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    鈴木貴雄が明かす“DRUM SUPPS”の全貌とこれからのドラマー人生|独占インタビュー【後編】

    鈴木貴雄の新たな挑戦は、音楽事務所“MY FLAGMENT”の立ち上げだけではない。8月には、自身の経験を生かした動画レッスン・サービス“DRUM SUPPS”がスタートする。独占インタビュー後編では、これまで「教えること」に積極的ではなかったという鈴木が、なぜこのタイミングでDRUM SUPPSを始めるのか、その狙いやこだわりを掘り下げる。そして今、プレイヤーとしてどんな未来を描いているのか……これからのドラマー人生についてもじっくりと話を聞いた。

    “楽しい”を継続するためのDRUM SUPPS

    ●ドラムに関するプロジェクトとして、動画レッスン・サービスの“DRUM SUPPS”がスタートします。もともと教えることには以前から興味があったのでしょうか?
    鈴木:正直、あまりなかったですね(笑)。やっぱり自分はプレイヤーとして頑張り続けたいという気持ちがずっとありました。ただ、“UNISON SQUARE GARDENを辞めよう”と考えるようになって、“じゃあこの先どうやって生きていこう”と考えたときに、このアイディアが生まれたんです。

    ●でも教えてほしいという声は以前からあったんじゃないですか?
    鈴木:結構ありましたね。実際に友達には教えていて、ドラムを始めて数ヵ月くらいの子を趣味で教えたりもしています。その中で、“教えるのが上手い”っていろんな人から言われ続けてきたので、向いているんだろうなとは思っていました。

    ●直接のレッスンではなく、動画で教えるという形を選んだ理由は何だったのでしょうか?
    鈴木:もちろん、直接レッスンをやれば生徒さんは来てくださると思います。でも、それだと自分のアーティストとしての時間を切り売りしていくことになる。自分はまだまだプレイヤーとして挑戦したい。その気持ちは変わらないので、直接教えるという選択肢はなかったですね。それで考えたのは動画レッスンで、今はスタディ・サプリや東進ハイスクールのような動画学習サービスが当たり前になってきて、Udemyみたいに動画コンテンツを購入する文化も育っている。そこで、“こういう仕組みって、音楽レッスンではまだ少ないな”と思ったんです。ただ、日本の市場で受け入れられるかは正直わかりません。それでもやってみないとわからない。まずはとにかく始めてみようと思いました。

    ●DRUM SUPPSでは「練習そのものが楽しくなる」というコンセプトを掲げています。このワードにはどんな思いが込められているのでしょうか?
    鈴木:本当に、自分自身が練習嫌いだったんですよ(笑)。“どうしたら練習を楽しいと思えるんだろう”ってずっと考えながら生きてきました。子供の頃はピアノも習っていましたし、ドラムも2〜3年レッスンを受けていましたが、“楽しい”と思えた記憶がほとんどないんです。その理由を考えると、最初に基礎練習が来るからなんですよね。もちろん基礎は大切ですが、一番楽しい瞬間って“好きな曲を叩いているとき”じゃないですか。だからDRUM SUPPSでは順番を逆にしようと思ったんです。まず“楽しい”があって、そのあとに”この曲を叩くために、この基礎が必要だから練習しよう“という流れ。“基礎練習を頑張った先に楽しさがある”のではなく、“楽しいから基礎をやる”。その順番じゃないと、音楽も練習も本当の意味では楽しくならないと思っています。

    ●その考え方は、実際の動画の構成にも反映されているのでしょうか?
    鈴木:そうですね。例えば10分の動画なら説明は30秒くらいで十分だと思っていて、残りの9分半は実際に音楽に合わせて演奏してもらう時間にしています。自分は音楽ゲームがすごく好きなんですけど、ゲームって最初から座学をやらせないじゃないですか。まずコントローラーを持たせて“Bボタンを押してみよう”とか、遊びながら自然に覚えていく。そういうゲーミフィケーションの考え方をレッスンにも取り入れています。

    ●最初の一歩を踏み出しやすくすることを考えているようですね。
    鈴木:そこはかなり考えました。“スタジオへ行かなくてもいい”、“スティックがなくても始められる”というところからスタートしています。最初の導線を滑らかにして、バリアフリーな状態で始められるように工夫しました。本来、音楽もドラムも楽しいから始めるわけですが、“基礎をやらなきゃ”とか、“上手くなきゃ”という縛りが増えて楽しくなくなってしまう。できなくなる原因は技術じゃなくて、“楽しい”という気持ちがなくなってやらなくなってしまうことなんです。だから一番大事なのは、“楽しい”をどう継続してもらうか。そのためのサービスにしたいと思っています。

    ●実際にレッスン動画を制作してみて、教えることの難しさを感じることはありましたか?
    鈴木:それがまったくなかったんですよ(笑)。星1から星10までレベルを段階的に設計したり、“ここまでできたら次はこれ”という流れを考えたり。それって普段、自分自身に向けている視点とあまり変わらないんですよね。だから“ああ、自分は案外向いているんだな”と思いました。

    ●初心者向けと経験者向け、その両方を満足させるサービス設計についてはどのように考えていますか?
    鈴木:ピラミッド型になればいいなと思っています。一番下の裾野はものすごく広くて、階層を上がるにつれてどんどん専門的になっていく。その一番上には、例えばカースケ(河村“カースケ”智康)さんみたいな方がいるようなイメージです(笑)。ビジネスとして考えても、一番大事なのは初心者なんですよ。ゲームも同じで、上級者だけを見て運営すると初心者が離れてしまい、結果として全体が成り立たなくなる。だから一番入り口にいる人達を大事にすることが、巡り巡って経験者のためにもなると思っています。

    ●撮影現場にお邪魔しましたが、レッスンの内容から言葉選びまで、ご自身で細かく考えている姿が印象的でした。
    鈴木:最初はそうですね。まずは“ドラマー・鈴木貴雄”の名前で興味を持ってもらうことも必要だと思っています。でも、最終的にはそこがゴールじゃないんです。自分の手を早く離したいというか(笑)。動画コンテンツもピラミッドの上から下まで少しずつ増やしていきたいですし、将来的にはいろんなドラマーに参加してもらいたいと思っています。“この人はツイン・ペダルを担当”、“この人は華があるから初心者向け”みたいに役割分担ができたら理想的ですね。“この人にこれを頼みたいな”というイメージも明確にあります(笑)。

    ●サービス全体としてはもっと大きなプラットフォームを目指しているということですね。
    鈴木:そうです。いろいろなドラマーが参加してそれぞれの得意分野を教えられる場所になること。そして将来的にはドラムだけでなく、ギターやベースなど他の楽器にも広げていきたい。もちろん「DRUM SUPPS」としてのリアルなイベントもやりたいですね。そうやって音楽を学ぶ入口がもっと増えていけばいいなと思っています。

    自分自身を爆発させる場所で
    ドラムを演奏したい

    ●最後に、ドラマーとしての今後についてもお聞きしたいと思います。ここまでのインタビューの中でも“プレイヤーとして挑戦し続けたい”とおっしゃっていましたが、ドラマーとしてはどんな活動を考えていますか?
    鈴木:ドラマーとしては“命を燃やしたい”に尽きますね。自分自身の才能の限界に挑戦したいですし、それをぶつけて、ちゃんと良いリアクションを返してくれるメンバーと一緒に音楽をやりたい。その思いが今は一番強いです。本当はUNISON SQUARE GARDENで、それができれば一番良かったんですけど、もうその環境はないので、それに代わるものを探しています。

    ●その“代わるもの”というのは、新しいバンドなのでしょうか?
    鈴木:そうですね。やっぱりバンドはやりたいです。ただ、待っていても始まらないので、自分で作るしかないのかなと思っていて、作詞作曲も始めているところです。

    ●ご自身で曲を書き始めたことも、大きな変化ですね。
    鈴木:そうですね。最初はインストゥルメンタルも考えていたんです。実際にインストの曲も作っていたんですけど、作っているうちに“何か物足りないな”と思うようになって、結局、歌詞が入る方向になりました(笑)。

    ●現時点で、イメージしている音楽性はどんな感じなんでしょうか?
    鈴木:“これ”というジャンルはないです。ただ、自分が作っている曲を振り返ると、ピアノ・ロックにゲーム音楽の要素が少し混ざっているものが多いように思います。最近のアーティストで例えるなら、日食なつこさんのような雰囲気に近いのかもしれません。もちろん、そのままというわけではないですけど、自分の中ではそういう方向性なのかなと思っています。

    ●一方で、サポート・ドラマーという選択肢もあると思いますが、そこについてはどのように考えていますか?
    鈴木:基本的には考えていません。もちろん、好きなアーティストから声を掛けてもらったら話は別かもしれないですけど、自分が今までやってきたドラマーとしての価値を考えると、サポート・ミュージシャンとして人を立てる場所よりも、自分自身を爆発させることが価値になる場所で演奏したいという気持ちが強いです。少し現実的な話になってしまうんですけど、サポート・ミュージシャンって、どうしても評価に天井があると思っているんです。どれだけ頑張っても、それ以上の評価にはつながりにくい部分がある。作詞・作曲家とサポート・ドラマーでは、収入面も含めて大きな差がありますし、そういう構造を見ると、「あまり公平じゃないな」と思ってしまうことがあるんですよね。もちろん、サポートという仕事自体を否定したいわけではありません。ただ、自分はそういう環境の中でモチベーションを保ち続けるよりも、自分自身の表現で勝負できる場所に身を置きたい。その気持ちの方が強いんです。

    ●MY FLAGMENTを立ち上げた理由と共通したものを感じますね。
    鈴木:そうですね。結局、自分は“仕組み”を変えたくなってしまうタイプなんですよ。もし遊ぶなら、公平なルールの中で遊びたい。そうじゃないなら、自分でその遊び場を作りたい。MY FLAGMENTも、その考え方の延長線上にあるものなんです。同じように音楽をやるなら、公平なルールの中で思い切り勝負したいんです。もし、その環境がないのであれば、自分で作りたい。そういう考え方は事務所を立ち上げた理由にもつながっていますし、自分がこれから音楽活動を続けていく上でも、すごく大切な軸になっています。

    ●環境が大きく変わった今、ドラマーとしての日々の過ごし方にも変化はありますか?
    鈴木:バンドを辞めてからの方が練習しているんですよ(笑)。毎朝スタジオに入って、まずはドラムを叩く。それから曲を書いて、ジムに行って、そのあとに事務所の仕事をする。今はその流れが毎日のルーティンになっています。

    ●あらためてドラムと向き合っているわけですね。
    鈴木:そうですね。不安だから練習しているという感覚ではないんですけど、いつどんな話をいただいても動ける状態ではいたいんですよ。刀を錆びさせておくわけにはいかないというか、いつでも刀を抜けるように研いでおく。その感覚ですね。

    ●これからはプレイヤーとしてだけでなく、事務所の代表としての活動も本格的に始まります。音楽活動との両立についてはどのように考えていますか?
    鈴木:やることは増えますけど、不思議と大変だとは思っていなくて。“全部やりたい”という気持ちの方が強いですね。今は人生の中でも、1、2を争うくらい楽しいです。もちろん、UNISON SQUARE GARDENで活動していた頃の楽しさとはまったく種類が違います。どちらが上とか下とかではなく、今は今で、自分で考えて、自分で動いて、新しいものを作っていける面白さがありますね。

    ●その“楽しさ”の源になっているものは何でしょうか。
    鈴木:人ですね。スタッフもそうですし、これから所属するアーティストもそうなんですけど、お互いの人生を握り合うような存在が増えていくことが、自分にとって一番楽しいんです。1人ではできないことを、誰かと一緒に作っていく。その関係性がどんどん増えていけば、もっと面白くなるんじゃないかなと思っています。

    ●最後に、これからMY FLAGMENTで、鈴木さんと一緒に新しい挑戦をしたいと考えている人達へメッセージをお願いします。
    鈴木:まだ立ち上がったばかりですけど、本当にいい事務所だと思っています。これから所属してくれるアーティストも、スタッフも、一緒に何かを作っていく仲間も、みんなで面白いことをやっていきたい。ぜひ来てください(笑)。