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さまざまな新しい血が入ることで
とても面白いことになっていく

●シンガー・ソングライターの長谷川白紙さんとコラボされた「会いたいね。゚(゚´ω`゚)゚。 feat.長谷川白紙」は、デジタル・サウンドがメインの、斬新なアレンジに仕上がっています。

茂木 アルバムの中でもハイライト・ナンバーの1つの曲になったよね。白紙君は、スカパラのデビュー30周年のときに銀座ソニーパークで「#010 MUSIC IN THE PARK 〜東京スカパラダイスオーケストラと作る音楽の森〜」に出演してもらったのがきっかけでつながって、この曲でコラボすることになって! もともとベースの川上(つよし)さんが譜面にメロディだけ書いたものに自分達でリズムをつけて、何となくセッションを録音したデモがあったんですけど、今回候補として送った3曲から、最終的にそのデモを選んで、「メロディ以外は決まっていない曲の方が、僕がたくさん関われる余白がありそうです」と言ってくれて! バンドを30年もやっていると、ついこのへんに着地するだろうなという感覚になることもあるんですけど、「そういうのをぶち壊すようなことを誰かにやってもらいたいよね」とみんなで言ってたので、彼にも「いけるとこまで自由にやってほしい」と伝えたら、本当にうれしそうに取り組んでくれたんです。なので、サウンド的にあそこまでデジタルにいったのは、白紙君が徹底してフレーズの解体と再構築に取り組んでくれたからですね。

●ドラムのフレーズも再構築してもらうこともあったり?

茂木 ありますよ! ベーシックなビートに関しては生っぽいものも残っているんですけど、アディショナルのパーカッシヴなフレーズや、曲の後半のドラマチックに展開するところの独特なメロディや打ち込みは、白紙君のアレンジですね。最後のサビの方で、僕が勝手に“タチーッチーッチー”ってやってるところがあるんだけど、ああいう好き勝手なことをやった部分は残っていたり、白紙君目線で新鮮に映ったフレーズはより前に出てくる印象もすごくありました。だからドラムも、そのまま残っているところもあれば、全然別モノになっているところもあって、“こんなふうになるんだ!”って本当にうれしい驚きばかりでしたよ。白紙君とは何度か音のやりとりをしていったんですけど、みんな自分が良いと思っていたフレーズやアイディアが、白紙君から返ってきた音源の中に聴こえていないと、俄然燃えるんですよ! 特に北原(雅彦/tb)さんはこの曲のホーン・セクションのアレンジは相当気合いが入っていましたよ。“だったらこんなアイディアはどうだ!?”って、新しいアイディアをレコーディング・スタジオで注入したりね(笑)。9人以外の誰かがいると、より面白いことが必然的に起こるから、やっぱりコラボレーションってやめられないですよね!

●中南米のアーティストとのコラボはスカパラの中でも定着してきていますが、今作の「Ribbon feat.Moral Distraída」では、サンティアゴの音楽グループ、モラル・ディストライダ(Moral Distraída)とコラボされていますね。

茂木 2年前、チリ最大の音楽フェスティバル“ロラパルーザ・チリ”にスカパラが出演することが決まって……そのときすごかったんですよ、僕が一番の憧れとしているカエターノ・ヴェローゾも出ていたりね! そういった意味で思い入れのあるイベントでもあったんですけど、“こんな面白いアーティストがいるんだ!”っていう人達があちこちに出ていたんですよ。その1つにモラル・ディストライダがいて、実際に当時彼らのショーを観ていた加藤君が「彼らとコラボしてみるのってどうかな?」って提案してくれたのがきっかけになって、オファーさせてもらったんです。当時のスカパラの新曲をいくつか聴いてもらって、「これらの曲の中からやってみたいものあったりする?」って聞いたら、まさかのMr.Childrenの桜井(和寿)君とコラボした「リボン」をやってみたいっていうリクエストがあってね!

●意外なセレクトですね。

茂木 そうなんですよ。それで桜井君の声が入ってる完成したシングル盤をベースに、彼らが自分達の歌を入れてきてくれて……もう声の力がハンパなくて、驚きましたね。そこから、まったく同じ曲調よりも、別のアレンジで聴かせた方が彼らのテイストが生きるよねっていう話になって、今の形に仕上がっていったんです。こうして世界中の人達ともコラボレーションして音楽を届けることは、スカパラとしての大きな夢なので、この曲でも実現できたのはうれしいですね。

●デジタルから生音まで、ドラムのアプローチの多彩さも聴きどころです。

茂木 ありがとう! 出だしのドラム・パターンは僕がMPCで打ち込んでいて、中盤あたりから一気に生音にシフトして、曲の展開にダイナミクスをつけてみたんです。それによって、より彼らのヴォーカルの熱量もうまくアピールして聴かせることはできたんじゃないかな! それとね、この曲のドラムは、セルジオ・メンデスのアルバム『タイムレス』からヒントを得ているんです。ブラック・アイド・ピーズのウィル・アイアムが中心になって作り上げたアルバムで、リズム・トラックの作り方はすごくシンプルなんだけど、聴くとめちゃめちゃ新鮮で。ブラジルのスタンダードとなっている曲「マシュ・ケ・ナーダ」が、ウィルの打ち込みで聴けたり、Qティップのラップが入ったり、めちゃめちゃ楽しいんですよね。そうやって、さまざまな新しい血が入ることでとても面白いことになっていくようにしたくて。この曲のアレンジを練り直すときにも、“こんなふうにしたらこの曲をもっと楽しく聴かせられるな”っていうヒントをもらいましたね。

この続きは発売中のドラム・マガジン2021年4月号にて!

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