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9年ぶりに来日するグルーヴ・マスター=バーナード・パーディ! ”ドラマー的”ライヴの見どころを徹底解説!!【更新】

世界中のドラマーが憧れる
唯一無二のシグネチャー・グルーヴ

ドラミングに関しては、彼自身が”パーディー・シャッフル”と呼ぶ、多くの一流ドラマーが憧れた彼独特のシャッフル・ビートがトレード・マーク。スティーリー・ダンの「Home at Last」、「Babylon Sisters」など、ドラマー界隈では知らない者はいないドラム・グルーヴ。今は亡きTOTOの名ドラマー、ジェフ・ポーカロも「あのグルーヴを手に入れられるなら死んでもいい」と語り、その影響を受けて「ロザーナ」の名グルーヴを生み出したのは有名な話。

世界中のドラマーが憧れるこのグルーヴの秘密について、「昔よく聞いていた列車の走る音を自分の演奏に取り入れようと思った」と言い、膨大な数のレコーディング・セッションを経験する中で、バンド・リーダーや共演ミュージシャン、エンジニアまでをも自分の世界に惹き入れ、音楽を前へ前へと推進させるために、この“パーディー・シャッフル”を自分のトレードマークとして創造。「自分に創造力があれば、他のミュージシャンからも同じくらいの創造性が引き出せる」……これもパーディ自身が語っていた言葉である。

また、キング・カーティスの「Memphis Soul Stew」やスティーリー・ダンの「Green Earrings」などでも聴ける“ダチーチーチー”というハイハットを駆使した彼のシグネチャー・フレーズも特徴で、2017年にはTBSラジオで放送されていた「ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル」で取り上げられたことをきっかけに火がつき、このフレーズの入った曲で構成されたコンピレーション・アルバム『ダチーチーチー』がリリースされるほど日本でも話題となった。

このフレーズはロック・シーンでもよく用いられており、中でもBeck,Bogert & Appiceの「Superstition」におけるカーマイン・アピスの熱演が有名だが、そのルーツもやはりパーディ。2018年3月号のインタビューでカーマインは「あれはモロにバーナード・パーディだよ。確かキング・カーティスの「Memphis Soul Stew」でやっていたよね。僕はあれをBB & Aの「Lady」の終わりの部分に取り入れたんだ。いろんなネタを盗ませてくれたアイドル本人に会ったときには、正直になることにしていたから、初めてバーナード・パーディに会ったときにも、正直に申告したよ(笑)。そんなわけで、“ダチーチー”は間違いなくパーディの影響で、当時の僕はあのフレーズで知られるようになったんだ」と語る。

Photo:Eiji Kikuchi

編集部が最後に対面取材できたのは2012年に“バーナード・パーディ&フレンズ”名義でビルボードライブ東京に来日したタイミング。当時のパーディは73歳で、足の調子が悪かったのか、歩くのに杖を使っており、大変失礼ながら“ちゃんと叩けるんだろうか?”と思ってしまったが、ステージに上がり、ドラムに叩き出した瞬間に、そんな心配は不要だったことを実感。エネルギッシュなプレイと、至極のサウンド&グルーヴに釘づけになってしまった。 

2012年9月号に掲載したインタビュー

その3年後、2015年にビルボードライブ東京で行われた“バーナード・パーディ&フレンズ”のライヴも拝見したが、いきなりハーフ・タイム・シャッフルを放ち、観客の目をステージに惹きつけると、その後もダイナミクスに富んだドラミングを展開。グラント・グリーンJr.(g)、ウィル・ブラデス(org)という一回り、二回り年齢の異なる若きミュージシャンとの共演に終始ご機嫌な様子で、終演時には自然とスタンディング・オベーションが起こったこともよく覚えている。

今回の来日はあれから9年が経ち、パーディも84歳(6月11日で85歳に!)。その間に発表された“バーナード・パーディ&フレンズ”名義の『Cool Down』は問答無用にカッコいい傑作で、2023年にリリースされたバーバラ・ブルーの『From The Shoals』では王道のブルーズ・ドラミングを展開。YouTubeには2022年12月に収録された映像がアップされているが、フレーズを口ずさみながらノリノリで”パーディ・シャッフル”を奏でており、その姿はバリバリの現役。

歌モノの名手であるパーディがライヴにヴォーカル(ロブ・パパロッジィ)を迎えていることや、メンバーのダン・ブーン(b)、ジョージ・ナーハ(g)、ノブザネ・ミホ(p)とはコロナ禍に入る前から共演してきた気心知れた仲間であることなど、見どころの多い公演と言えるが、ドラマー的なポイントはやはり伝家の宝刀=”パーディ・シャッフル”だろう。完璧なタイミングでポケットを突く切れ味鋭いバック・ビートと、巧みにコントールされたゴースト・ノートの気持ち良すぎる絡みはもちろん、クローズド・リム・ショット時における指の繊細な使い方にも注目! 会場全体を揺らすあの大きなノリも、細かい積み重ねから生まれていることがわかるはず!!

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日本のプロ・ドラマーがパーディの魅力を語る!