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Interview – ラーネル・ルイス

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine Interpretation & Translation:Akira Sakamoto Special Thanks:YAMAHA MUSIC JAPAN

“物語を紡ぐ”最高峰のグルーヴ・マスター

まるでストーリーを語るようにエモーショナルかつ、超グルーヴィなドラミングで聴くものを魅了するドラマー、ラーネル・ルイス。今年の誌上ドラム・コンテスト応募者が回答した“好きなドラマー/ミュージシャン”にもその名が多く上がり、日本でも注目される彼が、リズム&ドラム・マガジン21年1月号に初登場(同誌内の川口千里のインタビューでもラーネルについて言及されている)! スナーキー・パピーをはじめ、数多くの著名なアーティストに抜擢される一方、ソロ活動にも精力的な彼だが、ここでは、新作『Relive the Moment』ついてうかがったアナザー・カット・インタビューを公開! 

サステインが長く、鳴りが豊かで
メロディを演奏するように叩けるピッチに
チューニングするのが好きなんだ

●今回、『Relive The Moment』が発表されましたが、これは最近作の『In The Moment』(2018年)から選んだ6曲のドラム・パートを新たに差し替えて、未発表の演奏を1曲加えた作品ということですね。

ラーネル その通りだよ。今年はもともと、僕がオケに合わせてドラム・パートを演奏するシーンだけじゃなく、バンドと一緒に演奏するシーンの動画撮影をする予定でいた。ところが、2月にスタッフと最終の打ち合わせをした直後にパンデミックが起きてしまったんだ。

●なるほど。

ラーネル それでも、できる限りのことはやっておこうと、最小限のスタッフで、トラックに合わせた僕の演奏だけを撮影することにしたというわけ。僕がアーティストとプロデューサーを兼ねているいつもの録音現場だと、バンドのメンバーが気持ち良く演奏できるような環境づくりやら食事の手配やら、気を遣うことがたくさんあって、自分のことはいつも後回しになっていたけれど、今回はむしろ、自分がドラムを演奏することだけに集中できる良い機会になったよ。今はアーティストにとって動画コンテンツを作ることがとても重要になっているから、僕らも一歩踏み込んで高品質な動画をオンラインで提供して、さらにその音源をストリーミングやヴァイナルの形でも発表することにしたんだ。

『Relive the Moment』
Larnell Lewis
iTunesにて購入可

●前作『In The Moment』は、フュージョンからストレートアヘッド、ラテン、セカンドラインなど、さまざまなスタイルの音楽を盛り込んだアルバムという印象でした。

ラーネル たしかに『In The Moment』では、自分のドラミングだけじゃなく、曲作りについてもさまざまな側面を披露したいという意図があった。それまでに僕は、さまざまなジャンルのさまざまなアーティストと共演することで、それぞれのスタイルのドラミングはもちろん、メロディやコード、リズムの感覚も身につけることができたからね。今回のアルバムでも、僕のさまざまな音楽表現というものを楽しんでもらえると思っているよ。

●タム類のチューニングに関しては、どんな考え方を持っていますか?『Relieve~』の「Change Your Mind」や「Rejoice」では、タムでメロディを奏でていて、伝統的なチューニングとは少し違うような印象がありました。

ラーネル ピッチ感を曖昧にするという意味での伝統的なチューニングと違っているのは確かで、僕はサステインが長く、鳴りが豊かで、メロディを演奏するような叩き方ができるピッチにチューニングするのが好きなんだ。僕のサウンドの一部になっている明確なトーンは、聴いて育ったゴスペルに影響を受けた部分があって、チューニングを除いたメロディックな発想は、ジャズの影響だと思う。チューニングに関しては時間をかけて研究してきたし、今もその過程にいるけれど、一応は自分がやりやすいと思う方法は見つけたつもりなんだ。自分にインスピレーションやパワーを与えて、自分の心の中を反映してくれるようなチューニングをね。それを実現するという意味では、エヴァンス のUV2の登場は僕にとっては画期的な出来事だったんだ。

●ドラムの録音やミックスについては、何か心がけていることはありますか?

ラーネル マイクの選択や録音の方法については今も試行錯誤しているところなんだ。コロナ禍になってからは録音がより重要になっているしね。ただ、現場では作業を手早く行う必要があるから、基本的にはエンジニア達に任せて、自分の求めるサウンドが相手にうまく伝わっていないなと思ったときにだけ相談するようにしているよ。プロデューサーから声がかかるときには、その人が僕のサウンドについて理解してくれているわけだし、一流アーティストのセッションの現場には一流のエンジニアがいるから、ある意味、甘やかされているのかもしれないけどね(笑)。

リズム&ドラム・マガジン21年1月号

本編は、リズム&ドラム・マガジン21年1月号でチェック!! 彼の生い立ちや影響を受けた音楽、新作でのドラミングを軸にプレイの秘訣を深掘りしていきます。さらにはラーネルのこだわりのセット・アップも紹介! 今注目の“物語を紡ぐ”グルーヴ・マスターの魅力をいち早くお届けしていきます!

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◎Profile
ラーネル・ルイス:トロント生まれ。カナダ/アメリカを中心としてジャズやフュージョンの分野で活躍するセッション・ドラマー。これまでに、グレゴリー・ポーター、パット・メセニー、ララ・ハサウェイ、ジョン・スコフィールド、ゲイリー・バートンなど著名なアーティスト共演し、地元カナダでも、モリー・ジョンソン、エリザベス・シェパード、ジョニー・リード、ケリーリー・エヴァンス、デビッド・クレイトン・トーマスなどの有名アーティストとレコーディングを行う。2016年には米ジャズ・フュージョン・バンド=スナーキー・パピーでセッション・メンバーとして来日、同バンドで2度のグラミー賞を受賞。近年は、作曲家/プロデューサーとしても活動し、2018年に彼の名義となる初のリーダー作品『In the Moment』をリリース。2020年には、2ndアルバムとなる『Relive the Moment』を発表。

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