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パンテラ来日記念! オリジナル・ドラマー、ヴィニー・ポールの初インタビュー公開!!【Archive Interview②】

スタジオで作ったというサウンドは避けて
まるでガレージで録音したような雰囲気で
パンテラの持ち味を伝えたかったんだ

●どんなドラマーに影響を受けた?
ヴィニー トミー・アルドリッジとジョン・ボーナムの他には、アレックス・ヴァン・ヘイレンとキング・ダイアモンドにいたミッキー・ディーとか。ミッキーはドン・ドッケンのソロ・アルバムでもプレイしているけど、キング・ダイアモンドでのプレイが最高だったね。彼はロック・ドラマーとしては珍しくルーディメンタルなドラマーでそこが気に入ってたんだ。

パンテラで叩いているときは、どの程度ルーディメンツを活用していますか?
ヴィニー パラディドル、ダブル・パラディドル、ラタマキューといったダブル・ストロークが入ったルーディメンツは自然にライド・シンバルやスネアのコンビネーションで活用しているし、バス・ドラムでもラフをプレイしたりしているから、結果的にけっこうルーディメンツを取り入れていることになるね。今まで練習してきて良かったと思ってるよ。この次のレコーディングにも、新しいアイディアを得るために、また昔の教則本を引っ張り出してみようと思ってるんだ。

●スティーヴ・ガッドやデイヴ・ウェックルのようなルーディメンタルなフュージョン・ドラマーをどう思う?
ヴィニー スティーヴ・ガッドとビリー・コブハムはわりとよく聴いたけど、その他のドラマーに関してはあんまり関心は持てなかったなあ。

●ジャズやフュージョンなどには興味はない?
ヴィニー フュージョンはわりと好きだったけど、ジャズはあまりにも通好みっていう感じがしてね。各メンバーがソロばかりやっているから、ミュージシャンが聴けば面白いのかもしれないけど、普通の人が聴くにはちょっとしんどいんじゃないかと思うんだよね。

●新曲を作るとき、どうやってドラム・パターンを決めていくの?
ヴィニー 基本的にはメイン・リフをダレルが作って、それを弾いてもらってそのリフに合ったドラム・パートを考えていくんだ。こと俺たちに関して言えば、メンバーのひとりが曲を全部作ってしまうことはまずないね。必ず何人かで一緒に音を出しながら曲を作っていくんだよ。そしてある程度曲ができた時点で、ヴォーカルのフィリップにそれを聴かせて、強調したい部分や歌詞に合わせたい部分なんかを調整していくわけ。

●作曲している段階で、すでに曲の完成型が見えていることが多い?
ヴィニー そうだね。各パートを全部一緒に録音したときにどういう雰囲気になるかある程度頭の中に描いて作曲しているよ。ドラムに限って言えば、俺はパワー・ドラムにこだわっているから、少し繊細なプレイが要求されるところでもなるべくパワーが損なわれないように心がけてるんだ。細かいテクニカルなフレーズの方がカッコ良く決まる場合でも、各パートをミックスしちゃうとそれがちゃんと聞こえなかったりすることが多いんだ。だからパワーを伝えるためにはフレーズをシンプルにしなくちゃならないこともあるよ。

●バンドでプレイしているとき、どのパートの音を聴くようにしている?
ヴィニー 俺の場合、ギターだね。パンテラみたいなパワー・メタル・バンドのサウンドの中心はあくまでもギター・リフとドラムになる。だからライヴではギターがよく聴こえるようにモニターしてるんだ。まあベースの音も聴いてるんだけど、キメなんかではやっぱりギターの音を頼りにしている。というのも、ギターから得られるエネルギーに触発されて、ドラムのプレイに一層ドライヴ感を与えることができるからなんだ。

●今回のアルバムでのドラム・サウンドは、とてもドライなトーンになっていると感じたんだけど。
ヴィニー 俺は普通とはちょっと違うドラム・サウンドを追求しているんだよ。アタック音と高域を強調し、ギターとのコンビネーションを考慮してツブのはっきりしたサウンドにしようと心がけている。今回は、リヴァーブを使ったとしてもほんのちょっと余韻を与える程度だったから、確かに前作よりもドライな仕上がりになっていると思うよ。今回は、特にラフでライヴなサウンドを目指したんだ。いかにもスタジオで作ったというサウンドは避けて、まるでガレージで録音したような雰囲気で、パンテラの持ち味を伝えたかったんだ。

●君はエレクトリック・ドラムも使っているようだけど、この手のドラマーとしてはめずらしいよね?
ヴィニー そうだね。エレクトリック・ドラムは特殊効果を得るために使って、プレイに幅を持たせるようにしているんだ。それにライヴだと、例えばリム・ショットをやっても他の音にかき消されてしまうことがあるんだけど、パッドを使えばそういうことはなくなる。あと「サイコ・ ホリデイズ」の前にマシンガンの音を鳴らしたりできるしね。これは他のメンバーにも大好評なんだ。それから「ディス・ラヴ」のイントロの効果音やドラムやシンバル以外の音もパッドを使って簡単に出せるから、とにかくいろんなことができるし、なかなか便利だよ。

●チューニングのやり方を教えてもらえる?
ヴィニー う~ん、締めすぎず、緩めすぎずってとこかな。俺はスティックの反対側(グリップ・エンド側)で叩いているから、毎日ヘッドを交換しなければならないんだ。上下のヘッドの張り方はほとんど同じだけど、場合によってはボトムの方を若干きつく締めることもあるな。

●君が思う良いドラマーの条件って何?
ヴィニー いいタイム・キーパーで、自分のためではなく曲にふさわしいドラミングに徹しているドラマーかな。あと、無意味にフィルインを入れないで、ギターやベースのラインを考慮したプレイをするドラマーだね。俺もそうありたいと思っているよ。

●最後に伸び悩んでいるドラマーたちにいいアドバイスをしてくれない?
ヴィニー とにかく練習し続けるしかないだろうね。だけど練習した分だけどんどん上達する時期もあれば、いくら練習してもこれ以上はもう無理なんじゃないかと感じることもある。こういうことって誰でも経験することなんだ。だからそんなことは気にしないで練習を積み重ねていくこと。そうすればいつの間にか何とかなってるものさ。そうやってひとつずつ壁をクリアしていけばいいんだ。一番大切なことは、あきらめないで続けること。そうすれば道は開けるよ。