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    【Interview】山葵[和楽器バンド]『ボカロ三昧2』リリース・インタビュー

    • Photo:KEIKO TANABE(Live)

    自分の限界を超えた曲に挑戦して
    呼吸法や奏法を
    あらためて見直すきっかけになりました

    和楽器バンドが8年ぶりとなるボカロ・カヴァー集『ボカロ三昧2』をリリース! 2014年、ニコニコ動画界隈で活躍していた凄腕プレイヤー達が集結し、鮮烈なデビューを飾った『ボカロ三昧』に続く、珠玉のアレンジとテクニックは今作でも健在。ドラマガWebでは自身の叩いてみたをプレイ解説するブログを絶賛執筆中の山葵に、今回のドラム的ポイントを聞いてみた。

    山葵が叩いて解説するブログ『MUSCLE WASA-BEAT!!』はこちら!

    8年前に好きになってくれた人にも
    最近のボカロが好きな人にも
    刺さるような選曲を心がけた

    ●前回作に引き続き、今回の『ボカロ三昧2』もグレイテスト・ヒッツ的な内容になっていますが、最近の曲は本当にここ1〜2年のかなり記憶に新しい曲で、一方で2010年付近のレジェンド級の名曲もカヴァーされてますね。選曲はどういうふうに進めていったのですか?

    山葵 そこは町屋さん(g、vo)が僕達の意向をうまくまとめてくれましたね。たくさん曲をピックアップして、その中でどれがいいかとか、その中に入ってないけどこれがいいんじゃないかとか、そういう感じで決めていきました。やっぱり僕達は8年前にボカロのカヴァーから始まって、その頃に聴いて好きになってくれたファンも多いので、そういった方達に対しても、ちゃんと胸に刺さるような、かつ最近のボカロを好きな人達にも届けたいなっていう思いもあって、そこはいろんな思いを汲んでまんべんなく選曲した感じですね。

    ●ちなみに、山葵さんが推した曲は入っていますか?

    山葵 「天ノ弱」と「いーあるふぁんくらぶ」ですね。僕はわりと昔の曲を入れてほしい派だったので。8年前にボカロや僕らのことを知ってくれた人も、例えば高校生や大学生だったら、今もう結婚して子供がいる人がいてもおかしくないじゃないですか。生活のステージがみんな変わって、そのときの人達が今のボカロも聴いているとは限らないので、その頃から好きでいてくれる人達にも楽しんでもらいたいなと思う部分がちょっと強くて、往年の曲を入れたいなと思ってました。

    ●山葵さんご自身は最近のボカロはいかがですか?

    山葵 常に追いかけてるって感じじゃないんですけど、「エゴロック」とか「フォニイ」とかは聴いたことがありました。あとはDECO*27さんとか、ボカロPとして昔からずっと活躍されてる方なので、このタイミングで「キメラ」は初めて聴いたけど、相変わらずカッコいいなと思いましたね。

    ●やっぱり昔との違いや変化も感じました?

    山葵 難しい曲、凝ってる曲が増えてる印象はありますね。いろんな技とかそういうのが増えてきたなと思います。ある意味ボカロって、シンガーが限られてるじゃないですか。だから声での変化って幅が限られているんですけど、それに対して作曲家たちはもっと何百何千といるわけじゃないですか。そうなってくると作曲者の腕の見せ所というか、技術はここ数年間で、どんどん洗練されていってるなという印象はありますね。

    ●3分くらいの曲もすごい多くなりましたよね。

    山葵 そうなんですよ。それもTikTokとかショート動画とか、SNSの影響ですよね。とにかくおいしいところをぱっと出して、潔く早い段階で終わっちゃうみたいな。3分弱がもう当たり前ですよね。

    ●今回のアルバムでも3分前後の曲がほとんどですよね。

    山葵 最近の曲はほぼ3分……はみ出しても3分強で、僕が中学生や高校生の頃に聴いていた音楽と比べると衝撃的な時代の流れなのかなって思ってますね。

    ●人が歌えないような早口を実現できることもあって、すごく速い曲もありますよね。先日ブログで解説してもらった「エゴロック」もまさに……。

    山葵 もう嵐のように始まって終わるみたいな(笑)。今回レコーディングしてみて、「エゴロック」は自分の限界値を超えた感じがしました。体感よりもテンポがもっと早いんですよ。今はさすがに多少慣れてきましたけど、“このくらいのテンポかな”と思って叩き始めたら、「はやっ!いやいやちょっと!」っていう(笑)。4つ打ちでウラ打ちのリズムでこのテンポを今まで想定したことなかったので、これはやり方を変えないと叩けないなって、ブログでも書きましたけど、だいぶ力を限界まで抜くことは意識しましたね。

    ●ではあのブログで書いていた呼吸法や奏法は「エゴロック」が大きなきっかけだったんですか?

    山葵 「エゴロック」に挑戦したのが大きいですね。「フォニイ」くらいの速さだったら程良くリラックスするくらいでいけるんですけど、「エゴロック」は逆に抜き切らないとヤバいです。その状態でやらないとすぐ腕がパンパンになっちゃうんです。常に力は抜いている状態なので、アクセントは呼吸をしたときの反射をうまく使うというか。

    ●そういった筋トレだけじゃない、身体の使い方や筋肉に向ける意識みたいなものは、ご自身ではいつ頃から芽生えてきたと思いますか?

    山葵 筋トレを24〜5歳のときにちゃんとやるようになって、クライミングとかボルダリングとか、スポーツの方も趣味で結構やるようになって、身体の使い方がどれだけ大事かというのをいろいろ感じるようになってきたんです。合気道もやってみたりして、筋肉だけじゃなく骨格の使い方だったり、呼吸法というものも、身体をコントロールする上で大事なんだなというのは感じたりして。その頃から少しずつ知識と経験が増えていって、その都度ちょっとずつアップデートしてきた感じですね。筋トレしかしていないときは“力こそパワー”くらいな時期もあったけど(笑)、でもいろいろ経ていくと、それだけじゃないんだなって。ちゃんと骨格に対して、力の流れがあって、それを利用することでもっと効果的に動かすことができるんだなとか。

    また別の話になりますけど、パワーで音を出すと、力任せだと音は汚いとか思っていた時期があったんですけど、今となってはどっちが良い悪いじゃなくて、使い分けだなと思うようになりましたね。フルパワーで叩く音もあっていいけど、柔らかかったり、軽い音も使い分けるような演奏ができた方が幅って絶対に広がるじゃないですか。だから1つのことが良い悪いとかそういう単純なことではなくて、いろいろ経験した上で思うようになったって感じですね。

    Next▶︎山葵が語る『ボカロ三昧2』の“ドラム的ポイント”