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40年以上続いている上に
こんな面白いインスト・バンドは他にない
もっともっと続けていきたい
スクェアの音楽を止められないんです

今年2月、T-SQUARE結成当時からバンドの大黒柱として活躍してきたギタリストの安藤正容が“退団”を表明。そして4月21日、安藤の在籍ラストとなる48枚目のアルバム『FLY!FLY!FLY!』が発売された。2004年に加入して以来、今や作曲やライヴのセットリストを担当するなど、T-SQUAREに欠かせない存在となってきているドラマー、坂東 慧は今作にどのような想いを込めたのだろうか? 今もなお進化を続けるバンドの新たな挑戦について聞いてみた。

いつも通り“今これをやりたい”
“こういうサウンドがカッコいい”
というものを出し合って作りました

●今作『FLY!FLY!FLY!』は、安藤正容さんのT-SQUARE(以下スクェア)在籍ラストの作品ということですが、まずは率直なお気持ちからお聞きしてもいいですか?

坂東 そうですね……安藤さんから退団したいって聞いたのは、今回のアルバム制作よりも前になるんですけど、社長(T-SQUAREのマネジメントを担当している青木幹夫氏)から急遽ミーティングの招集があって。覚悟はしてたんですけど、“こんなに早いタイミングで……?”っていう……。と言ってももう65歳なんですけど、僕の中ではまだまだ現役でやっていくんだろうなと思っていたのもありつつ、いつかこういう日がくるんだろうなとも思っていたので、受け止めることはできましたね。もう40年間もやり続けてきたんですから、本当にすごいです。400曲近く作ってますもんね。

●坂東さんの憧れの人でもあるわけですし、自分が聴いて育ったバンドに加入して、そのオリジナル・メンバーの方が引退するのを見届けるっていうのは、本当に奇跡のようなものですよね。

坂東 本当にそうですよね。安藤さんから直接電話もかかってきたんです。「伊東(たけし)さんと坂東の2人でサポートも入れながら、T-SQUARE alphaっていう感じで続けていってくれる?」って。「はい! やります!」て言ったら「OK! わかったー♪」って(笑)。

今回のアルバムみたいに、森光(奏太)君のような若いベーシストを入れて違うテイストを出してみたりっていうのはもちろん、ギタリストでも変わっていくでしょうし、最初はいろんなメンバーとやると思うんですけど、絶対面白いことが起こる予感がしているので、今から楽しみですね。アルバムも、今のところはこれまで通り1年に1枚のペースは崩さずリリースしていけたらと思っています。

『FLY!FLY!FLY!』
T-SQUARE Music Entertainment Inc. OLCH-10022
T-SQUARE
安藤正容(g)、伊東たけし(sax、EWI)、坂東 慧(d)

●今作は、そんな安藤さんに向けての、いわば“はなむけ”のような作曲は意識したのでしょうか?

坂東 実は、安藤さんが最後だからというのは特別意識した感じではなかったんです。確かに寂しい面もありますけど、新しい形のスクェアを見せていきたいという思いの方が強かったですね。いつも通り作曲者自身が“今これをやりたい”、“こういうサウンドがカッコいいと思う”というものを出し合って作りました。

●40年を超えたバンドでもなお、アップデートを続けようと考えているわけですね。

坂東 伊東さんと僕は全然辞める気がないので(笑)。もっともっと続けていきたい、スクェアの音楽を止められないんです。40年以上続いている上にこんな面白いインスト・バンドは他にはないと思いますし。今まで生まれてきた名曲もいっぱいあります。新しい世代の人達と一緒にスクェアを受け継ぎつつ、新しいスクェアで続けていきたいなという思いで臨みました。そういう意味でベーシストも新しい世代の人達に入ってもらって変化を与えたいなと思いまして。

●先ほども話していた森光奏太さんですね。まさに新しい感覚を持った方だと思うんですけど、今回のレコーディングで変わったなと思った部分はありました?

坂東 やっぱりグルーヴや音色には、新しいものを感じますね。今までになかったウネりというか、それをねらったんですけれども、むしろねらった以上のものを出してくれたなと思います。今までのスクェアとちょっと違うグルーヴの感じが面白かったですね。一緒に音を出したのは、僕の企画でセッションしたのが初めてで、その新しい感覚で、ぜひスクェアで一緒に演奏してみたい、絶対面白いことになるなと思ったのと、伊東さんものこのベース好きだろうなって。

●森光さんのウネりを生かすために、あえてクリックに捉われず、ということもあったんですか?

坂東 確かに森光君が参加した曲で、クリックを使わなかった曲もありました。「Quiet Blue」っていう曲なんですけど、それは曲の中でセクションごとにグルーヴに若干変化が欲しかったというか、ちょっと自由度を持たせたかったので。プリプロではクリックを使ったりもしたんですけど、その曲は機械的になりすぎるよりも、ちょっと揺らぎが欲しくなって。そのおかげで、面白い感じになりましたね。スクェアでクリック使わずにレコーディングした曲って、確かほぼなかったんじゃないかな。

●完全に新しい感じでレコーディングしてみたんですね。

坂東 かっちり合わせるというのも彼はできるので。何でもできちゃうっていうか。本当に若い子はすごいなと思いますね。

●今回はベーシストとして森光さんの他に、長年サポートされている田中晋吾さんと、坂東さんのソロ・アルバムに参加されたことのあるTaiki Tsuyamaさんの3人が参加されています。Tsuyamaさんとスクェアの作品を作るのは初ですよね?

坂東 そうですね。日本にいたときにはセッションしたりもしてましたけど、レコーディングでは僕のソロ以来ですね。共演というか、LAに住んでるので、データを送ってそれに演奏して返してもらった感じです。彼も強烈ですね。日本人にいるベーシストにはない感覚、教会でずっとゴスペルやってて向こうで培ったものがありますね。

●ちなみにどの曲ですか?

坂東 タイトル曲の「FLY!FLY!FLY!」をやってもらいました。これはもうゴスペルっぽい曲にしたかったので、Taikiしかいないなと思って。ちなみに森光君は「Quiet Blue」と「回帰星-kaikiboshi-」と「Joy Blossoms」。晋吾さんが「閃光」と「Growing Up!」、安藤さんが作曲した「Only One Earth」と「The Hotrodder」、河野さんが作った「Brand new way」ですね。

●坂東さんが作った曲はほぼ森光さんなんですね。

坂東 そうです。新しい形態になるスクェアに向けて実験的な要素も含めいろいろやってみようと。さっきは、はなむけとかは特に意識してないと言いましたけど、あらためて考えると、やっぱり安藤さんがメロを取るところは若干多くしてありますね。ソロとか、仕事をちょっと多めに(笑)。

●例えば「回帰星-kaikiboshi-」は伊東さんと安藤さんの掛け合いが印象的ですね。

坂東 伊東さんと安藤さんの2トップが、やっぱり“スクェア”という感じじゃないですか。それが聴けなくなるのは寂しいなっていう思いを込めて、2人でメロを取って、最後にソロをトレードするっていうシーンを作ったんです。伊東さんと安藤さんがソロで掛け合ってるっていう曲が実はあまりなくて、作ってみようと。

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若い世代のエッセンスを取り入れながら僕もやっていきたい”