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前作から1年4ヵ月ぶりのニュー・アルバム『SKA=ALMIGHTY 』をリリースした東京スカパラダイスオーケストラ。“スカこそ万能”という信念を表現した気概たっぷりの本作で、ドラムの茂木欣一は自らの音楽的ルーツを昇華できたと語る。誌面のインタビューでは、その真意やコロナ禍での現在の思いについて明らかにしているが、ドラマガWebでは誌面連動として、個性豊かなアーティスト達とのコラボ曲について語ったインタビューをお届け! 茂木欣一の最新作に込めた“メッセージ”を、本誌と併せてもれなくチェック。

どの曲にも踊れるエッセンスを
必ず入れることを大事にした

●新作『SKA=ALMIGHTY』はゲスト・アーティスト達とのコラボも特筆すべき点だと思います。まず[Alexandros]の川上洋平さんとは、現在テレビ朝日系で放送中の『仮面ライダーセイバー』の主題歌「ALMIGHTY〜仮面の約束 feat.川上洋平」と劇場短編の主題歌「多重露光 feat.川上洋平」の2曲でコラボされていますが、川上さんとの出会いは?

茂木 洋平君と一番最初に出会ったのは、おそらく2013年……まだ[Alexandros]が[Champagne]だった頃かな。年末に大阪で開催されるフェス“RADIO CRAZY”で、何人かのヴォーカリストとコラボしてライヴをすることになって、その中の1人として洋平君が参加してくれることになったんです。そこで彼がレッド・ツェッペリンの「ロックン・ロール」を歌ったんだよね。もうそのクオリティに驚いて、「こんなにカッコ良くてハイ・トーンの出る、ロックを絵に描いたようなヴォーカリストがいるんだ!」ってスカパラの中でも盛り上がって、いつかまた一緒にやりたいなと思っていたんです。それで今回の2曲は「これ以上、川上洋平をヴォーカルに迎えてピッタリな曲はないだろう」ってことでみんなの意見が一致して! 今回は“満を持して”コラボしたという感じですね。

『SKA=ALMIGHTY』
東京スカパラダイスオーケストラ

エイベックス/CTCR-96020

東京スカパラダイスオーケストラ( L→R ):NARGO( tp )、沖 祐市(key)、北原雅彦(tb)、茂木欣一(d)、加藤隆志(g)、川上つよし( b )、大森はじめ( per )、GAMO( t-sax )、谷中 敦( b-sax )

●「ALMIGHTY〜仮面の約束 feat.川上洋平」は川上さんの高らかに歌い上げるヴォーカルと、それに呼応するような楽曲展開が印象的ですが、ドラムのアプローチはどう考えていきましたか?

茂木 スケール感の大きなメロディを歌ってもらってるので、大きなスケールを感じさせるドラマチックなフレーズにしたいなって思っていたんです。それでアレンジを考えているときにふと浮かんだのが、ここ10年くらいツアーで中南米の方へ行って最近よく耳にするようになった、現地独特のハネのあるリズム・パターン。この曲のサビのリズムは、そこからインスピレーションも受けていて、スカパラのみんなが作ってくるメロディの相性にも合っているなと思ったところから取り入れてみようと思ったんです。それとね、何となく[Alexandros]の「ワタリドリ」のサビのパターンにも、少し通ずるものがあったりしてね!

●中南米的な大きなグルーヴ感をスカパラ流に昇華させたわけですね?

茂木 そこはかなり意識しましたね。どの曲にも言えることではあるんですけど、例えばホーン・セクションのソリの部分のフレーズだったり、聴いている人が踊れるエッセンスを必ず入れることは大事にしていきました。この曲もスカパラ流“ダンス・ミュージック”に仕上がりましたよ!

●川上さんとコラボしたもう1曲の「多重露光 feat.川上洋平」も、シャッフルの気持ち良い、まさに踊れる曲ですよね。

茂木 これはもういわゆるビッグ・バンド・サウンドだよね。このドラムの感じは、チバユウスケが歌った「カナリヤ鳴く空」で僕が叩いていたフレーズ……当時の自分に対するある種の“アンサー”のような感じで、“あれから20年経って、こういうシャッフルになりました!”という思いを込めて、この曲であらためて叩いていきました。

●川上さんのヴォーカルも、シャッフルのノリにマッチしていますよね。

茂木 そうなんだよね! “洋平君がシャッフルの曲を歌うとどんな感じになるんだろう”と思いながらすごく楽しみにしていたんだけど、実際に彼が歌い始めたら、[Alexandros]では聴いたことがない化学反応が起きたので、大成功です! スカパラにとってもこんなに新鮮な曲になったのがすごくうれしいですね。レコーディングを経て洋平君も、「[Alexandros]でもシャッフル調の曲をやってみたいな」と言ってたので、彼にとってもすごく新感覚な曲だったと思うんだよね。それとね……この曲はメロディに起伏もあって、歌うのは絶対に難しいけど、これを歌いこなせる川上洋平はタダモノじゃないですよ! 本当に感激しています。僕達にとって世代の異なる人達とのコラボレーションはそういう意味でも刺激になりますね。

●BiSHのアイナ・ジ・エンドさんが参加した「JUMON feat.アイナ・ジ・エンド」も、エキゾチックなヴォーカルやオルタナティヴなギター・リフ、弾けるようなドラミングなど、それぞれのアプローチが鮮烈です。

茂木 これは僕が作った曲なので、そんなふうに言ってもらえるのはうれしいです! “エキゾチック”と言ってもらった歌メロのことなんだけど、僕はラジオを聴くのがすごく大好きで……NHK FMでサラーム海上さんがやってる「エキゾチッククルーズ」っていう番組があるんですよ。そこでサラームさんが選曲する中東地域の音楽が、本当に刺激的で、“こういう旋律ってスカパラで絶対生きるはずだな”って思っていたんです。そしたら自分の中で、ある日このイントロのギター・リフが降りてきて、“これだ!!”って思って(笑)。今の中東のポップス・シーン、俗に言う“アラビック・ポップ”というジャンルの女性ヴォーカリストの楽曲が、トラック・メイキングからめちゃくちゃカッコ良いし、歌い方も欧米にはない独特な旋律というか。そういう組み合わせがものすごい新鮮だったので、僕が作ったデモの時点でそういう要素を盛り込んで持っていって。それでみんなで、アイナちゃんにやってもらいたいねっていう話になったんです。

●アイナさんの新しい一面も見れる楽曲になっていますね。

茂木 本当に最高だよね! 一昨年、対バンしながらジョイントもするっていうツアーをしたんだけど、その中にBiSHもいて、一緒にセッションしたときにアイナちゃんが、僕らが椎名林檎さんと演奏した「真夜中は純潔」を歌ってくれて。そのときの歌唱力も踊りも、見事なものだったので、そういった魅力的なキャラクターの彼女と今回コラボレーションできて、また1つ夢が叶いました。ただね……アイナちゃんの声入れのときに僕が体調を崩しちゃって、レコーディング現場に立ち合えなかったという苦い思い出もあります(笑)。次アイナちゃんに会ったときには、“こんなにもご機嫌なアジテーションをありがとう!!”って、いつかハグしたいくらいの思いですね!

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