが録れたっていう感じですね。プリプロのつもりでスタジオに入ったら本チャンが録れたというか(笑)。すごくこだわってチューニングしたりマイキングして作ったというよりは、“こんなもんかな”って感じでやってみたら、スムーズに出来上がったんです。

●そうなんですね。曲の構成も作り込まれている印象を受けたので、試行錯誤されて制作したのかなとも感じました。

レイジ あ、でも「Welcome My Friend」はアニメ(アニメ「富豪刑事 Balance:UNLIMITED」)、「History」は映画(映画『十二単衣を着た悪魔』)のエンディング・テーマだったりもしたので、作り込んだと言えば、かなり作り込みました。その2曲は前もってデモを共有して、みんなでアレンジしていったんですけど、その他の曲はプリプロのままそれが完成版になりました。

●以前のアルバムの『NO MORE MUSIC』ではファンク要素を押し出していたり、『BOY』ではそこからさらにパンクやニューウェイヴのテイストを取り入れていたかと思いますが、今作はそれらの要素を捨てずにまた新しい要素が加わったように感じました。そういう音楽的なディレクションはメンバー同士で行ったりしましたか?

レイジ 特にかっちり決めているわけではなくて、リファレンスにする曲を俺が提案して、それをもとにショウ(vo)やコウキ(g)が曲を作っていくんです。レコーディングのときに方向性を変えるパターンもあるんで。

EP『Welcome My Friend』
アリオラジャパン BVCL-1099

➡︎大井一彌[DATS、yahyel、Ortance]が本作をレビュー!
Drummer’s Disc Guide

●曲によってそれぞれテーマが違うんですね。

レイジ そうですね。表題曲の「Welcome My Friend」とかは、2000年代ぐらいのヒップホップ、R&Bみたいな感じのグルーヴを出したくて。曲調はブラック・アイド・ピーズを意識したりもしました。だから全部ぶっ続けで演奏するんじゃなくて、ドラムでループを組みました。実はドラムは全部は演奏してないっていう。

●確かにかっちりとタイトに繰り返されるビートからはヒップホップらしさも感じられます。フィルなどはダイナミクスを出したパターンとなっていて、サビで曲調がガラッと切り替わりますよね。

レイジ そうですね、ところどころパターンは変えているんですけど、基本的にはループを組んで、同じフレーズをひたすら続けて、サビで全然違う曲になるというのは意識しました。

M1「Welcome My Friend」MV

●フィルの部分などは、チャド・スミスっぽいなとも思いました

レイジ 基本的にやっぱり自分が一番影響を受けているし、バンド始めたての頃にメンバーみんなが聴いていたものレッチリだから、もうそこはしょうがないっすね(笑)。「Misty」とかはモロレッチリっぽくやってみようっていう話で演奏して。

●なるほど。この曲はスネアのサウンドがすごく印象的で、普段レイジさんのドラムで聴かない感じの倍音たっぷりの感じですよね。

レイジ あーそうかもしれないですね。部屋鳴りの感じを結構入れてもらって作りましたね。

●ドラムのフレーズについては、上物や歌メロのノリに対して、後ろ気味になっていますよね。それによって、絶妙なヨレとハネが出てきています。

レイジ すごい努力をしないと、チャド・スミスみたいにはならないから、必要以上にやりました。「Misty」もプリプロのつもりで演奏してるから、程良く気の抜けたレイドバック具合いだったかもしれないですね。“これ、本番じゃないよね”っていうつもりでやったら、本番が録れちゃったっていう。そんな感じでやっても、自然なグルーヴで自分達が納得できるテイクが出来上がったのは、自分達の“バンド・パワー”があってこそだとは思います。それと、「Misty」は自粛前ですけど、コロナ自粛明けの1発目のレコーディングが、KEIJUってラッパーのレコーディングで、3ヵ月ぶりくらいにドラムを触って、リハもせずにレコーディングに臨んだんですけど、そのとき身体が鈍りすぎてすっげぇモタって。それが功を奏してか、マジで自分じゃないみたいにカッコいいテイクが録れたんです(笑)。そういうこともあるんだなと思いました。