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名曲「クリスマス・イブ」における“青純ドラミング”を考察

  • Text:Yusuke Nagano

早いもので2021年も、残すところ数日。そして本日はクリスマス・イブです。街中ではさまざまなクリスマス・ソングが流れていますが、日本で最も有名なクリスマス・ソングと言えば、やはり山下達郎の「クリスマス・イブ」ではないでしょうか。1983年に発表されたアルバム『MELODIES』に収録された楽曲で、88年にJR東海のCMソングに採用されたことをきっかけに再び注目が集まり、以降、日本の冬を彩る楽曲として定番化。ロング・セラーとなり、100万以上の売り上げを記録。12月15日には、既存シングルの収録曲に、“おうちカラオケ”、“おうちアカペラ”などの音源を追加した限定盤を「クリスマス・イブ(2021 version)」と題してリリース。12月22日発表のオリコン・ウィークリー・チャートで10位を記録するなど、35年以上に渡って愛され続ける、まさに国民的ヒット曲と言えるでしょう。

オリジナル版の「クリスマス・イブ」のレコーディング・メンバーは、青山 純(d)、伊藤広規(b)、難波弘之(p)、中村 哲(OBX-a Synth)というミュージシャン達で、ヴォーカル、コーラス、エレキ・ギター、パーカッションを山下達郎自身が担当。多重録音を駆使したコーラス・ワークに加えて、実力派ミュージシャンによる鉄壁のバンド・サウンドも、この曲の魅力の1つ。2013年に急逝された日本を代表する名ドラマー、青山 純氏の重厚なサウンド&グルーヴが屋台骨となっている。ここでは「クリスマス・イブ」における青純ドラミングの魅力をライターの長野祐亮氏に解説してもらった。

2021versionの「クリスマス・イブ」
ブックレットにはクレジットもしっかりと掲載

シンプルな歌モノの奥深さを感じさせてくれる名演

「クリスマス・イブ」のリズム・パターンは超シンプルだ。曲の主要部分は、キックを1、3拍のアタマに踏む8ビートのみで演奏されており、表面的には入門者でも比較的簡単にトライできる内容と言えるだろう。しかし伝説のセッション・ドラマー、青山 純氏が叩く存在感に満ちたビートは、聖夜を連想させる厳かな響きと、重心の低さを伴う力強い脈動感が素晴らしく、この曲に唯一無二の個性を加えている。

具体的には、まずキックとスネアの図太い低域と鮮明なアタック感を両立させた音色が秀逸。そしてビートのツボに食い込むようなプッシュの効いたキックと、重量感のあるスネアを絶妙な間合いでバランスさせることで、青山氏の真骨頂でもある邁進力と包容力を共存させたグルーヴを生み出している。

洗練されたタッチのハイハットも躍動感のポイントだが、特にオープン/クローズをヴォーカルと巧みに絡めるBメロあたりは要注目で、単なるリズムの反復ではなく、有機的にヴォーカルと呼応する歌心のあるプレイが印象的な場面となっている。

またこの曲のリズムには、もう1つ重要な隠し味があるのだが、それは4拍目にスネアと同時にフロア・タムを叩いていること。それによって生じる2、4拍目の音圧変化が、1小節で巡るリズムのサイクルを強調すると同時に、厳かな深いトーンを演出している。ちなみに冒頭のイントロでは、4拍目のフロア・タムをフィーチャーした音数の少ない別パターンを演奏しているが、その段階から聴こえてくる4拍目のフロア・タムが、Aメロ以降の8ビートにリズムの“要”として引き継がれるアレンジもハイセンスだと感じる。

さらにフィルインも比較的シンプルで、王道フレーズである“タカトン”が目立つが、これもまた次の展開を促す勢いと力強さが抜群。場面によってフレーズの組み合わせなどに変化を加えているが、そのバリエーションのつけ方に注目するものマニアックな楽しみ方だろう。

というわけで、青山 純氏の演奏する「クリスマス・イブ」のドラミングを検証してきたが、表面上のシンプルさとは裏腹な卓越した表現力には多くの学びが含まれており、シンプルな歌モノの奥深さをあらためて感じさせてくれる名演となっている。ぜひともこの機会に「クリスマス・イブ」をチェックしてみてほしい。