NOTES
the Focus #11:長谷川浩二
ドラマーなら誰もが気になる足元の動きを超近距離で捉える連載=“the Focus”。第11回は、2023年12月にプロ・デビュー40周年を迎えた凄腕、長谷川浩二! THE ALFEEのサポートを経て、筋肉少女帯やabingdon boys schoolをはじめ、多彩なバンド/アーティストの楽曲を支える彼が、Cube-Ray「the Shadow of Eruption」で魅せる超絶フット・ワークにフォーカス!
大口径バス・ドラムを鳴らしきる秘訣は
足首の柔軟なコントロール
パワフルなフット・ワークを担う足元
時折聞こえる掛け声も相まって、足元にまでパッションが漲る長谷川のパワフルなフット・ワークの秘密に迫ってみよう。
ビーターは、26インチのバス・ドラムの中心付近をヒットするよう、目いっぱい長くセッティング。足はフット・ボードの真ん中より少し前につま先がくる位置に置いており、母指球に力を入れて踏んでいることを考慮するとかなり後ろの方に力点があることが窺える。ボードのカカト側を踏んでも比較的軽い力で音量を稼げる、ロング・ボード&ダイレクト・ドライヴのペダルの利点を生かした踏み位置だ。踏み方は、ビーターを打面に押しつけないオープン奏法で、ツーバス・セットならではのステレオ感のあるふくよかな鳴りに寄与している。
セッティング時のビーターの角度は打面から45°程と標準的だが、ヒット後には1打1打を床と並行になるくらいしっかりと返しているのも印象的だ。膝の上下だけではなく足首の柔軟なコントロールを連動させることで、打面からの反発力を最大限利用しているように見える(ゴツめのブーツもそれほど足首の動きの制限にはなっていなさそう)。これらの要素の複合が、大口径ドラムを鳴らしきる秘訣になっていると言えそうだ。
アグレッシヴなドラミングを支える
細やかな奏法的な工夫に注目!
続いて曲中での奏法の変化を見てみる。冒頭の4連打や12連打といった休符を挟むフレーズのときは右足リードで踏んでいるのに対して、0:17~のような16分音符の踏み倒しパターンになると、左足リード(右足がウラ拍)へと逆転するのが興味深い。
カメラのアングル的に見えづらいが、ワンバス・プレイ時には左足(ハイハット)は8分でゴースト・モーションしている。その延長線上の動きと考えれば、左足がオモテの方が体幹的なバランスを取りやすいのだろう。また、ビーターの振り幅もこのときは若干小さくなるが、それでもほとんど変わらない音圧を維持しているのはさすがだ。
2:15〜は高速3連打(RLR)を使ったパターンが登場。ここでは右足のダブルを素早く踏み込むために、それまで変化しなかった踏み位置をかなり前にズラしながら踏んでいるのが見てとれる。よく見ると単純なスライド奏法というわけではなく、微妙に足首の捻りも加わっているのがポイントだ(少し遅めのダブルを踏む2:08のフレーズを見ると、そのダンス・ステップ的な動きがよりわかりやすい)。アグレッシヴなドラミングの中でも、その土台に細やかな奏法的工夫が隠されているのだ。
◎長谷川浩二 関連記事
the Focus Back Number