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ジョージ・コリアスに学ぶ超高速ツーバスの極意

  • Interview:Rhythm & Drums Magazine Translation:Miki Nakayama Analysis:Michiaki Suganuma Photo:Taichi Nishimaki Movie:Shigeki Azuma Special Thanks:ISAO、Sliver Elephant

スウィーベルはバランスを保つのには役立つけど
スピードを上げるテクニックじゃない

【超絶ドラム・ソロ・パフォーマンス】

Interview

筋肉や身体のバランスを強化して整えることと
セッティング……この2つは本当に重要だよ

●スピードはドラマーにとって魅力的なポイントではありますが、あなたのスピードは驚異的です。そこまで速くしようと思ったきっかけは何かあったんでしょうか?

ジョージ 自分で意図したことじゃなくて、偶然の産物なんだ。もちろん、その時点でもブラスト・ビートやツーバスはプレイしていて、できるだけ速くしようとしていたよ。当時はそれで通用していたんだけど、2003年頃にスピードの限界を押し上げるようなドラマー達が出現し、BPM=240でツーバスを踏むのが当たり前になっていったんだ。ちょうど同じ頃……2004年に僕はナイルに加入した。メンバーから「BPM=260の曲があるんだけど、できるかい?」と言われて、「わからないけど、とりあえずやってみる」と答えてやってみた。そのプレイを聴いたファンが喜んでくれて、次のアルバムではBPM=270の曲が出現し、その次のアルバムではBPM=280の曲が登場したんだ(笑)。つまり僕もスピード・アップの一因だったわけだ。スタジオでは何度でもできるから限界に挑めるけど、そうやって作った曲は、毎日ライヴで観客に聴かせる曲でもあるわけだ。だからライヴでプレイし続けたおかげで超高速テンポに慣れたと言えるね。ツアーに出ると毎日プレイするわけだから。

●今の圧倒的なスピードに到達するには、相当な練習が必要だったのでは?

ジョージ もちろん! たくさん練習したよ。そうやって超高速でプレイするようになって気づいたことがたくさんあって、それが概念として形ができてきた。そしてドラムを教えるようになって、その概念を生徒に説明しないといけなくなったんだけど、この“他人に説明する”ことが非常に役に立った。僕の教則DVDを生徒に渡して練習してもらうと、自分の概念や説明のどの部分が役に立って、どの部分が役に立たないかが、はっきりとわかる。そんなふうに、生徒に教えることで自分の概念を深く理解できるようになったわけだ。

●奏法解説で紹介してくれたモダン・ヒール・アップやスウィーベルなども、そういう過程の中で身につけたものなんでしょうか?

ジョージ そうだね。実はスウィーベルには面白い裏話があるんだ。僕が最初にスウィーベルを知ったのは1990年代初頭で、あるドラマーがスウィーベルでプレイしているのを見たんだ。まだYouTubeなどが世に出る前だから、どこかのライヴで実際に見たんだと思う。彼のこのやり方を覚えていた僕は、2003年に初めて自分のプレイに取り入れてみた。これをマスターすればスピードが上がると思っていたから、一生懸命取り組んでみたよ。そして、これはスピードを上げるテクニックじゃないって、すぐに気づいたんだ。バランスを保つのに役立つけど、実は効果はそれだけということがわかって、スウィーベルをやるのを辞めたんだ。ただ、辞めたあとで僕のスウィーベルを気に入っている人の記事か何かを読んで、喜んでくれる人がいるならキープしようと(笑)。今では僕のプレイのお約束みたいなものだね。そんな感じで僕はスウィーベルをやっているけど、あれを真剣に練習してもスピードは上がらない。不要な練習で時間を無駄にしてほしくないんだ。

●ペダルのセット・アップで最も重要な点は何ですか?

ジョージ 複数の要素が組み合わさっているね。重要度で言えば、“足>ペダルのセッティング>ペダル”という順番だ。ペダルの値段が1,000ドルだろうが、100ドルだろうが、それほど大きな違いはない。もちろん、ペダルも含めて、素晴らしい道具は能力の向上に一役買うけど、それが一番大事か?というと、違う。最も大事なのは、トレーニングで筋肉や身体のバランスを強化して整えることとセッティング。この2つは本当に重要だよ。実際、安価なペダルを使っても、普段の自分のセッティングに調整してプレイすれば、いつも使っている高価なペダルと遜色ないプレイができる。まあ、僕が普段使っているペダルには耐性の強いバネがついていて、それが高速プレイを補助してくれるけどね。とにかく、自分のペダルのセッティングを知ることが大事なんだ。そのためにたくさんのペダルを試してみて、自分の好みを知り、使うペダルの調整の仕方を覚える必要がある。練習するうちに筋肉が強化されるから、それに合わせてペダルの好みも変化するはずだしね。僕の好みはタイトで、ビーターをドラム・ヘッドから一番遠ざけた状態だ。ヘッドの至近距離でビーターを動かすのではなく、ビーターを前後に大きくスウィングさせる感じだね。こっちの方がパワーも増すんだよ。

●靴底を水で濡らしていましたが、あれは滑りをよくするためなのですか?

ジョージ いや、その反対。滑らないようにするためだよ。スウィーベルをすると摩擦で靴底が熱くなって、下手をすると3~4曲プレイした時点で靴底がペダルにくっつくこともある。ライヴではドラム・テックがイントロの最中に濡れたタオルを出してくれるから、それを一度踏んで、靴底を濡らしてからプレイを始めるんだよ。

●摩擦熱が起きるってすごいですね(笑)。

ジョージ 嘘じゃないよ。ビーターが溶けたことだってある。以前ゴム製のビーターを使っていた時期があって、あれは毎日溶けていたよ。ステージ上の温度が上がるとヘッドにビーターがくっつくこともあった。あれはマジで笑った(笑)。

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