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TAMA Starclassic Walnut/Birch〜ドラマーの“表現”を刺激する新時代のドラム・サウンド!〜

  • Movie:Shigeki Azuma/Sound:Taro Kuroda
  • Text:Takuya Yamamoto/Photo:Takashi Yashima

来年 50 周年を迎える世界屈指のドラム・ブランド、TAMA。豊富なラインナップを誇る中でも、明確なコンセプトを打ち出し、展開しているのが、“メイン”とも言えるドラム・セット・シリーズ。リズム&ドラム・マガジン2023年10月号でフィーチャーする Starclassic Walnut/Birch は、飛躍的な進化を遂げる現代のドラマーのニーズに応えるべく、さまざまな角度から“モダン”を追求したという 1 台。ここではその全貌を探っていこう!

TAMA Starclassic Walnut/Birch meets
高浦”suzzy”充孝 with MASUO

Starclassic Walnut /Birchの全貌

2019年に登場したStarclassic Walnut/Birchを、2023年時点における最新の視点で、あらためて掘り下げてみましょう。前身に当たるのは、2007年から2018年まで販売されていた、Starclassic Performer B/Bで、ブビンガとバーチの組み合わせが、ウォルナットとバーチというシェル構成に変化しました。

また、2021年にメイプルとバーチを組み合わせた Starclassic Performerが登場したことで、ワンランク上のシリーズ、すなわち、Starclassic BubingaやStarclassic Mapleを意識させるポジションとしての位置づけであることが、より明確になりました。

Performer B/Bは、Starclassic Bubinga、Starclassic Mapleと並んで、“Made in Japan”として日本製であることを訴求していましたが、Walnut/Birchはそれがありません。2004年から生産が開始された、中国・広州にあるTAMAの自社工場の製品です。

国際的には日本製というブランドや競争力が、まだまだ残っているとは思いますが、近年の中国製品、特に高品質な製品を志向している工場においての品質の向上ぶりは、目を見張るものがあります。TAMAの中国工場も、設立から15年の時を経て得られた、ドラム・セットの生産技術の蓄積が活かされるタイミングでのWalnut/Birchの投入だったことが推察されます。この背景を踏まえ、さまざまな視点で、分析/解説を進めてまいります。

【Starclassic Walnut/Birch “Basic”Kit】

【Model No.】WBS42S-LSO
【Size】 22″×16″BD、10″× 8″TT、12″×9″TT、16″×14″FT(タム・ホルダー以外のハードウェア除く)

カタログやWEBページに掲載されているような、メーカーによるアピール・ポイントは、ねらいと特性を端的かつ好意的に表現したものとなっており、サウンドの特性を理解する上で、重要なヒントになっています。TAMAはWalnut/Birchシリーズの説明文において、タムやフロア・タムを「個性的なサウンドのシンバルやパーカッション」と同列に並べつつ、近年のプレイ・スタイルの潮流に触れ、「多彩な音使いを際立たせるため」として、「音の分離を明確にすることで、プレイヤーの表現を的確に周りに伝えることができる」と謳っています。

実際のサウンドの印象はもちろん、Starclassicのハードウェアを前提とした上で用いられた、シェル材の特性とシェルの構成には、まったく齟齬がありません。この一面だけでも、研究開発・製造・営業・広報といった部門や機能を束ねる企業としての強靭さが垣間見えており、頼もしさを感じるほどです。

【Starclassic Walnut/Birch Snare Drum】

WBSS55-LSO/14″×5.5″

また、Starclassicの使命を端的に示した一文として「ドラムの音が果たすべき現代的意義を世に問い続ける」というものがあります。ここまでの説明があればこそですが、Walnut/Birchは単に大きな音で良く鳴るタイプの楽器ではありません。もし、現在のTAMAのラインナップにおいて、純粋に優れたサウンドのドラムを求めた場合、究極のシェル鳴りを謳う、最上位機種であるSTAR Drumsシリーズを選ぶべきでしょう。

Walnut/Birchは、そういったトラディショナルなスタイルを志向せず、プロの現場での使用を前提としたドラムとしての基準を満たしつつ、現代のニーズを汲んだ最先端のスタイルに対応した、カッティング・エッジな楽器として完成されています。サイズ・バリエーションについても、特筆すべき点があります。

22″×16″、10″×8″、12″×9″、16″×14″の4ピース構成をシェル・キットとしてパッケージ化しつつも、多数の単品が用意されており、口径によっては、10″×6.5”や、13″×7.5″といった0.5インチ刻みのサイズ(深さ)さえ存在しています。世の中のドラム・セットには、1つの口径に対して、選択できる深さは1〜2つというシリーズも多い中で、この選択肢の広さは驚異的です。幅広いジャンルにファンを抱えるTAMAならではのストロング・ポイントが、しっかりと受け継がれている部分の1つでしょう。

2019年の発売からしばらく経ってはいますが、一定以上の品質を備えていながら、それなりにお手頃な価格帯でもあるため、同等クラスの楽器との違いを見落とすか、見誤るなどして、真価に気づいていなかったり、真髄に触れていない方も、まだまだいらっしゃると思われます。以上の前提をご理解いただけたところで、さらに細部に注目していきます。

続きはリズム&ドラム・マガジン2023年10月号をチェック!

YOASOBIを支える新世代のリズム・コンビ=仄雲&やまもとひかるが表紙を飾る2023年10月号。TAMA Starclassic Walnut/Birchの特集では、マカロニえんぴつのサポートを務める高浦“suzzy”充孝とドラム・チューナーのMASUOをフィーチャーし、そのサウンドの実力を徹底検証! さらにWalnut/Birchを使用するFuyuとむらたたむの愛器をインタビューと共に掲載。ドラム博士=山本拓矢によるスペック解説も必読です!