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KORG MPS-10で無限に広がる! ドラム・パフォーマンスの可能性 feat.伊吹文裕

  • Text:Isao Nishimoto Photo:Yukitaka Amemiya
  • Ibuki's Movie:Shigeki Azuma Ibuki's Recording:Tomoyuki Shikama(EDo-mae Recordings)

Ibuki’s Impression
〜伊吹文裕が語るMPS-10の可能性〜

4-4-2という配列が
ドラム・セットに組み込んだとき
とても演奏しやすいですね

●まず、MPS-10の第一印象を教えてください。
○とうとうKORGさんからも、サンプラー・ドラム・パッドが発売されたのが、まずうれしかったですね。従来のサンプラー・パッドよりもコンパクトで軽くて薄いサイズ感もいいなと思っていて。僕はけっこうスーツケースに入れて持ち運んだりすることもあるので、運搬する際にとても良さそうだなと思いました。

●4-4-2という配列で並んだ10個のパッドも大きな特徴ですよね。
○そうですよね。今のサイズ感の話にもつながるんですけど、奥行きが従来のサンプリング・パッドよりも短いので、手前のパッドを叩くときも奥のパッドを叩くときも、すごく近く感じたんです。それって、ドラム・セットに組み込んで叩くときに移動しやすいんですよ。あと、パッドが10個ある機種を叩いたのは初めてなので、やっぱり、単純にできることが広がりそうだなと思いました。

伊吹は今回、通常タムやライドが置かれる位置にMPS-10をセット。2列+CCパッドの配置は打点が遠くなりすぎず、自然なフォームでのプレイを可能に。

●内蔵されている音源の音質や、プリセット・キットについての印象はいかがでしょうか。
○従来の機種よりも圧倒的に内蔵音源の数が多くて……3000種類以上もサンプルが入ってるので、音源には困らないんじゃないかなと思いました。圧倒的ですね。操作したときに、インストゥルメントのリストが出てきんですけど、(音色のページが)どこまであるんだろう?っていう感じで、すごいです。マリンバやシロフォンのプリセットがあるのも面白いですね。

●ダイナミクス表現も豊かですよね。
○今まではダイナミクスを変えて演奏しても、わりと同じ音色がただ弱くなったり強くなったりするっていう印象だったんですけど、MPS-10だと、かなり自然なダイナミクスがつくなという印象がありましたね。使いこなせたら、もっと面白そうです。

“セーブしますか?”と
聞いてくれるのはすごくうれしい

●今回、伊吹さんに用意していただいたサンプル音源も取り込んでもらったわけですが、そのあたりの使用感や操作感に関してはいかがですか?
○今回、用意した音源にちょっとリヴァーブが足りないかなと思ったんですが、その音をアサインしたパッド1つだけに、エフェクトをかけることができたんです。僕、そういうエフェクトをかける作業が今まで得意じゃなくて、ちょっと逃げてきたんですけど(笑)、MPS-10はすごいわかりやすいところにエフェクトをかける項目があったので、僕でも直感的に、触ってすぐわかりやすかったのがうれしかったです。

●機能もかなりユーザーフレンドリーな仕様になっていますよね。その他にも、伊吹さんの中で、これはいいなと思った機能はありましたか?
○今話した、エフェクトをかけたりする編集する作業の話につながりますが、エフェクトをかけたり、パットごとのボリュームを調整したりすることが、実践で使うときによくあることなんですけど、ただずっと編集していると、だんだん訳わかんなくなってきてしまったり、自分の感覚が信じられなくなったりするときがあって。それが自動上書きされちゃって戻れなくなってしまうっていうことがあったんです。

けど、(MPS-10は)“セーブしますか?”っていうのを聞いてくれる機能があるので、ちょっといじり過ぎちゃったなとか、5分前に戻りたいなというときに、その上書きをしなければ戻れるのが良いなと思いますね。それで今まで後悔してきたことがあるので(笑)、その機能はすごくうれしいなと思いました。

あと、本体をパソコンにつないで、どこにどの音色をアサインするかを編集しているときに、パッドを叩けばそのパッドにアサインされている音を聴くことができるんです。逐一パソコンから外さなくても、ずっとつなぎっぱなしで、アサインがうまくいってるかどうかを確認することができるようになっているのは便利ですね。

キットの編集は自動上書きされず、「WRITE」(写真赤枠)を押すことで変更を確定。「WRITE」されていない場合、写真のように変更を保存するかどうか確認する画面が表示される。

小規模会場や小音で
やらなければいけないとき
1台で完結するし表現力が豊か

●伊吹さんがエレクトロニック・パッドを使う現場で、もしMPS-10を使うとしたら、どのように使いたいなと思いましたか?
○マリンバやシロフォンのようなアコースティック・パーカッションの音色がすごく綺麗だなと思って、他にもコンガやボンゴ、ウィンド・チャイム、タンバリンもあって、そういう音色もちゃんとベロシティとリンクしたり、叩く強さによってスラップになったりとか、かなりリアルなパーカッションの音が入ってたんです。直感的に触ってもそれが自然に演奏することができたので、急にパーカッションが欲しいとなった場合でも、すぐに対応できそうだなと思いました。

●では最後に、MPS-10をどういう方におすすめしたいなと思いますか?
○CCパッドなんかは、128段階のセンサーが内蔵されてて、フィルターの開き具合いが違う音色を叩き分けられるのは画期的ですよね。ルーパーも搭載していますけど、ただループさせるだけじゃなく、ループを走らせたまま、すぐ止めるのか、鳴らしっぱなしにしておくのか、1つだけ止めるのかとか、キットをまたいでも自由自在にできるようなので、1人で音楽が完結できる楽器でもあると思います。

上部に並んだCCパッド。4つで合計128ヵ所ものセンサー(1個あたり32ヵ所)が内蔵されており、打点によって異なるフィルターのかかり具合いはほぼ無段階で変化すると言っても差し支えない。

ドラム・セットを持って行けない小さな会場だったり、小音量で演奏しなきゃいけなかったりするときにも、コンパクトに持ち運んで演奏できるのにすごく表現力が豊かなので、そういった使い方をされる方には持ってこいだと思いました。

あと、これから初めてサンプラー・ドラム・パッドを手に入れる、今までこういった楽器を触ったことないっていう方なら、家に届いて触り始めたら、気づいたら朝になっちゃってるかもしれないですね。すごくいろんな機能が入ってますし、さっきも言ったように、エフェクトをかけるのもがすごく直感的にできたので、操作も、初めて触る方でもすぐ覚えやすいんじゃないかなと思いました。

Ibuki’s Recording Gear with MPS-10

伊吹が今回のデモ演奏で使用したのはクォーツ・グレーのYamaha Recording Customを核とした2種類のセッティング。「Super Inspiration」のデモ演奏ではバス・ドラムとフロア・タムの間にPearl e/MERGEのキック・パッドをセット。3本のショート・ソロではMPS-10のパッドにバス・ドラム音色を割り当て演奏してもらった。

●「Super Inspiration」Demonstration

●「MPS-10 Performance #1~3」

タムはスタンドを使用し、かなりシンバル寄りにセット。それにより大きく空いたスペースにMPS-10を配置し、パッド・メインのセッティングとなっている。バス・ドラムは中に布を詰めている他、打面にもミュートを施し、デッドな仕上がりに。

シンバルはパイステの17″ Signature Dark Energy Crashをハイハットとして使用。さらにセイビアンの20″ HHX Legacy O-Zone Ride(奏者左)とマイネルの22″ Foundry Reserve Ride(右)という、大口径をセレクト。上側のフェルトはつけずに、シンバルの鳴りを生かしている。

メイン・スネアはパールのカスタム・クラシック・レジェンド(14″×5″)、サイドにメイプルのピッコロ(13″×3″)をセット。どちらもガムテープや財布で強めにミュートしていた。

いぶきふみひろ●10歳からドラムを始め、大学在学中にプロとしてのキャリアをスタート。自身のバンド、LAGHEADS、メガネブラザース、OOPS! PIG PALE ALE INC.での活動の他、近年では、あいみょん、大貫妙子、kiki vivi lily、KIRINJI、ずっと真夜中でいいのに。、中村佳穂、挾間美帆、秦 基博、ハナレグミ、星野 源など数々のライヴ/レコーディングに参加。2020年6月にはリーダー・アルバム「CHUBBY CHASER」も発表するなど、ソロとしての活動も展開している。