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    たたきびと ♯7 尽きない“フット・ワーク”の悩み【前編】

    • Photo:Takashi Yashima Analysis:Yusuke Nagano

    2014〜16年にお届けした玉田豊夢と朝倉真司による連載セミナー=“たたきびと”をドラマガWebに転載! 打楽器の魅力、楽しさを伝えることを主軸に置いており、ドラム&パーカッションを初めてみようという方に最適な内容です。今回のテーマは、ドラミングの重要なテクニックであるフット・ワーク。悩みの尽きない“足技”のアレコレを、2回に渡って語っていきます。中〜上級者も必見です!

    これからドラムを始めてみたいという方は「ビギナーお助け記事まとめ」をチェック!

    上から落とすみたいなイメージで
    力を入れずに“ドン”と
    大きく鳴らせるように (朝倉)

    “トン”って感じよりも
    “ウッ”っていきたいというか
    跳ね上がるようなイメージを持っている (玉田)

    ●イスに座って足でペダルを操作するという点もドラムの大きな特徴ですが、そのフット・ワークで心がけていることはありますか?

    朝倉 フット・ワークに関しては、未だに常に悩んでいて。ペダルの踏み切った位置が上の方なのか下の方なのか、どこまで振りかぶるのか、ビーターの長さや重心のバランスとか……今、普通にやってはいますけど、悩みは尽きないですね。

    散々いろいろ試して“コレ!”って決めたのに、リハスタにあるペダルを踏んでみたらそっちの方が踏みやすかったということもありますし。ハイハットも同じで、“本当はどうするのが良いんだろう”といつも思いますね。

    玉田 フット・ワークは悩みますね。手よりも感覚を掴み取るのが難しいので、足の方が練習量も必要なんだろうなと思いますし。僕も朝倉さんと一緒で、自分のイメージに近づけるために、身体とペダルの距離を試したり、セッティングを変えてみたり、いろいろとやってきましたね。今でも試行錯誤することが多いです。

    ●読者アンケートを読んでいても、フット・ワークで悩んでいる人は多いように思いますね。

    玉田 フット・ワークはやればやるほど難しく感じるというか。若い頃なんかは、いかに速く動かすのかとか、そういうところに燃えたりするじゃないですか。でもそれとは違う難しさ……1拍目の“ドン”に賭ける気持ちだったり、1拍を押し出すスピード感、音の強さや長さとか、そういう表現の深い部分の大切さを知ると、より難しく感じますね。

    ●なるほど。先ほど、実際ペダルを踏んでいただきましたが、踏み方も2人それぞれでちょっと違いますよね。セットと距離のある玉田さんは、足を前に押し出すように踏んでいるように見えました。

    玉田 確かにそうかもしれないですね。“トン”って感じよりも、“ウッ”っていきたいというか、跳ね上がるような、そういうイメージは持っています。

    朝倉 豊夢君は“蹴っている”みたいなイメージがありますね。私は上から落とすみたいなイメージで、力を入れずに“ドン”と大きく鳴らせるように。でも真上よりはちょっと身体を離した方が俯瞰できるぶん、コントロールしやすいのかもしれない。

    ●ボードに対する足の角度もそれぞれで違いますね。朝倉さんは足を斜めに置くのが特徴的だと思いました。

    朝倉 そうなんですよ。でも何で斜めなんですかね? 自分でもわからない。ちなみに身体も斜めになってしまうことが多いです(笑)。

    玉田 (笑)。僕はペダルに対して足は垂直だと思います。キックが真っ直ぐ向いていたら、それに対して身体がいい位置にくるように、イスの位置を微調整します。

    ●ボードの踏み位置はいかがですか?

    朝倉 ボードの真ん中よりも、もうちょっと上の方なのかな。本当はイメージ的には一番上の方を踏んでいたいんですけど、手足が短いのか、それだとうまく力がかかりにくい。ダイレクト感というか、スティックを短く持っちゃうのと同じなんですかね。豊夢君は?

    玉田 僕も真ん中よりちょっと前ですね。ふくよかさとアタックのバランスが取れる場所っていうのが、何となく自分の中にあって。そこよりも前すぎると音が“パツッ”と詰まっちゃう感じがするし、かといって、後ろ過ぎるとコントロールがしづらくなっちゃったりして。

    それを意識しているというよりは、そのバランスが取れる位置を踏むように、出したい音と、踏み心地とかのイメージから勝手に身体が調整してくれるみたいな。無理ないところに身体を持っていってくれるというか。

    ●グリップのときも同じようなことをおっしゃっていましたよね。やり続けていく中で、身体が正しい方法を教えてくれるという。

    玉田 ええ。だから“こうだ!”ってあまり決め過ぎない方がいいのかもしれないですね。イヤモニをよくするようになってから、音量よりも音色なんだなって思うようになって。前はバンドの音がガッと来たら、ついヒール・アップ(カカトを上げる奏法)で踏み込んじゃってたんですけど、音色が良ければ力で踏み込まなくても音はヌケるだろうなって。考え方が変わってきたんです。

    とはいえ、ヒール・ダウン(カカトをペダルにつけた奏法)だと、“ドン!”っていけないイメージもあって。でもジョン・ロビンソンなんかは、ヒール・ダウンで踏んでますけど、ローもアタックもハッキリとしていて音量もあるし、あれはすごいと思いますね。昔からキックが24″なのは、あの奏法と、あの大きな体格とのバランスが良いからなんだろうなと思います。

    >>次回「尽きない“フット・ワーク”の悩み【後編】」へ続く

    たたきびとの“フット・ワーク”

    ここでは玉田&朝倉のフット・ペダルの“踏み方”をチェックしていこう。足の動きはもちろん、フット・ボードに対する足の角度、踏む位置が2人それぞれまったく違うことがわかるはず。それが“音色”となって表れるのだ!

    玉田の“フット・ワーク”

    • 写真1

    まず写真1から見た足を置くポジションだが、写真2で示した足の裏の最も力が加わるポイントが、フット・ボードの真ん中より少し上、もしくは上から1/3くらいに乗せられているのがわかる。これは前過ぎず後ろ過ぎずの、最も基本に忠実なポジションといえる。そして踏む一連の動作では(写真3→4)、玉田は足を前方にプッシュするように力を加えるイメージらしいが、注目のポイントはカカトの位置だろう。ヒットした瞬間にカカトがつま先とほぼ同じ高さか(足の裏が床と平行になる)、時にはそれよりも低めのポジションになることが多く、このようなフォームではヒットした瞬間の足の裏とフット・ボードの接地面積が広めになるため、太く柔軟な音色を得やすい傾向になる。

    朝倉の“フット・ワーク”

    • 写真1

    足を乗せる位置は、玉田と同様で基本に忠実であるが、足の置き方はカカトがやや内側に入っているのが特徴的(写真1)。このあたりは身体の癖による個人差などはあるが、このようなスタイルで足を乗せた方がリラックスできるというドラマーは意外に多いので、初心者ドラマーも一度試してみると良いだろう。踏む一連の動作では(写真2→3)、脚を上から落とすように力を加えるという朝倉だが、注目はカカトが比較的高めに位置していることだ。ヒット後もつま先よりもカカトが高い状態でキープされていることが多く、このようなフォームは、ペダルと足の裏の接点に(写真4)脚の重さをピンポイントで集中させやすく、エッジの効いた力感のある音色を得やすい傾向となる。

    ※本記事は2015年3月号の連載セミナーを転載した内容となります。

    朝倉真司●音楽家、ドラマー、パーカッショニスト 。1996年にLOVE CIRCUSのメンバーとしてデビュー。その後、ヨシンバ、パーカッショングループ ”Asoviva!”のメンバーとして活動しながら、森山直太朗、一青窈、くるり、秦基博、あいみょん、Superfly、ONE OK ROCK、岸谷香、いきものがかり、レキシなどのさまざまなアーティストのライヴ/レコーディングに参加している。
    2017年9月には森山直太朗劇場公演「あの城」(本多劇場・2018年3月映像作品化)、2019年7月には20th century(V6) TWENTIETH TRIANGLE TOUR「カノトイハナサガモノラ」
    (グローブ座、北九州劇場、梅田芸術劇場・2020年3月映像作品化)にそれぞれ役者としても出演している。
    玉田豊夢●1975年生まれ。20歳の頃からサポート活動をスタート。100s、C.C.KINGのメンバーとしても活躍。これまでに中村一義、小谷美紗子、斉藤和義、レキシ、いきものがかり、Superfly、フジファブリック、ポルノグラフィティ、宮本浩次など数多くのアーティストのライヴ/レコーディングに参加。13年には自身のシグネチャー・スネアを発表した(生産完了)。

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