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ライヴの代わりに始めたYouTubeが
今は“自分を発信する”場所になってますね

●ドラミングだと、年々ビートの追求というか、無駄なことを削ぎ落とす感覚が強くなっていっているようなイメージがあります。

坂東 そこは作曲者として、明確に“こういうビートをやりたい”というイメージがあります。あとはサウンド作りですね。1曲ごとに部屋鳴りを生かすとか、逆になるべく少なくするように囲いを作ったりとか、極端にやりました。

●YouTubeにはプリプロやレコーディングの様子もアップされていますが、今回使用したキットはYamahaのRecording Customだけのように見受けられました。

坂東 そうですね。レコカスをガムテープで“ベトベト”にしたり、1台でいろいろな音色を作ったんです。スネアはブラスの6.5″で、確か80年台のYamahaだったかな? あとYD-9000のバーチの5.5″をよく使いますね。現代的なスネアよりもいい意味で雑味があるというか、今のスネアにはない独特な倍音の出方があるというか。その雑味がアンサンブルの中に入るとすごくいい存在感になるんです。

●いろいろマスキングされてちょうどいい感じになってるんですかね。

坂東 だと思います。

●Kジルジャンの17”カスタム・ハイブリッド・クラッシュを2枚使ってハイハットにしたりもしてましたよね?

坂東 「Only One Earth」ですね。あの曲は地球の大地をどっしり、ガーっと這っていくイメージだったので。スタンダードなサイズのハイハットだと、どうしても音が浮いちゃって、軽さが出てしまうんです。スクェアのレコーディングでは何回かやったことがありますよ。安藤さんが作ったミディアム・スローなロック・ナンバーというか、ああいったテイストの曲で登場することが多かったですね。

●サウンドだけでなく、どっしりとしたビートもすごく印象的でした。そういった壮大な楽曲もありつつ、坂東さんが作った現代を象徴するような曲もあり、本当に振れ幅が大きいアルバムに仕上がっていると思います。

坂東 毎回思うんですけど、本当に変わってますよね(笑)。作曲者それぞれミックスの方向も違うので、最後のマスタリングではすごく悩むんです。こういうバンドはなかなかいないと思います。たくさんやりたいことができて、なおかつ安藤さんも伊東さんもそれを受け入れてくれるというか、それをご自身で消化して個性を出しながら返してくれる。それと同じことを僕もやっていきたいというか、若い世代のエッセンスを取り入れてスクェア流に出していきたいなと感じましたね。

●毎年アルバムを出すとなると、すごくいろいろなところにアンテナを巡らせていると思うんですけど、インプットに関してはどのようにしていますか?

坂東 音楽を聴いたりというのはもちろんありますけど、サポートの現場で体験したことがヒントになったりとか、この楽器をこういう使い方すればこういうことになるんだとか、曲のアイディアは自分の中に常に貯めておいていますね。言葉は悪いですけど、ちょっとしたアレンジの技を盗んだり、自分の中で発展させて出す。年に1枚でもそれなりのアイディアは溜まるので、今のところ大変ではないですね。

●Little Glee Monsterのライヴや、サックス・プレイヤーの才恵加さんの作品に参加したりされてますもんね。さまざまな現場で活躍されていると思うのですが、坂東さんの現在のプレイ・スタイルの核は、どう感じていますか?

坂東 やっぱり最近の出来事で言うと、一昨年のソニー・エモリーとのツイン・ドラム(『DREAMS COME TRUE WONDERLAND 2019』で共演)がすごく大きいですね。今のセッティングも、見てもらえばわかると思うんですけど、まさにソニーって感じで。ソニーのドラムって、明確で的確で、余計なことやらずに、“それが欲しいんだよ”っていうのを見事にやってくれるんです。曲の理解力もすごくて。そういうドラマーになりたいですね。余計なことをやらないけど、やるべきところはやるみたいな。

●昨年はYouTubeチャンネルも開設されましたよね。

坂東 それも自分にとってやっぱり大きい出来事でしたね。一時期はライヴがなくなってしまって、発信ができない、生で演奏を伝えられないというのは苦しいところがありましたけど、苦しんでいてもしょうがないと思って、動画で発信していこうと思ったんです。最初はやるべきかどうかも考えてたんですけど、そんな悩んでいる場合じゃないと思って。とりあえず新しい方法で何か発信しないとって、始めてみたら面白いんですよ。動画編集が自分に合っていたというのもあるんですけどね。Pro Toolsと感覚がけっこう似てて。こういう方法もあったのか、もっと早めにやっておけば良かったと思いましたね。そういう形で発信できたこと自体が新たな発見になったというか。ライヴができない分、YouTubeで補っていこうと始めたんですけど、今は“自分を発信する”場所になってますね。

●動画ではEWIを吹いていたりもしていましたよね?

坂東 そうですね。もともとはキーボードで作曲していたんですけど、ウィンド・シンセが少し吹けるようになって、呼吸の間がわかるようになったんです。鍵盤でメロディを作ると、どうしても埋めていっちゃうんですよね。伊東さんに「これ息継ぎできないぞ」って言われたりしたこともあったんですけど、息を使って(実際に吹いて)考えると、“スペースが空いたメロディ”ができるというか、鍵盤で作るのとは違うニュアンスで出来上がるんです。弦楽器ができるようになるともっといいんですけどね。なかなか難しいですけど、ギターで曲を作ったりするとまた違った世界が見えるんだと思います。

安藤在籍ラストとなるツアーは田中晋吾(b/写真左から2番目)、白井アキト(key/写真右)という馴染みのメンバーを加えた5人で行われる予定。

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