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KORG MPS-10で無限に広がる! ドラム・パフォーマンスの可能性 feat.伊吹文裕

  • Text:Isao Nishimoto Photo:Yukitaka Amemiya
  • Ibuki's Movie:Shigeki Azuma Ibuki's Recording:Tomoyuki Shikama(EDo-mae Recordings)

高品質な打楽器群サンプル音源と、パールe/MERGEの共同開発で得られた知見が詰め込まれたKORGのハイエンド・サンプラー・ドラム・パッド=MPS-10。ドラム・パフォーマンスのさらなる進化を期待させる本機を、あいみょんやずっと真夜中でいいのに。など数々のアーティストから引っ張りだこの売れっ子、伊吹文裕が検証! サンプリング・パッドが必要不可欠な現場を数多く経験する彼が感じたMPS-10の実力とは?

Introduction〜MPS-10とは?〜

コンパクトな筐体に複数のパッドを備えた電子パーカッション、通称“サンプリング・パッド”は、今や多くのドラマー/パーカッショニストが使用するアイテムの1つ。定番と言える機種も存在する中で発売されたKORG MPS-10は、このカテゴリーが新たな進化の段階に入ったと感じさせる魅力的な製品である。

電子打楽器開発のノウハウが結集

KORGと打楽器の関わりは長く深い。1994年に最初のモデルが発売されたWAVEDRUMは、さまざまな奏法に対して自然かつダイナミックに反応するサウンドを創出し、数多くのプレイヤーから絶賛された。

その技術は現行製品のWAVEDRUM Global Editionに継承され、共同開発で名を連ねたPearl e/MERGEにも活かされている。MPS-10は、そんなWAVEDRUMやe/MERGEのデザイン・チームによって開発された。その事実だけでも、同機のポテンシャルの高さに期待が膨らむ。

まず、10個のパッドが上から4-4-2個とレイアウトされたデザインが目新しい。

フルサイズのパッドは6個なので、一見してコンパクトな印象だが、実際は同種の製品より少し幅が広く、奥行きが短くなっている。ドラム・セットに組み込む場合、セッティングによってはより配置しやすいと思われる。

パッドの素材には、耐久性と演奏性を追求した高品質のラバーを採用。プロの奏者も開発に関わったというその打感は、ぜひ楽器店などで確かめてみてほしい。また、上列に並んだ細長い4個のパッドはCC(コンティニュエンス・コントロール)パッドとしても使用可能。MPS-10の大きな特徴であるこの機能については後述する。

プレイヤーを触発する表情豊かなサウンド

MPS-10は、3,000以上の高品位なサンプルによる2,350ものインストゥルメントを搭載。それらを10個のパッドに割り当てた組み合わせをキットと呼び、100種類のプリセット・キットが用意されている。

その内容は、ダンス・ミュージック向けのドラム・セット音色から、エレクトリックなリズム・トラックに活用できるサウンド、コンガやボンゴなどの定番パーカッション、スティール・パンやハンド・パンといった音階のある打楽器、イマジネーション豊かなサウンド・エフェクトやループ・フレーズなど、実に多彩。

そのすべてが、ただ叩いて鳴るだけのものでなく、スティック・コントロールに合わせて表情豊かに変化する。良い楽器を演奏しているときに感じる、出音に触発されてフレーズが湧き出してくるような感覚を味わえるだろう。

それぞれの音色は、シンセサイザーなさがらの緻密なエディットが可能。77種類のエフェクトも搭載され、音作りの幅はとても広い。最大同時発音数は48で、現行製品の中では頭一つ抜け出したスペックだ。

スムース・サウンド・トランジションと呼ばれる技術により、演奏中にキットを切り替えたときの音切れはなく、余韻の長い音色やロング・フレーズもそのまま鳴り続ける。以前の電子パーカッションではなかなか実現できていなかったこうした部分も、これからはスタンダードになっていくと思われる。

サンプラー機能も充実しており、サンプルをインポートして鳴らせるのはもちろん、本体でのサンプリングも行える。一度で最大60分のサンプリングが可能で、長尺のフレーズも余裕で対応。

サンプルの編集/加工も、カラー表示のディスプレイを見ながらスムーズに行うことができる。このあたりの洗練された操作感は、電子楽器メーカーとして長年積み重ねてきたノウハウの賜物と言えよう。

演奏表現の幅を広げる機能の数々

MPS-10を大きく特徴付けるのが、ルーパー機能の搭載である。これは文字通り、演奏した音をループ(繰り返し再生)させる機能。ループさせた音に合わせて演奏を重ねることで、例えば1人パーカッション・アンサンブルのようなパフォーマンスを簡単に行える。

先ほど紹介したデモ動画の0:28〜1:06〜でその実例が観られるので参照してほしい。MPS-10では、このルーパーを4トラック仕様で用意。多重演奏は1つのトラックだけでも行えるが、複数のトラックを使うことでループの長さを変えた演奏を重ねたり、ループ再生/停止をトラックごとに切り替えるなど、よりフレキシブルに活用できる。

もう1つの大きな特徴が、CC(コンティニュエンス・コントロール)パッドだ。上列にある細長い4個のパッドの打撃位置を128段階で検出し、演奏しながらエフェクトのパラメーターをコントロールできる機能である。デモ動画の1:44〜では、CCパッドでフィルターを開閉しながらハンド・パンの音色を演奏。上のパッドでも音を鳴らしながら、エフェクターのツマミを回しているように明るい音からこもった音へ変化し、また戻っていくのが聴き取れるだろう。2:25〜ではトランスポーズを切り替えながら竹琴のような音色を演奏している。

このように、MPS-10はパーカッション・パッドとしての基本性能を充実させる一方で、よりパフォーマンス性に重きを置いて設計されていることがわかる。実際に演奏することで、そのポテンシャルを最大限に発揮できる“楽器”なのである。単体でも驚くほどバラエティに富んだ表現が可能だが、ドラム・セットと組み合わせると、その幅はさらに広がるに違いない。

アコースティックのドラム・セットに組み込むだけでなく、Pearl e/MERGEのような電子ドラムとMPS-10を組み合わせると、ルーパーやサンプラー機能などを駆使した新しい使い方も生まれてきそうだ。MPS-10が、“いろいろな音を鳴らせる便利なツール”を超えた製品として多くのミュージシャンに活用されていくことを楽しみにしたい。

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