NOTES
– Spring 2023 –
【A】=アルバム 【M】=ミニ・アルバム 【E】=EP 【V】=DVD、Blu-ray
d:ブライアン・ブレイド
Brianのタッチの素晴らしさ
スティックがシンバルと同時に鳴るのが非常に美しく楽しい
私がYouTubeの検索フィルタで“最新の動画”でBrian Bladeの名前をタイプしていた頃、リーダー・バンドの数少ない動画の中、The Subterranean Sextetという名義の動画があった。楽曲もプレイも凄まじく衝撃を食らった記憶がある(fellowshipの楽曲もこのメンバーでやっている動画も未だにありますしその逆も!)。今回のアルバムはその当時のメンバーで当時の楽曲も収めていて、Brianファンのみなさんには大変興奮ものではと思います。毎回あらためて思うのですが、Brianのタッチの素晴らしさです。スティックの握る力具合いを想像してスティックがシンバルと同時に鳴っているのがもう非常に美しく楽しい。スタジオ録音とライヴも収められてます。Brianが20年以上も同じメンバーで音楽を作っている美しさにも感銘を受けます。とにかく必聴です!(石若 駿)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ブライアン・ブレイド(d、cho)、ロジェリオ・ボッカート(per)、ダグ・ワイス(b)、ジョン・ハート(g)、ジョン・カウハード(p、key、cho)、モンテ・クロフト(vibraphone、marimba、vo)、マイロン・ウォルデン(sax、fl、cl)
発売元:BSMF Records 品番:BSMF-5116 発売日:2023.02.24
d:ケンドリック・スコット
非常にテクニカルな側面を持ちつつも
決して無機質に感じさせないケンドリック
ケンドリックの新作はドラム演奏を堪能するのに最適のフォーマットと思われる、サックス/ベースとのトリオ編成。今作のサックス奏者であるウォルター・スミス3世は過去にエリック・ハーランドとも同編成のアルバムを、ベーシストのリューベン・ロジャースはグレッグ・ハッチンソンやブライアン・ブレイドと共に、サックス奏者ジョシュア・レッドマンのアルバムで同編成の録音がある。それぞれを聴き比べるとテイストや時代の違いを実感でき、とても面白い。そんな中でもこのケンドリックは抜きん出てシンバル類のサウンドがまろやかだ。まさに極上のタッチ。プッシュ・プルやルーディメントを駆使した非常にテクニカルな側面を持ちつつも、決して無機質に感じさせない。音楽性も深く、ともすればハードな編成にもかかわらず、聴き疲れさせない楽曲も素晴らしい。レギュラー・グリップが主体のため、スウィング感にも温故知新的なものがあるのも大きな特徴だ。(大坂昌彦)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ケンドリック・スコット(d)、リューベン・ロジャース(b)、ウォルター・スミス3世(sax)
発売元:ユニバーサル(配信リリース中) 配信日:2023.03.03
d:チャーリー・ワッツ
ハイハット抜きの動きが絵面的には不思議に見えても
聴いていて最高のグルーヴとドラム・サウンドになっている
2012年に行われた50周年ツアーのニュージャージー公演の模様が最高の映像とサウンドで蘇った!! まずオープニングで打楽器群のワクワクするパフォーマンスがこれから始まるショウのすごさを予感させる。そして内容はストーンズの50周年の歴史を存分に堪能できるグレイテスト・ヒッツであり、大物ゲストらも登場する、めっちゃ楽しいライヴなのだ!! ジャム・セッション的な曲や、コール&レスポンスなどは、まるで子供が自由に遊んでいるかのような無垢さを感じる。そして残念ながら2021年に亡くなってしまったチャーリーのプレイがまた素晴らしい!! すっかりお馴染みの2拍4拍のハイハット抜きの動きが、絵面的にはとても不思議に見えるけど、聴いていて最高のグルーヴとドラム・サウンドになっているので納得だ。メンバー紹介でおどけたり、媚を売ったりもしないクールな彼は、本物のジェントルマンで、今も天国から微笑みを送ってくれているに違いない。(古田たかし)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】チャーリー・ワッツ(d)、バーナード・ファウラー(per、cho)、ロン・ウッド(g)、キース・リチャーズ(vo、g)、ミック・ジャガー(vo、g、harp)、ダリル・ジョーンズ(b)、チャック・リーヴェル(key)、ティム・リース(key、sax)、ボビー・キーズ(sax)、他
発売元:ユニバーサル 品番:【Blu-ray+2CD】UIXY-15050/【DVD+2CD】UIBY-15137 発売日:2023.02.10
d:林 立夫
演奏も歌も佇まいもスマートでお洒落で味わい深い
衰えるどころか最高を更新し続けています
日本のロック、ポップスを創造してきた大先輩方による、デビュー・ツアーのファイナル公演。とてつもなく繊細で深く太い演奏と歌に、のっけから心奪われ唸ってばかりでしたが、ライヴ中盤からの奥田民生さん、尾崎亜美さん、荒井由実さんとの演奏に心底驚愕。まさに時代を創ってきた音色、フレーズ、グルーヴが、素晴らしい曲と歌に彩りを与え、匂いを醸し出す。個人的には尾崎亜美さんの「初恋の通り雨」、「マイ・ピュア・レディ」、荒井由実さんの「返事はいらない」、「あの日にかえりたい」などが素晴らしすぎて何度もリピート。立夫さんは相変わらず演奏も歌も佇まいもスマートでお洒落で味わい深い。独創的なリズム・パターンのアイディアや、ステディなハット・ワーク、素早く切り込んでポケットに入るスネアのショットなど、衰えるどころか最高を更新し続けています。昔からスペシャルだったみなさんが向上心を持ち続け、輝き続ける姿に大変感銘を受けました。(玉田豊夢)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】林 立夫(d)、小原 礼(b)、鈴木 茂(g)、松任谷正隆(key)、市原ひかり(tp、flugelhorn、cho)、小林香織(sax、fl、cho)、駒野逸美(tb、cho)、荒井由実/尾崎亜美(vo)、奥田民生(vo、g)
発売元:日本コロムビア 品番:【Blu-ray】COXA-1306/【DVD】COBA-7320 発売日:2023.01.25
d:バーナード・パーディ
パワフル女性シンガーとの相性は抜群と再認識
現行のパーディ・ブルース・ドラムが味わえる1枚
知る人ぞ知る、メンフィス・ビール・ストリートのブルース女王、バーバラ・ブルーの新譜。ドラムはバーナード・パーディ。アルバム通して“ダチーチーチー”には出会えないけれど、M8でまさに“パーディ・シャッフル”の原型が味わえます。M3は王道ベタベタな楽曲と絶妙なヌケ感が最高。タイトなノリがお好きな人にはM10がたまらないはず。M11のリムを使ったアプローチと持って行き方は逸品。ラスト・チューン「Trail of Tears」はドアタマの入りからして激ヤバです。パーディとパワフル女性シンガーの相性はやっぱし抜群……と再認識させられます。極上スタジオの空気がそのまま収められていて気持ち良く、現行のパーディ・ブルース・ドラムが味わえる1枚ですね。(白根佳尚)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】バーナード・パーディ(d)、カート・エリング(vo)、チャーリー・ハンター(g)、バーバラ・ブルー(vo)、デビッド・フッド/ワーリッツァー・クレイトン・アイビー(b)、マーク・ナーモア(p)、ウィル・マクファーレン/ダヴォル・ハッチ・ハシック(g)、ブラッド・ギン(sax)、マーク・フランクリン(tp)、他
輸入盤(配信リリース中) 発売日:2023.01.27
d:スタントン・ムーア
タイコは今までよりも沈んだファンク・ビートに聴こえるが
弾けるスネアやハットの刻みはスタントンらしさ満載
30年もの歴史を誇るアメリカ・ジャム系バンドの代表格、ギャラクティックの新譜の登場。ロック、ファンク、ジャズなどに加え、彼らのベースであるニューオーリンズの音楽などをミックスしたグルーヴィーなグループとしてスタートし、2000年代のエレクトロニカ的トランス期を経て、今作はファンク・ロックとヒップホップの両面を意識した作品に到達。アルバム6曲のうちギャラクティックのみの演奏は1曲で、他はそれぞれ異なったヴォーカルやラッパーをゲストに新たな市場開拓に乗り出した感もうかがえる。スタントンのタイコは今までよりも沈んだファンク・ビートに聴こえるが、弾けるスネアやハットの刻みは彼らしさ満載。熟し方もやはりスタントンです。(芳垣安洋/Orquesta Libre、On The Mountain、etc.)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】スタントン・ムーア(d、per)、ロバート・マーキュリオ(b)、ジェフリー・レインズ(g)、リチャード・ヴォーゲル(key)、ベン・エルマン(sax、harp)、エリック・ゴードン/グレン・デヴィッド・アンドリュース(tp)、エリック・ビディンズ/アンジェリカ“ジェリー”ジョセフ/Cimafunk(vo)
輸入盤(配信リリース中) 発売日:2023.01.20
d:ネイト・スミス
卓越したリズム感は大きな魅力であり
さりげないアプローチが全体の印象をより現代的にもしている
時代を超越する普遍性を湛えながら、背景に濃厚なアメリカの匂いを感じさせるカート・エリングの歌声。それはそのままネイト・スミスのドラミングにも使える形容であり、そんな2人の相性が悪いわけがない。全編に渡ってリッチな演奏と音色に溢れている。各楽器をクリアーに分離させつつ、一体感も同時に担保するミキシングも素晴らしい。フェード・インの導入からしてブーンバップのミックス・テープのようなM4で聴けるバック・ビートの置き位置(ディラ・スウィング!)や、M5の終盤で一瞬顔を見せるシンバル・ワークを可能にする卓越したリズム感はこのドラマーの大きな魅力であり、そうしたさりげないアプローチがEP全体の印象をより現代的にもしている。(木暮栄一/the band apart)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】ネイト・スミス(d)、カート・エリング(vo)、チャーリー・ハンター(g)
輸入盤(配信リリース中) 発売日:2023.02.17
d:マイク・ポートノイ
マイク・ポートノイのタム/シンバルを絡めた特徴的なビートと
ギター、ベースのユニゾンは一度聴いたら耳から離れない
リッチー・コッツェン、ビリー・シーン、マイク・ポートノイという、世界を代表するプレイヤー達で結成されたTHE WINERY DOGSの3rdアルバム。往年のハード・ロックな楽曲が中心となっており、M1から各プレイヤーのテクニカルなプレイが存分に炸裂している。特にマイク・ポートノイのタム/シンバルを絡めた特徴的なビート、そのビートを歌うようなギター・リフ、ベースのユニゾンは一度聴いたら耳から離れないだろう。また、メタル・ドラマーとして聴き逃せないのはM8。マイク・ポートノイの真骨頂とも言えるパワフルなツーバス・プレイに加え、テクニカルなシンバル・ワーク、コンビネーション・フィルインが数多く組み込まれた疾走感溢れる楽曲となっている。約8年ぶりとなるドリーム・バンドによる新作、要チェックです。(響/摩天楼オペラ)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】マイク・ポートノイ(d)、ビリー・シーン(b)、リッチー・コッツェン(vo、g)
発売元:ソニー 品番:SICX-30163 発売日:2023.02.03
d:茂木欣一
どんな歌や楽器が飛び込んで来ても熱くカッコ良く迎え入れる
これぞスカパラの流儀、ひいてはスカという音楽の懐の広さ
フィーチャリングのシンガー達が管楽器経験者だったなんて。彼らにすればいまやガラクタのようにしまい込んでいた昔取った杵柄を、宝石のようにまた人前で輝かせるコラボでもあったのではと想像し胸が熱くなりました。外からどんな歌や楽器が飛び込んで来ても、熱くカッコ良く迎え入れてくれる。これぞスカパラの流儀、ひいてはスカというスタイルの音楽の懐の広さであり大きな魅力だと思いました。高橋幸宏50thのNHKホールで、ゲストのスカパラ・ホーンズの後ろでドラムを叩いたとき、僕のスティック・カウントとフィルインの次の1拍目に、脳天に突き刺さるようにスカパラのホーンが鳴り響いたあの瞬間の快感を思い出してゾクゾクします。みんなお洒落をキメて、自分の得物を隠し持ってスカパラのライヴに行こう!(大井一彌/yahyel、DATS、etc.)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】茂木欣一(d)、大森はじめ(per)、川上つよし(b)、加藤隆志(g)、沖 祐市(key)、GAMO/谷中 敦(sax)、NARGO(tp)、北原雅彦(tb)、長屋晴子(vo、tb)、石原慎也(vo、tuba)、幾田りら(vo、tp)
発売元:エイベックス 品番:CTCR-96073 発売日:2023.03.15
d:青山英樹
ツーバスを用いたヘヴィなスタイルから
王道のロックンロール、熱いバラードまでを力強く華やかにサポート
「1988 」……彼らが“男闘呼組”としてデビューしたときから30年、突然の活動終了から25年という歳月を超え、メンバーの誰1人欠けることなく奇跡的な再スタートを切った。その彼らを音楽的な高みに引き上げるソングライター&プロデューサーは寺岡呼人。タッグを組んで完成された本作からは、個々のメンバーが積み上げてきた人生経験の重み、そしてファンの前に再び姿を現せる喜びと覚悟とが伝わってくる。その彼らの新体制を支えるドラマーは青山英樹。今や説明不要のJ-ROCKトップ・ドラマーであり、この作品でもツーバスを用いたヘヴィなスタイルから王道のロックンロール、そして熱いバラードまでを力強く華やかにサポート。今後のライヴ展開にも期待したい!(山本雄一/RCCドラムスクール)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】青山英樹(d)、成田昭次/岡本健一(vo、g)、高橋和也(vo、b)、前田耕陽(vo、key)、寺岡呼人(all other instruments)、他
発売元:TOKYO RECORDS 品番:TYOR-1007 発売日:2023.03.01
d:山本真央樹
エネルギッシュな中にも円熟を感じさせる
絶妙なバランス感覚と豊かな音楽性に感動
DEZOLVEの3年ぶり6作目となる新譜は、7分を越える大曲「Heart of the world」で幕を開けます。重厚なテーマ部分からいくつもの展開を経て、それぞれのソロ・パート、超絶ユニゾン、複雑なストラクチャーとタイム・シグネチャーを軽々と乗りこなす演奏力は快感そのものです。メンバーがバランスよく持ち寄った全12曲、硬派からメロウまでさまざまなタイプの楽曲に豊かな色彩を与える真央樹君のドラミングは実に素晴らしく、エネルギッシュな中にも円熟を感じさせる絶妙なバランス感覚と豊かな音楽性に感動しました。一昨年リリースされた真央樹くんの初ソロ・アルバム『In My World』をまだお聴きになっていない方は、ぜひそちらもチェックしてみてください。(神保 彰)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】山本真央樹(d、per、syn、etc.)、兼子拓真(b)、北川翔也(g、cho、etc.)、友田ジュン(key、p、etc.)
発売元:キング 品番:KICJ-862 発売日:2023.02.15
d:イーサン・トルキオ
バンド・サウンドは細部までタイトに引き締まり
曲は鮮烈でバラエティに富むというマジックを実現
世界を席巻するイタリアの新世代バンド、待望の第3作。ユーロヴィジョン・ソング・コンテスト2021優勝で大ブレイクし、ロックの救世主と騒がれる彼らの、ブレイク後初の注目作だ。前2作も手がけたF.フェラグツォに加え、超売れっ子Pのマックス・マーティン(テイラー・スウィフト、他)らとのコラボで制作され、バンド・サウンドは細部までタイトに引き締まり、曲は鮮烈でバラエティに富むというマジックを実現。“イーサンのR&Rビートの新しさはどこから?”と考えて、ハイハットとバスドラでダンス・ミュージックをロックに翻訳したような感覚かなという結論に至ったが、みなさんいかが? 初回盤には昨夏初来日時のライヴCDが付属。熱狂のパフォーマンスは必聴。(岸田 智)
◎Disc Information
【参加ミュージシャン】イーサン・トルキオ(d)、ヴィクトリア・デ・アンジェリス(b)、トーマス・ラッジ(g)、ダミアーノ・デイヴィッド(vo)
発売元:ソニー 品番:SICP-6505 発売日:2023.01.20