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Interview – 松田晋二[THE BACK HORN]

  • Interview:Rhythm & Drums Magazine Photo:Azusa Takada

目立つドラムを叩くよりも目立つ曲にしたい
メンバーが作ってきた曲を
自分の感性でさらにカッコ良くしたい
結果的にはそういう思いが
自分のドラムを磨くモチベーションにつながる

聴く人を鼓舞する独自のバンド・サウンドで人気を集め、結成から20年の節目を超えて活動を続けるTHE BACK HORN。コロナ禍や、ヴォーカル=山田将司の喉の不調など、近年降りかかったさまざまな出来事を乗り越えた彼らが、2年半ぶりとなるアルバム『アントロギア』をリリースした。ここでは、バンドのリーダーであり、リズムの核を担うドラムの松田晋二にロング・インタビューを実施。新作でのドラム・アプローチを細部に渡って深掘りし、その根底にあるドラマーとしての意識に迫った。

“みなさんに生かされているな”と
バンドをやれている幸せを噛み締めていた

●バンド結成20周年の節目を越えて、前作『カルぺ・ディエム』のリリース、コロナ禍におけるツアーの延期や無観客配信ライヴへの挑戦など、ここ数年であらゆる出来事や変化があったことと思います。近年はどのような意識で活動に向き合ってきたのでしょうか?

松田 前作を引っ提げてのツアーは、バンド結成20周年の節目を迎えられたことへの感謝とこれから先に向かう新たな始まりとして、大事なツアーと考えていました。先延ばしになったとしても、まずはそのツアーを完走したいという想いは持ち続けていましたが、なかなかそれも実現できる見込みが立たない中で、とにかく音楽を届けられる方法を模索する日々が続きました。

New Album『アントロギア』
ビクター VICL-65669

同時に、山田の喉の手術の経過もあったので、2020年前半は状況を見つつ、いつでも動ける体制だけは整えておこうと個人練習に時間を費やしていました。その中で山田発信で出来上がった楽曲「瑠璃色のキャンバス」の配信リリースや、無観客の配信ライヴ、年末のマニアックヘブンではお客さんも交えることができたりと少しずつ活動できる可能性が見つかったことで、自分自身も音楽とまた向き合える喜びを感じていきました。

2021年にはストリングス・ツアーやマニアックヘブンのツアーも計画していたので、どのタイミングだったらどんなライヴができるか、日に日に変わる状況の中でメンバーやスタッフと協議をしながら判断をしていかなければならない難しい部分もありましたが、やれる環境であればどんな形でもライヴを行っていこうとメンバー、スタッフ共々、共有できていたので、それがとても心強く感じていました。

結果的に2021年に行えた3本のツアーは、自分達にとってもすごく貴重な経験となり、そして、そこで感じたさまざまな想いが今作の『アントロギア』にも深く結びついているなと思っています。

●久しぶりにお客さんの前でライヴをできたときの感触はいかがでしたか?

松田 お客さんの前で久しぶりに演奏できる喜びというのは、言葉にできないものがありました。そして、まだコロナ禍にも関わらず足を運んでくれたみなさんと共有した時間は本当にかけがえのない大切なものであり、とても感動的なものでした。

声も出せずマスクをしながらディスタンスを保ったままでのライヴではありましたが、拍手の長さやマスク越しに溢れてくるみなさんの想いを感じることができて、あらためて“みなさんに生かされているな”とバンドをやれている幸せを噛み締めていました。行動が制限されているライヴだからこそ感じられるみなさんの想いがあり、もちろん今までのような心から楽しめる状態に戻ってほしいですが、このときしか味わうことのできない大事な経験をさせてもらったと思っています。

●素敵なお話ですね。山田さんの喉の治療を経て、バンドでの演奏については、どのような意識の変化がありましたか?

松田 とにかく歌いやすいタイトな演奏を目指すのは変わりないのですが、ドラム・プレイやバンドの演奏の熱量を損わないように、激しさとタイトさのバランスを目指していくというのをテーマにしています。今までは、4人一塊で転がりながらも絡み合いながら演奏していくのがバンドらしさと捉えていましたが、やはり歌があっての音楽でありバンドなので、歌の熱量だけに頼らずに、支えるところ、楽器陣で後ろから押し上げるところ、イキきるところなど、楽曲によってもアプローチをより明確に考えていきたいですね。

その前から同期や打ち込みが入った楽曲も増えていて、サウンド・アプローチ的にも歌をバックアップできる要素が増えてきたので、歌を生かしつつ、バンド・サウンドのアグレッシヴさと、サウンド的な迫力を追求していけたらと思っています。

●そして、2年半ぶりのリリースとなったアルバム『アントロギア』ですが、THE BACK HORNの根幹となる音楽性を維持しつつ、新たな側面やサウンドの進化を感じる作品に仕上がっています。制作は、いつ頃から始めたのですか?

松田 2021年のストリングス・ツアーが終わった6月頃からです。今までと同じく今作もメンバーそれぞれが作詞/作曲する形で制作に入りましたが、最初の段階でまずアルバム全体の方向性と、各楽曲の大まかな曲順や、曲調、テンポ感などをメンバーで話し、作詞と作曲の割り振りも決めてから進めていきました。

歌詞の部分ではコロナ禍で感じた想いや表現したいメッセージを軸にしつつ、細かいテーマは設けずに作詞するメンバーそれぞれに委ねて、楽曲に関しては、アルバムを聴いてくれるみなさんとライヴで共有できるような、熱量の高いサウンドを目指す方向で進めていきました。結果、今しか作れない新鮮な楽曲や、近年取り入れてきているバンド以外の音色も含め、ジャンルとしても幅広く、ヌケのいい楽曲が集まったアルバムに仕上がったと思っています。

▲THE BACK HORN『アントロギア』公式トレーラー

●松田さん個人としては、何か今作で意識されたテーマなどはありましたか? 

松田 作曲者であるそれぞれのメンバーのリズム・アプローチが楽曲の骨格を担う大事な要素だと捉えていたので、大幅なアレンジの変更はせずに、基本はデモのアプローチをなるべく受け継ぐ形で、場面ごとやフィルのフレーズなど、自分なりの解釈や感性を提案してアレンジしていきました。初期はわりとみんなで集まって一から曲を作っていくことも多かったので、自ずとコード感とリズムから曲作りが始まることが多く、ドラム・アプローチも独特なものが生まれたり、それぞれのプレイが絡み合う中で曲が生まれていく楽しさがあり、それも自分達の音楽の魅力の一つだと感じています。

近年は作曲者の作ったリズムに自分のアプローチを加えて完成させるというドラム・アレンジの楽しさを実感しているので、より曲にとって良いアレンジの追求と、レコーディング時のドラム・サウンドを作る世界観と音色作りの追求が今作のテーマだと感じていました。

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