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来日公演を収録したライヴ・アルバムを発表したスティーヴ・ガッド・バンドに迫る!

  • Translation & Interpretation:Akira Sakamoto
  • Photo:Tsuneo Koga/Special Thanks:Blue Note Tokyo
  • Text:Yusuke Nagano/Rhythm & Drums Magazine

70歳になっても気分が良くて演奏することが大好きでいられる

スティーヴ・ガッド・バンドをより深く知るべく、ここでは2015年の『70 Strong』リリースのタイミングで実現した本誌録り下ろしインタビューの中から、バンドについて語った箇所を抜粋してお届けする。グラミー賞を獲得するまでに至ったこのスーパー・グループ結成の始まりは、意外なきっかけだった!

●最新作『Before This World』を携えてのジェームス・テイラーのツアー中だそうですが、気心の知れたミュージシャン達とのツアーはいかがですか?
ガッド
 ツアーは最高だよ。ジェームスとの仕事は大好きだし、バンドは『70 Strong』のレコーディング・メンバーだしね。メンバーの奥さん達が同伴することも多くて、友達づき合いするにも良い機会なんだ。

●ジェームス・テイラーもあなたのキャリアにとって重要な存在ですが、彼との仕事からはどんなことを学びましたか? また、彼の音楽の中であなたが成し遂げたいと思っていることは何でしょうか?
ガッド
 僕はとにかく、ジェームスがやりたいことを支えるような演奏をするように心がけているんだ。彼が歌いやすいように、バンドが演奏しやすいようにね。そして、僕より前に彼の音楽を演奏していたドラマーに敬意を払うことも心がけている。(前任ドラマーの)ラス・カンケルやカルロス・ヴェガの演奏は素晴らしかったから、彼らがやったことを尊重しつつ、ジェイムスの音楽を支えるために最善の努力をしているよ。

●ジェームスの音楽は歌詞を大切にしていると思いますが、歌詞があなたのドラミングに影響を与えたりするのでしょうか?
ガッド
 歌詞というよりもむしろ、歌の節回しやリズムに気を遣っているね。僕はすべての曲の歌詞を覚えているわけじゃないけれど、彼が歌詞を歌うときの節回しが僕の演奏に影響しているのは間違いないよ。

●歌詞が物語としての曲の展開を担っているわけですからね。
ガッド
 そうだね。

●先ほどもお話いただいたように、スティーヴ・ガッド・バンドは、ジェームスのツアー・メンバーを中心に結成されたわけですが、これまでに数々のミュージシャンと共演してきたあなたが自分のバンドのメンバーにするほど、この5人の演奏に特別なものを感じたのでしょうか?
ガッド
 うん。僕らはジェームス・テイラーとたくさん演奏してきたからね。そもそもこの5人でバンドを組むというのは、僕のワイフとウォルト・ファウラー(tp)のワイフのアイディアだったんだ。僕らは多くの時間を一緒に楽しく過ごしていたから、一緒に何か音楽をやったらいいんじゃないかってね。結果的にとてもうまくいったと思うよ。

●奥様達のアイディアだっとは思いませんでした! 確かこの5人が最初に顔を揃えたのは、ジェームスの『October Road』が最初でしたよね?
ガッド
 そう、5人全員が揃ったのはあのアルバムが初めてだった。僕はすでにジミー(ジョンソン/b)やマイケル・ランドウ(g)なんかと一緒に仕事をしたことがあったけれど、ラリー・ゴールディングス(key)がジェームスと共演するのはあのときが初めてで、多分ウォルト・ファウラーも初めてだったんじゃないかな? はっきりとしたことはわからないけれど、僕らが集まったのはあのときが最初だ。

●この5人で初めて一緒に音を出したとき、すでに何か特別なものを感じましたか?
ガッド
 彼らとはいつも良い気分で演奏していたよ。みんな素晴らしいプレイヤーで、僕も尊敬していたからね。

●そのスティーヴ・ガッド・バンドの2作目となる『70 Strong』が発表になったわけですが、このタイトルには「70歳にしてなお強力」という文字通りの意味の他に、何か特別な意味は込められているのでしょうか?
ガッド
 タイトル通りの意味だよ。70歳になっても気分が良くて、演奏することも大好きでいられるという意味だよ。

●収録曲はオリジナルが大半を占めますが、これらの楽曲はどのようにして作り上げていったのでしょうか?
ガッド
 曲はみんなが持ち寄ってくれたんだ。マイケル・ランドウとラリー・ゴールディングスが数曲、ジミー・ジョンソンとウォルト・ファウラーが1曲ずつ書いてくれて、全員がスタジオに入って譜面をもらって演奏したんだ。それだけだよ。

●カヴァーではヤン・ハマーの「Oh, Year?」も収録されていますが、気楽なジャム・セッションのような雰囲気の演奏ですね。
ガッド
 ヤン・ハマーのオリジナルはもっと速いテンポの演奏だった。僕はこの曲を知らなかったけれど、ウォルト・ファウラーの家でパーティがあったときに初めて耳にして、その瞬間、このバンドでレコーディングしたいと思ったんだ。

●パーティで聴いた演奏も、オリジナルより遅かったんですか?
ガッド
 オリジナルよりもゆっくりしたテンポで、ファンキーな演奏だった。それを聴いた僕はすぐに気に入って、覚えようと思ったんだ。

●「Sly Boots」ではドラム・ソロも披露していますが、70年代からのファンが喜ぶような迫力もありますが、メロディックでストーリーのある展開も聴きどころだと思いました。
ガッド
 どうもありがとう。あのソロもライヴと同じ状況で演奏したんだ。

●ドラム・ソロのときには、ただのパターンの羅列に陥らず、首尾一貫したストーリーのような内容にするために何か意識しているのでしょうか?
ガッド
 4小節や8小節単位でフレーズを組み立てて、楽曲のような構成感を創り出すようにしているね。

●ドラムでストーリーを描く上で、ダイナミクスの表現は必要不可欠だと思いますが、あなたのダイナミクスの表現力は素晴らしいと思います。この表現力は、あなたに本来備わっていたものなのでしょうか。それとも他のドラマーの演奏を研究するなどして身につけたのでしょうか?
ガッド
 他のドラマーを聴いて研究してきたことと、さまざまな音楽的状況に置かれて、その中で面白いことができないか、いろいろと工夫したこととの、組み合わせだろうな。でも、ほとんどの場合、自分が何をやるべきかはその音楽で決まるから、まず音楽をよく聴いて、他の共演者からインスピレーションをもらって、最良の演奏ができるように努力することが肝腎だよ。

●ダイナミクスに関しては、部屋で1人で練習するよりも、現場での経験の積み重ねが大事だということでしょうか?
ガッド
 大きな音や小さな音で叩く練習は1人でもできる。ただ、肝腎なのは、それを実際の音楽にいつ、どういうふうに応用するかは、実際に他の人達と一緒に音楽を演奏するときに判断しなきゃならないということなんだ。そして、他の人達のやっていることをよく聴くというのは、良い出発点になる。音楽の全体を聴くんだ。


◎作品情報
『アット・ブルーノート・トーキョー』
スティーヴ・ガッド・バンド

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