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フィリー・ジョー・ジョーンズ – ハード・バップ屈指のModern Jazz Drummer –

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine

言葉で説明するのは難しい圧倒的なドライヴ感と音色

(宮川さんが感じる、フィリー・ジョー・ジョーンズのドラミングの特徴や魅力を教えてください)—専門的な視点ですが、まず“音色”です。この頃のドラマーの中では比較的音が大きかったんではないでしょうか。ヘッドのテンションはあまり高くないので、ある程度強く叩かないと出ない、芯のある音が特徴です。これに関しては、この頃のフィリー・ジョーの録音を手がけたジャック・ヒギンズやルディ・ヴァン・ゲルダーなどのレコーディング・エンジニアによる功績も大きいと思います。どうやってフィリー・ジョーのドラムを録ってたか、聞いてみたいですね。

ルディ・ヴァン・ゲルダーがエンジニアを担当した『COOKIN’』

そして圧倒的なドライヴ感。これはグルーヴ感、スピード感、キレなど、簡単に言うと“ノリ”になると思いますが、言葉で説明するのは難しいです。ライドとハイハットしか使っていなくてもその圧倒的ドライヴ感は間違いなく存在します。一生かけても真似できないことです。

さらに挙げると“乗せ上手であり聞き上手でもあるところ”でしょうか。そもそもミュージシャン同士の瞬発力が織り成す音楽ですので、その瞬間瞬間に繰り出す彩りもフィリー・ジョーの魅力です。彼の好伴奏があってこそ、数々の名アドリブが生まれたんだと思います。少し抽象的ですが、瞬間から全体まですべてを掌握した演奏がフィリー・ジョーの最大の特徴であり魅力だと思います。

あとは数々の“特徴的フレーズ”ですね。たくさんありますが、具体例を1つ挙げるとするならば、アドリブを次の人が受け継いだとき4拍目にブシーッ!と強烈なハイハットのオープンを入れるんです。お寿司で言うガリでしょうか、びしっと“おとしまえ”をつけて次の人のアドリブに期待を高めるんです。それから言わずもがな“ドラム・ソロ”もですね。ルーディメンツを駆使したメロディアスなドラム・ソロの中にも圧倒的なドライヴ感が存在するんです。

最後に、主観ではありますが、“綺麗過ぎないところ”でしょうか。カチカチで杓子定規な演奏はしないし、何となく乱暴な感じが常にあります。これがあるから何万回聴いても飽きないんだと思います。

(宮川さんが自身の演奏で参考にしている、フィリー・ジョー・ジョーンズのプレイ、音色、エッセンスなどがあれば教えてください)—すご過ぎて演奏面で参考にできることはほとんどありません。真似しても一生超えられないのでフレーズは真似しませんでした。その代わり楽器をいじってフィリー・ジョーの音色に近づけることならなんでもしました。あえてグレッチじゃなくてパールのバレンシアで。この経験は自分の音作りの土台になり、そこから見えたものがたくさんありました。合奏の中で機能するドラムの音色とはどんなものか、音楽全体に対してのドラムの音色はどんな役割を持つのか、を強く意識するようになりました。例えば“鳴る”、“ヌケる”ことを意識するよりも混ざってどう聴こえるかを考えた方が、音楽全体が良くなるように。自分もいつかは、この先にあるフィリー・ジョー・ジョーンズのような“目線”で演奏することが一生の目標です。

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