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    【Archive Interview】稀代の名手、青山 純が語る”歌とドラム”の真髄

    本日12月3日は2013年にこの世を去った日本を代表するドラマー、青山 純氏の命日。あまりに早すぎる訃報から9年経った現在も、その歌心溢れるドラミングは多くのプレイヤーに影響を与え続けています。氏の功績をあらためて語り継ぐべく、2001年2月号の”歌とドラム”特集で実現したインタビューを再掲載。稀代の名手が”歌モノ”の真髄を語る貴重な内容です!

    ヴォーカリストの口元を見ることで
    いろんなことがわかる

    ●今回のテーマである“歌”というものを意識し始めたのはいつ頃ですか?

    青山 若い頃はひたすら自分のテクニックを磨こうとして……無理なのにねえ、頑張ったりしたんですけど(笑)。でも20代前半くらいかなぁ。もともと歌モノ好きだったんでね。やっぱり(山下)達郎さんとステージやるようになってからかな。

    レコーディングよりも、ライヴで特に学びましたね。決して乱打して目立つんじゃなくって、ベーシックにやっている中で、いざというときに“俺はここにいますよー”っていうのをどうやって出すかってことをね。達郎さんと一緒にやるようになって、広規(伊藤広規/b)と知り合って、しばらくして……30代過ぎてからかな、本当に意識し出したのは。20代は本当に無我夢中でやってましたからわからなかったですよ、そんなこと。

    ●その後たくさんのアーティストと共演するようになって、積み重ねたものが生かされてきた……。

    青山 そうです。リハーサルとかだと、ヴォーカリストってバンド側を向いて歌うパターンが多いですよね。そのとき、その人の目を見ないで、口元を一番見るんです。口元を見ることによってその人の間(ま)の取り方とか、呼吸とか……それこそスネアのタイミングもそれで計れるようになる。

    そうやって自分の中に印象を焼きつけておくと、いざステージに立ったとき、ヴォーカルの背中を見ただけで、彼らのテンションとか感覚とかいろんなことがわかるようになるんですよ。長年、回数を積み重ねた結果だと思いますけど。

    ●そういうことに気がつき始めると面白いですね。

    青山 面白いですよ。でも、それに気づいたのはわりと最近ですけどね。昔はそんな余裕なかったですから。でも、新しく一緒にやるヴォーカリストに対しては今でも、叩きながら、“これでどうかな? 気持ち良く歌えてるかな?”って探りながらやってますけどね。

    青山氏の名演で有名な「Plastic Love」

    ●楽しそうに歌っているように見えて、本当は心配ごとがあるんじゃないかって思ったりすることも?

    青山 そういうことはよくありますよ。まだつき合いが長くない人とのステージだったりしたら、本番中にこと細かに感じ取ってあげるっていうのはさすがに難しいわけで、“今日はいいかな?”とか、“喉がヤバイかな”って気を遣ったりします。

    ●前もって歌詞を読んだりしますか?

    青山 しますね。譜面に書き込んじゃうこともあります。そうすると、プレイ中に見失っても、それを見て追いつけたりしますから。言葉数の詰まっている歌詞で僕がテンポとかをミスすると取り返しのつかないことになっちゃいますからね。とにかくいつもいろんなところに気を配ってますよ。“叩く”っていうのは、ある意味最も野蛮な奏法ですからね。1つ間違えたらうるさいだけで終わっちゃいますから、ほんと。

    でもね、実は一番気合いが入るのは練習スタジオだったりするんです。練習スタジオっていうのは一番バレるところですよ、生音だけに。ステージだとマイクとかモニターとかスピーカーとか、2次的、3次的要素がある。それに対して練習スタジオだと、マイクがそんなになかったりとかしますから。それでも頑張ってバランス取ったりするんです。それができないとやっている方は気持ち悪くて仕方がないですから。

    ●そういうシチュエーションって多いんですか?

    青山 ええ、最近ずっとライヴ中心の生活なんで、けっこう多いです。今年はけっこう多彩ですね。(竹内)まりやさんの18年ぶりのライヴやって、徳永(英明)さんも40本くらいライヴやって……こないだ1回だけ六本木のスイートベイジルでFayrayの初ライヴに携わって……俺の奥さんの遠い親戚なんですよ、彼女って(笑)。で、年末はMISIAのカウント・ダウンやって。男女織り交ぜていろいろやってます。

    MISIAが公開した青山氏の追悼映像

    ●ヴォーカリストからドラミングに対して指示を出されることはありますか?

    青山 ありますよ。人によってですけどね。“もっとフワッとした感じ”とか、抽象的なことを言われることも多々あります。

    ●具体的に“そこでハイハットをタメて”みたいなことを言われたりは?

    青山 そういうことを言うとしたら男性ヴォーカルですね。女性は漠然としている方ですよ。だからといって“22ビット速い”とか言われてもイヤですけどね(笑)。この前、MISIAには“もっと若い感じで、元気良くお願いします”って言われたんですよ。でもね、そういうのってすごいわかるんですよ。だから、俺も“広規、もっと若い感じだってよ!”って言ったりなんかして(笑)。

    ●本数の多いツアーだと、ヴォーカリストの調子は日によって変わってくるんじゃないですか?

    青山 変わりますよ。達郎さんなんかは、尻上がりにパワーが出てくるタイプ。でも尻窄みに悪くなっていくタイプはほとんどいないから当たり前か(笑)。まだ経験の浅いヴォーカリストで、盛り上がりすぎてノド潰しちゃったりっていうのもありますからね。

    それからヴォーカリストも含めて、バンドのメンバーで個々の満足度っていうのは違ったりしますし。ライヴが40本あったら、全公演パーフェクトっていうことはやっぱり少ないですよ。僕はあくまでお客さんの反応をもって判断していますね。

    ●演奏以外の部分でヴォーカリストを盛り立てたりもしますか?

    青山 ええ、楽屋でゆっくり話をしたり。でもそれ以前にお互いミュージシャンだから、音出した方が早いですよ。コミュニケーションも大事ですけど。

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