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【Archive Interview】稀代の名手、青山 純が語る”歌とドラム”の真髄

ヴォーカルに対するドラムの立場は
映画で言うなら助演男優、それが理想とするところ

●歌とドラムが良い関係にあるな、と思う組み合わせやアーテイストは?

青山 ピーター・ガブリエルとマヌ・カチェ。そのマヌ・カチェが参加したジョニ・ミッチェルのアルバムも好きです。それからチャカ・カーンとジョン・ロビンソン。ジョン・ロビンソンのドラムっていうのは、ヤバイですよ、ほんと。普通のことやってるのにこんなに目立っているヤツはいないなって思いますよ。CD聴いて、ハイハット“チーッ”っていう音だけで、その存在がわかっちゃいますからね、あの人(笑)。ジルジャンのクイック・ビートとあのキックの音。目立つわりに歌もきちんと前に出ている。それでいて“私ここにいますよー”って後ろから手を振っている感じ。“はいはい、わかりました、ジョンさんですね”って思ってクレジットを見ると、やっぱり彼の名前がそこにあるんですよ(笑)。

日本人ならば林 立夫さん。ティン・パン・アレーとか昔のユーミン、あれもスゴイですよね。聴けば“あぁ、ミッチだ”ってすぐわかる。ポンタ(村上秀一)さんはミッチとは好対照ですけど、1発でわかりますね。吉田美奈子さんの『フラッパー』なんていうアルバムは“歌とドラム”っていう意味でも衝撃的でした。

青山氏が影響を受けた吉田美奈子『フラッパー』におけるポンタ氏のドラム

●青山さんがドラムを始めた頃はどういうプレイに憧れていましたか?

青山 ガキの頃は2パターン叩ければOK、高校に入ってちょっとフィルができるようになったら、プロ級だって言われていた時代でしたからね(笑)。だから、プロがやっているめちゃくちゃスゴイ技とかは“将来的に学べばいいや、先送りにしよう”って決め込んでいましたね(笑)。

神保(彰)君なんて初めて観たときはビックリしましたねえ。“なんだこの人、余裕でやってるよ〜(笑)”みたいな。彼を知ってから、俺はプログレじゃなくてロックでやっていこうって決めましたね(笑)。それでブリティッシュ系のハード・ロックなサウンドに向かっていったんだけど、途中からベイエリアの黒人サウンドに魅せられちゃって。そっち系は歌もリズミカルだったりして、歌との絡みは強いですよね。歌もリズムの一部みたいなもんですから。

今、共演しているMISIAさんに通じるものはちょっとあります。今回はペッカーさんもいてバンドは中年の渋い感じになっていますけど、メインが若いからその対比も面白い。MISIAさんはやっぱりリズム感がいいのでクリックとかは聞かないで、僕のグルーヴをもとに歌ってますね。

●ヴォーカリストによってドラムの音量を調整することはありますか?

青山 レコーディングではほとんどないです。声量のあまりないタイプのヴォーカリストとライヴでやるときに、僕のソナーのセットだと音が大きすぎて、ヴォーカル・マイクに音がのってしまうことがあるんです。そういうときはちょっとだけミュートしたり、力加減はしますけど、基本的にはあまり譲らないですね(笑)。変に遠慮して音が変わったら嫌ですし。よっぽどのときはセットごと替えます。

●青山さんなりの“歌とドラム”っていう観点がやっぱりあるわけですよね。

青山 そうですね。やっぱりドラムも一緒に歌うっていうのは大事ですよ。歌うっていっても、声を出すってことじゃなくて、身体全体でってこと。でも、下手に浮かれていると手数多くなっちゃうからまた大変なんですけどね(笑)。“歌と伴奏”っていう関係じゃ満足いかないですから。

たとえ、2、3回のステージしか共演しないってわかっている人でも、なるべく時間を多く共有して、気持ちが通じ合うようにすることが大事ですね。それは一緒に食事をするとか、遊びに行くとか、そういうことでもいいんですよ。それがないと“歌い手と伴奏者”っていう関係っていうか、とにかく仕事っぽいプレイになっちゃいますから。そうじゃなくて、1つのバンドっていうことを意識してます。気持ちはいつもあなたと一緒にいますから……っていう感覚ですよ。

青山純Super Sessionsのダイジェスト映像

●ドラムというよりバック・グラウンド・ヴォーカルみたいな感じですかね。

青山 そうですね。映画で言うなら、主演男優と助演男優ってあるでしょう。あれが理想ですね。細かく言えば、フィルインやブレイクも含めてその曲の一部なんですよ。だからやっぱり良い曲に対しては、頑張って飽きられないようなドラムを叩かないといけないなって常々思いますよ。

●歌ものの場合は、やはり歌を邪魔しないっていうのが基本的な考えだと思うのですが、逆に暴れるときもありますか?

青山 ありますよ。そういうふうにヴォーカリストからリクエストされることもありますし、自然に暴れちゃうこともありますから(笑)。ベーシストが暴れていたら僕が抑えたり、逆にベースが遊ばせてくれるなって直感したら一気に僕がグァーッとやったりもしますから。そういうスペースを見つけたら瞬時に飛び込みますよ。サッカーで言うなら、キラー・パスですかね。フェイントかけたりとかもしますからね(笑)。

それがライヴの醍醐味でもあるわけだし。ポンタさんも”たとえトラブルが起こっても、それこそがライヴっていうモンであって、そういうハプニングも楽しむもんなんだよ”って言ってますけど、僕もほんとそう思います。

リズム&ドラム・マガジン2023年1月号

2023年から創刊41 年目に突入するリズム&ドラム・マガジン。12月16日発売の2023年1月号では、青山氏と共に日本のドラム・シーンを牽引してきた重鎮、山木秀夫と、11月に初となる東京ドーム公演を成功させた時代の寵児=King Gnuのドラマー、勢喜 遊によるプレミアム対談が実現! また総力特集として、原点にして究極のリズム=8ビートの魅力を40ページに渡ってさまざまな角度から検証! 記事内では、青山氏の息子で、今やトップ・ドラマーとなった青山英樹もフィーチャー! さらに唯一無二を貫いたLOUDNESSの樋口宗孝氏のドラミングを一番弟子である加藤剛志が動画連動でレクチャーする企画など、盛りだくさんの内容となっております!!