PLAYER
2026年、TOTOのツアーに再び参加することが発表されたキース・カーロック。初めてTOTOのサポートを務めることになった2014年当時、本人はその大役をどのように受け止めていたのだろうか。ここでは当時行ったアーカイヴ・インタビューを公開。突然のオファーを受けた経緯から、ジェフ・ポーカロへの深い敬意、そして“TOTOのグルーヴ”を受け継ぐことへの思いまで、キース自身の言葉で振り返る。
ジェフは史上最高のドラマーで
多くのことを成し遂げてきた1人
●あなたがTOTOに参加するという話を聞いて驚きました! まずは参加することになった経緯から教えてもらえますか?
キース:スティーヴ・ルカサーから連絡をもらったんだ。「サイモン・フィリップスが他の活動のためにバンドを離れることになったから、間近に控えた日本ツアーや新作のレコーディングをやってくれないか」ってね。突然のことだったけど、僕はもともとTOTOの大ファンだったから、うれしい驚きだったね。スティーヴはビル・エヴァンス(sax)のトキシック・モンキーなんかで一緒に仕事をしていたこともあったから、僕のことはすでに知っていたわけだけど、あらためて電話をもらえてうれしかったね。もちろん「仲間に入れてほしい」と答えたよ。スケジュールのことも考えずにね(笑)。
●(笑)。では、あなたにとってジェフ・ポーカロはどんな存在でしたか?
キース:ジェフは史上最高のドラマーの1人で、多くのことを成し遂げてきたよね。とにかくジェフは究極のグルーヴ・プレイヤーだったと思う。楽曲のために集中して演奏し、素晴らしいフィーリングのグルーヴを生み出す。僕はジェフのそういうところが大好きなんだ。彼の楽曲解釈やドラム・パートはとにかく完璧で、バンドのすべてが彼の生み出すフィーリングを中心に組み立てられていた。そういう彼の演奏は他に類を見ないもので、しかもそれがごく自然に聴こえるんだよね。サウンドもフィールも彼ならではで、聴けばすぐにジェフだとわかるし、とにかくグルーヴが素晴らしいから、音楽が心地よく聴けるんだ。「ロザーナ」はその代表で、僕も彼のグルーヴに耳を傾けたいし、彼の演奏をもっと聴きたいと思っていたよ。
●ジェフは、今あなたが参加しているスティーリー・ダンでも演奏していましたよね。彼がレコーディングした曲を演奏する機会もあるかと思いますが、どんな感覚でしょうか?
キース:僕がスティーリー・ダンの作品に関わるようになったのは1990年代後半で、2003年からはツアーもやるようになった。だからジェフがレコーディングした曲をライヴで演奏する機会もたくさんあるんだ。中でも『嘘つきケイティ』に入っている、ロック・シャッフルの「ブラック・フライデー」や、『ガウチョ』のタイトル・トラックは大好きだよ。TOTOやスティーリー・ダンといった、ジェフがその音楽の一翼を担った代表的なバンドに入って、彼の足跡を辿ることができるということは本当に素晴らしいことなんだ。本人と実際に会ったことはないけれど、自分がスティーリー・ダンやTOTOで演奏することで、少なくとも音楽的には彼とのつながりが持てるわけだからね。
●ジェフがレコーディングした曲を、ジェフと実際に共演した人たちと一緒に演奏することで、新たに発見したことはありますか?
キース:ジェフみたいなドラマーは特にそうだけれど、演奏を聴くたびに違う発見がある。彼はものすごく細かい部分にまで神経の行き届いた演奏をしていて、よく注意して音楽に入り込んで聴かないと気づかずに通り過ぎてしまうことがたくさんあるからね。それはスティーリー・ダンでの演奏にもTOTOでの演奏にも言えることで、聴こえるか聴こえないかわからない微妙な部分に、彼の個性が出ている。そういった細かい気配りが、彼の演奏を特別なものにしていると思うんだ。僕もあんなふうにできるようになりたいと思って、新たにスティーリー・ダンがツアーをするときに復習したり、今回TOTOのツアーのために準備したりするたびに、ジェフの違った部分に気づいている。それがまた、僕のドラミングや耳、グルーヴが成熟した証になっていればいいんだけれどね。
●彼らとリハーサルをしていて、ジェフの話が出たりすることはありますか?
キース:具体的な話というのは特にないけれど、少し前にロサンゼルスでTOTOの新作のレコーディングをしたとき、メンバーに「生前のジェフに会いたかった」と言ったら、「今までで一番彼に近いところまで来ているじゃないか」って言われたよ(笑)。確かにその通りだよね。デヴィッド・ペイチはジェフ・ポーカロと一緒にスティーリー・ダンとも仕事をしていたわけだし。
●彼らもあなたとジェフの間に共通点のようなものを見出しているのかもしれませんね。
キース:それは褒め言葉として受け取っておくよ。僕としては、ジェフのどこが特別なのかも、TOTOやスティーリー・ダンのドラマーの椅子に座るのがどんなに特別なことなのかも理解しているつもりでいる。グルーヴと細かい部分への気配りが鍵を握っている……これ以上にうまい言い方は思い浮かばないね。それを音楽の中でいかに実行するかが問題なわけだけれど、その方法を見つけるには多くの経験が必要だから。そういう意味では、僕が音楽にアプローチする方法が彼のそれと似ているということはあるのかもしれない。彼らの音楽に挑戦するたびに、僕はジェフがやっていたであろう方法で演奏しようと努力しているからね。
●多くの経験という点では、オズ・ノイやウェイン・クランツといった、先鋭的なジャズをプレイするミュージシャンとも積極的に活動していますが、いわゆるメイン・ストリームとは少し違った方向の音楽活動も、TOTOやスティーリー・ダンで演奏するときの役に立つと思いますか?
キース:どんな経験でも、プレイヤーとしての能力を向上させるのに役に立つと思う。ウェイン・クランツとは昨夜もニューヨークでライヴをやったし、オズ・ノイやマイク・スターンなんかとインプロヴィゼーション主体の音楽をやるのも大好きなんだ。ジェフみたいにグルーヴ重視で、アンサンブルのためにしっかりとした土台を築くのは大切なことだけれど、そこから発展させて、より自由にいろいろなことを試すのもアリだからね。ただし、そういうときでもグルーヴィーな要素は保ちたいと思う。どんなにアウトした演奏になっても、グルーヴから生まれる“流れ”のようなものは失いたくないんだ。僕はどんな音楽をやるにしてもそういう気持ちで臨んでいて、そこがいろんな人たちに気に入ってもらえていると思う。そういった経験も含めて、僕はいろいろな引き出しを持っているから、音楽がどんな方向に流れても対応できる。ソリストと自由に反応し合う機会が与えられれば、ジャズの引き出しを開けて、インプロヴィゼーション主体の音楽の経験を持ち込むこともできるわけ。TOTOやスティーリー・ダンの人達も、ただジェフと同じような演奏を要求するんじゃなく、僕自身のアイディアにも期待してくれているから、他の音楽での経験が自分のユニークな部分を打ち出すのに役立っていると思うし、そうありたいと願っているよ。
●TOTOで演奏するにあたって、ジェフのどんな部分を受け継ぎたいと思っていますか?
キース:やはりしっかりとグルーヴを出すということだね。バンドでは、僕のやりたいことをやる余地も与えてくれていると思うけれど、やはり歴史を踏まえて、ジェフに敬意を払うような演奏をしたいな。リラックスした雰囲気生み出したり、場合によってはレイドバックした雰囲気を創り出したりする、彼の音符の置き方が大好きだから、その部分はしっかりと受け継ぎたいね。