PLAYER

UP

Interview – 山葵[和楽器バンド]

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine

シンプルに筋力をつけるのにプラスして
身体の効果的な使い方を模索し続けている

詩吟や箏、尺八といった和楽器とロックバンドを融合させ、今や国内に留まらず世界からも高い評価を受ける和楽器バンド。8月には国内アーティストの中でもいち早く感染拡大防止のガイドラインに沿った有観客ライブを成功させた彼らが、世界へ“諦めない強さ”を届けるべく2年半ぶりとなるアルバム『TOKYO SINGING』を完成させた。ドラムの山葵は、今作でも安定感抜群のプレイもさることながら、「Singin’ for…」も作詞作曲。あらためて彼のルーツを捉えると共に、ドラマーに留まらない活動を展開する彼に、今作について語ってもらった。

和楽器バンド(L→R)
黒流(和太鼓)、亜沙(b)、いぶくろ聖志(箏)、神永大輔(尺八)、鈴華ゆう子(vo)、町屋(g、vo)、蜷川べに(津軽三味線)、山葵(d)

●まずは、あらためて山葵さんのルーツというか、プロフィール的な部分についてもお聞きしていきたいのですが……ご出身は中国なんですよね? いつ頃から日本に?

山葵 そうですね。最初は3歳のときに日本に来て、6歳でまた中国に戻って、9歳のときに日本の岡山県に。そこからはずっと日本にいます。

●そしてドラムを始めたきっかけは中学3年生のときに吹奏楽部の演奏を見たことだったんですよね?

山葵 それもあるんですけど、同じ時期ぐらいにメタル好きなギターの友達がいて、当時僕は音楽ってチャートやテレビの中の音楽がすべてだと思ってたんですけど、「これ聴いてみなよ」って聴かせてくれたX JAPANの「紅」で、“やばい、こんな激しい音楽がこの世の中にあるんだ”と思って。それと同級生の女の子がブラスバンドで演奏しているのがカッコ良かったっていうのが重なって、“よっしゃ、これは俺もやろう”って思ったんですよね。高校を卒業してからは上京して、ヤマハ音楽院に通いました。

●過去にドラム・レッスンをされていたのも、専門学校に通っていたからというのが大きいのでしょうか?

山葵 ドラムで仕事をしていくためにはどういうことができるかっていろいろ模索していたときの一環でしたね。専門を卒業してしばらくは思うようにいかなくて、もう環境を変えなきゃダメだと思って、思いきって防音室がついている家を借りたんです。当時の自分からしたらすごく家賃が高いんですよ。でも無理やりにでも追い込まなきゃと思って。何ができるか必死に考えてやったのがドラム教室だったんです。自分でチラシを作って新聞に折り込んでもらったりポスティングしたりとか。他にもドラマーとしてアピールするチャンスはないかなといろいろ試していた時期でしたね。

TOKYO SINGING
ユニバーサル UMCK-1668

1.Calling
2.Ignite
3.reload dead
4.生きとしいける花
5.月下美人
6.Sakura Rising with Amy Lee of EVANESCENCE
7.ゲルニカ
8.Tokyo Sensation
9.オリガミイズム
10.宛名のない手紙
11.日輪
12.Eclipse
13.Singin’ for…

●ニコニコ動画への叩いてみた動画の投稿もその一環だったんですね。

山葵 そうですね。当時対バンで一緒になったSHiN君が、打ち上げのときにニコ動で叩いてみた動画を上げているっていうの聞いて、家に帰って見てみたらすごく再生回数が伸びてて、“うらやましい、悔しい”っていうところから始まったんですよね(笑)。

●それがきっかけで現在の和楽器バンドにもつながっていて、本当にすごいと思います。以前は影響を受けたドラマーとして、チャド・スミスやトーマスプリジェンなどを挙げてらっしゃいましたが、和楽器バンドを長く続けてきて、その方向性は変わってきましたか?

山葵 基本的には自分の目指しているスタイルって変わってなくて、やっぱりずっとアメリカン・ロック・ドラマーが好きなんですよね。チャドはもちろん、テイラー・ホーキンスとか、デイヴ・グロール、トラヴィス・バーカー……ぶっ叩き系が好きなんですよ(笑)。シンプルに一音に魂を込めている感じっていうか、それが自分は今でも胸がたぎるんだなぁと思いますね。

専門学校時代は、いろいろなジャンルやドラマーも……スティーヴ・ガッドやデイヴ・ウェックルとかも、あとから聴くようになって、やっぱりすごいなと思うし、テクニックも研究したんですけど、ただ結果的にやっぱり豪快なドラミングに胸が熱くなるっていう感覚は未だに変わってなくて。そういういろいろなスタイルを知って通った上で、原点に戻っているなっていう印象ですね。

チャドは特に『Blood Sugar Sex Magik』のときが好きで、ミクスチャー色が一番強かった時期だったと思うんですけど、曲によってはそんなに難しいことはしてないというか。「Give It Away」とか、ヒップホップがベースになっている曲も多くて、そういうのはシンプルなビートがループみたいになっていたりするんですけど、そのビートだけで胸が熱くなるんですよね。そういうドラマーになるためにはどうしたらいいかって考えたときに、まだまだ身体が細いなって(笑)。それも身体を鍛え始めた理由の1つでもあるんですよね。

●今でも理想とするドラマーを追求し続けているんですね。

山葵 それに加えて最近感じるのは、身体の使い方ですね。例えば、指〜手首〜肘〜肩の中だったら、体幹に近づくほど力って大きいんです。もっと言うと腕よりも脚だったりするんですけど、プロボクサーがパンチを出すときって、腕だけじゃなく、全身を使って体重を乗せてるんですよね。だから、シンプルに出力を上げる(筋力をつける)のにプラスして、身体を効果的に使うやり方があるんじゃないかなというのは、今模索し続けている感じですね。