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【Report】“世界一音数の多い場所”で新年の幕開けを告げた千里ちゃん祭り〜最終日「川口千里トリプルドラム」〜(d:川口千里/坂東 慧/今井義頼)

  • 撮影:梛野浩昭(ライヴ)

後半戦一発目は
20分超のドラム・オンリー・ナンバー
“世界一音数の多い”濃密空間

後半ではオケを使わず3人のドラム・オンリーで展開していく、師匠・菅沼孝三氏の楽曲を披露。原曲は孝三氏がダビングを重ねて録音したそうだが、何と言ってもこの日は3人もドラマーが集まっているということで、すべて人力で再現。そこから発展し三者三様の超ロング・ソロ、そして道場の練習メニューとしてよく叩いていたというルーディメンツ風のパフォーマンスにつながっていき、休憩明けにいきなり20分強の演奏をやってのけた。

さらにその後は今井が作曲した楽曲や、川口の1st作『A LA MODE』に収録された水野正敏作曲の難解曲(15/16拍子)「NOT ENOUGH~DESSERT IN THE DESERT」などを披露。本編最後には坂東が手がけた誌上ドラム・コンテスト2021課題曲「Trial Road」を3人で演奏するという超スペシャルなパフォーマンスが繰り広げられた。

アンコールは“川口千里の代名詞”と本人も語る「Onyx」。4日間を締め括る最後の楽曲なだけに、まさに“叩きまくり”、“詰め込みまくり”の演奏は、“限られた時間で少しでも多く”という気概なのではないかというほど、彼女らしい、圧巻のステージ。これほどまでにドラムの音を浴びたことがないくらいに会場を音数で支配し、2023年の『千里ちゃん祭り』最終日は興奮のまま幕を閉じた。トリプル・ドラムという特別な状況に終始感慨深げだった川口。中でも「世界一“音数”の多い場所」という言葉がとても印象に残っており、まさにこの日を象徴する表現だったと思う。

MC中には「次はもう1人呼びたいね(笑)」と冗談とも本気ともとれる展望を語っていた3人。あながち夢では終わらなさそうだと思いつつ、そんなスペシャル・ステージを心待ちにしたい。

川口、坂東、今井のこの日の使用機材はこちら!

川口の長年の相棒であり最早トレードマーク、そして絶大な信頼を寄せるYamaha PHX。1バス、3タム、2フロア・タムという、普段通りのセッティング。シンバルもほぼいつも通りのラインナップだが、最近はEFXを好んで使用しているそうだ。奏者右手のチャイナは「演奏中に今井さんと目が合わないように(笑)」と、いつもより若干高さを下げたらしい。スネアはレコーディングカスタムのステンレス・スティール。メインに14″×5.5″を使用し、サイドは14″×7″の深胴をロー・ピッチ仕様にしていた。

この日最もトリッキーな印象を受けた坂東の機材。“坂東バッヂ”のレコーディングカスタムは、3タムが12″→8″→10″という並びになっていた。小学生くらいの頃に聴いていたT-SQUAREの則竹裕之のセッティングを模倣したものだそうで、「この並びでしかできないフレーズもあるんですよ」と本人談。さらに左側に14″フロア、右側にゴング・バスを設置。シンバルはフロントに大口径のクラッシュを配置。さらに“ライド・レス”となっている他、小口径のエフェクトは観客側に角度をつけてセットしていた。スネアはセンシティヴ・コンセプトの14″×5.5″。

CASIOPEA-P4でも活躍する今井の愛器はYamaha Live Custom Hybrid Oak。DTXパッドを取り入れたハイブリッド・セッティングで、椅子を高めにセットし、縦方向に伸びたスマートな組み上げ方は、今井も敬愛を公言している神保 彰を彷彿とさせる。シンバルも神保がプロデュースしたKカスタム・ハイブリッド・シリーズを核とし、エフェクト系はFXやAカスタムEFXをセレクト。スネアは3台体制で、メインはレコーディング・カスタムのステンレス・スティール(14″×5.5″/RLS1455)、サイドには武蔵が2台(12″×6″、10″×4.75″/オーク・シェル)。10″モデルはティンバレスのような飛び道具として使用していた。