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ヴィニー・ポールが語る”メタル・ドラミング”の真髄〜【Archive Interview】

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine
  • Interpretation & Translation:Miki Nakayama
  • Photo by Annamaria DiSanto/WireImage

昨日6月22日はパンテラのドラマーとして一世を風靡し、メタル・シーンに革命を起こしたヴィニー・ポールの命日。2018年の急逝から今年で3年目を迎える。強烈にアタックを効かせたドラム・サウンドに、鋭いツーバス・プレイと重厚なグルーヴを備えた超ヘヴィ・ドラミングは、日本のドラマーにも大きな影響を与えた。偉大なるメタル・ドラム・ゴッドを語り継ぐべく、ここでは本誌が最後に対面取材を行った2015年のアーカイヴ・インタビューの一部をお届けする。

俺は昔から人間的なドラムをプレイすることを信条としてきたんだ

●『Blood For Blood』はドラム・サウンドも強烈ですが、こういう音にしたいというイメージは事前にありましたか?
ヴィニー 俺がイメージしたのは、昔パンテラでプレイしていた時代の、俺のトレードマーク的なサウンド。つまりアタックとシェルの鳴りを生かした大きなサウンドだね。ただ一方で、今は2015年で、昔とはいろいろと状況が変わっている。だから今風の音にしたいとも思っていたんだ。

ケヴィン(チャーコ)はその両方の要素を取り出して、2つをうまく組み合わせる手伝いをしてくれたんだ。おかげで非常にモダンで、現代的なサウンドになったけど、パンテラ的なアタックはしっかりと存在しているんだ。パンテラ初期の頃はルーム・マイクなんて1本もなくて、常にダイレクトで録音していたんだ。そのせいで鼻先にガツンとくるようなサウンドだった。

今回のアルバムではそういうサウンドを取り入れつつ、ルーム・マイクで録ったルーム・サウンドも加えている。その2つのサウンドの組み合わせの妙と言えるね。ルーム・サウンドっていうのは本当に良いよね。今回のサウンドは、ツェッペリン・サウンドとパンテラ・サウンドを組み合わせた感じで、すごく気に入っているんだ。

●パンテラ時代から3連や6連を取り入れるなど、あなたのフット・ワークにはオリジナリティを感じるのですが、そのアイディアはどこから来たものなんでしょうか?
ヴィニー アイディアの元は(ジョン)ボーナムだよ。彼はキック1台でやっていた。オフ・ビートを右足で踏み、ダウン・ビートを左足で踏む。(チドド・チドドと歌いながら)この2つが合わさると3連になる。そのネタをベース・ドラム2台で発展させたのが俺のフット・ワークなんだ。とにかくボーナムは俺がこれまで見た中で最高のドラマーの1人だよ。彼のフィールやポケットは最高だよ。

そして俺がダブル・ベース・ドラムに興味を持ったきっかけになったのがトミー・アルドリッヂだ。あの頃の彼は手で叩けないようなプレイを足でやっていて、それを見た俺はぶっ飛んだよ。この2人が主な影響を受けたドラマーで、それ以外にいつも好きなのがアレックス・ヴァン・ヘイレンやニール・パート。そしてシンプルだけど最高なのがKISSのピーター・クリス。彼からもかなり影響を受けているんだよ。若手の中ではラム・オブ・ゴッドのクリス・アドラーはマジですごいドラマーだし、元スリップノットのジョーイジョーディソンも大好きだね。

ヴィニーのツーバス・プレイを象徴する「Becoming」

●パワーもスピードもまったく衰えていないですが、何か特別なトレーニングをしていたりするのでしょうか?
ヴィニー 俺は昔から非常にハードにプレイするタイプのドラマーで、スティックのエンド側で叩いてきた。そんなふうにプレイしていたから弟(故・ダイムバック・ダレル)もハードにプレイするギタリストになったし、俺のドラム・サウンドがディープになった理由もそこにある。ハードに叩くには、当然筋肉のある強靭な肉体のプレイヤーじゃなければ無理さ。

ときどきオープニング・アクトのドラマーが使っているスティックに触ることがあるけど、あまりの軽さに「これは爪楊枝か?」って思っちまう(笑)。あんな軽いスティックじゃ最初の1打で折っちゃうよ。つまり、俺のようなスタイルで叩くドラマーと彼らのスタイルは異なるってこと。俺は筋骨隆々っていうほどじゃないし、ブラスト・ビートを叩くような筋肉も持っていない。でも、俺は昔から人間的なドラムをプレイすることを信条としてきたんだ。人力コンプレッサーになって、ドラムのボリュームを一定に保ちたいってね。

●肘を外に動かしながら叩くあなたのモーションは、モーラー・テクニックの動きを意識しているように感じるのですが、いかがですか?
ヴィニー そうなの? 言われるまで気にしたこともなかったな。もしそう動いているとしても、それはプレイの流れの一部なんだ。すべては自然にやっていることだからね。


●最後に今後ドラムに関してトライしてみたいことや目標があれば教えて下さい。
ヴィニー 今の状況にとても満足しているし、過去の自分が登ったレベルやキャリアにも満足している。もちろん過去にはさまざまな負の経験や時期もあったけど、そういうものは全部過去のものとなったから、今は本当に幸せなんだ。だから、このまま幸せが続いて、このままドラムを演奏し続けられて、このままこのバンドでプレイし続けられることが望みだ。

パンテラで頂点を極め、このバンド(ヘルイェー)をゼロから立ち上げたわけだけど、アメリカでの評判は上々だし、オーストラリアやカナダでも人気になっている。そして、ついに今回、日本で単独ライヴをやることになった。どれだけのファンが来てくれるかわからないけど、徐々にファンを増やしていくだけだな。そのためにもすぐに戻ってきたいと思っているんだ。

●読者に何かアドバイスをお願いします!
ヴィニー 俺が教えられるアドバイスは、ガキの頃に俺が言われたこの言葉だ……「練習しろ、練習しろ、練習しろ」。これは世界で一番の金言だね。

あとは人の前でプレイする機会をできるだけ多く持つこと。自宅で練習しているだけでは絶対に経験できないさまざまなことが確実にそこで経験できるから。観客の前でライトを浴びてプレイするときにモニターが聴こえないなんてザラだから、そういうときはその状況に自分を合わせるしかないんだよ。そして、その経験がとても大事なんだぜ。