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【Report】神田リョウ「神田式 一生使えるグルーヴのレシピ」出版記念イベント@神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校

  • レポート:西本 勲
  • 写真提供:神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校

神田本制作秘話、実演を交えたレクチャー
Q&Aにサイン会&撮影会
充実の神田リョウ“凱旋”出版記念イベント

神田リョウ初となる著書「神田式 一生使えるグルーヴのレシピ」。通称“神田本”で親しまれている本書の出版記念イベントが、1月29日(日)に神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校で開催された。トークに演奏にQ&Aにサイン会に撮影会に……ここでは、盛りだくさんの内容だった同イベントの模様をお届けしよう!

昨年9月に初の著書「神田式 一生使えるグルーヴのレシピ」を発売した神田リョウが、自身の出身校である神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校で1/29(日)に出版記念イベントを行った。

「神田式 一生使えるグルーヴのレシピ」(以下「神田本」)は、本誌で2016年~2020年に連載されたYouTube連動セミナー「#月イチ1グルーヴ」を1冊にまとめたもの。

今回のイベントは、「神田本」の企画担当者を交えたトークと、本の内容を実演してみせるセミナー・パート、参加者からの質問に答えるQ&Aの三本柱で進められた。

イベントの冒頭は、挨拶代わりに約3分のドラム・ソロをプレイ。「#月イチ1グルーヴ」のYouTube動画でジングルとして使われているお馴染みのフレーズも飛び出し、最高の“つかみ”でスタートした。

トーク・コーナーでは、連載から「神田本」出版に至るまでのさまざまなエピソードを披露。スタッフも巻き込んでセッション的に行われたという動画撮影の舞台裏など、興味深い話題がどんどん飛び出した。

さらにその流れで、「神田本」にも掲載している連載第1回「シン・4つ打ち」を実演することに。やはり動画で観るのと、目の前で実際の演奏を体感するのでは説得力がまるで違う。

ここで印象的だったのは、神田が話したこんな言葉だった。

「ドラム上手くなりたいけど、何をやったらいいかわからなくて1人で悩むことってあるじゃないですか。そういうときにお勧めしたいのが、好きなドラマー、憧れのドラマーのフレーズを、ニュアンスごとコピーすること。チューニングとか、呼吸のタイミングとか、リズムのちょっとしたヨレまで完コピすると、きっと何かのヒントになるはず。この本に載っているフレーズも、そんなふうに活用してもらえたらいいなと思ってます」

また、「一生使える~」という本のタイトルに関連してこんな話も。

「これ無茶やで!というフレーズも載っていますが、できなくてもあまり気にせず、ゆるやかに取り組んでもらえたらうれしいです。パッと開いて、“今日はここ練習してみよう”みたいな。そして、一通りいろんなことができるようになってからも、ここに立ち帰ってみると、また違った味わいが出てくると思います」

続いて、連載時にはなかった『神田本』のオリジナル・コンテンツの1つ、難度高めのエクササイズを15個集めた「#おかわり1グルーヴ」を紹介。「僕が甲陽にいたときに一番嫌だった基礎練習ベスト15が並んでます(笑)」という中から、クリックに合わせて両手両足を同時打ちするエクササイズを実演した。

「僕の中で、嫌な練習=効く練習なんです。楽しい練習って、筋トレ的な意味ではほぼほぼ効かない。なるべくしんどいメニューを集めてみたので、ぜひやってみてほしいです。単体の楽器の集合体であるドラム・セットを、身体のバランスも含めていかにいい音で鳴らすかという部分に最も効くエクササイズになっています」

イベント終盤はQ&Aコーナー。次々に質問の手が挙がり、神田はその一つ一つに丁寧に答えていった。以下、少し長くなるが抜粋しよう。

Q:ライヴごとにいろいろ違うドラムのセッティングをどう組み立てていますか?

「凝り性だけど飽きっぽいので、セッティングはよく変えています。楽器選びの基準は、アーティストや楽曲の雰囲気にフィットしているかどうか。シンバルだったら、キラーンとした感じなのか、シュワン、クシャッとした感じなのか。メーカーのシリーズごとのイメージを参考に選んでみるのもいいと思います」

Q:ずっとジャズをやっているのですが、ポップスを叩くときに意識すべきことは?

「ポップスで重要なのは“わかりやすさ”。ジャズに例えて言うと、ポップスはコンボではなくビッグ・バンドのアプローチに近い。大所帯のバンドがまとまりやすいように、基本となるリズムにフォーカスした演奏を。音作りも、ややドシっとした感じで」

Q:楽器のポテンシャルを出し切る叩き方とは?

「まず、楽器の最大値を叩き出すことが、音楽的な意味で必ずしも良い音に聴こえない場合もあります。それを前提とした上でフィジカル的なコツを話すとしたら、タムの場合は裏のヘッドをいかに振動させて、それを打面に向けて引き上げるイメージで叩いています。バス・ドラムは、ペダルを上から下に踏むのではなく、前に蹴り出すイメージ。スネアは、いかにシェルを振動させるかを意識して、鳴ってから音が消えるまでをイメージしながら、ストロークを逃すことを大事にしています」

Q:フィルインの作り方を教えてください。

「一番意識するのはメロディ。メロディの形に近いフレーズほどハマりやすいですが、曲のどの部分に入るかによっても違って、メロディから離れた形の方がいいこともあるし、無難なフレーズがいいこともあります。技術的なところで言うと、コアとなるリズムの隙間を手で埋めている音符があったら、それを足でやってみるとバリエーションが広がります」

Q:今まで、この人と演奏して一番面白かったとか、たくさんのものを引き出してもらえたと感じた演奏があれば教えてください。

「いつも、やって良かったと思う現場しかありませんが、最近だとclaquepot(クラックポット)は同い年でつき合いも長く、飽きっぽい僕の変化を一緒に楽しんでくれます。あとはやっぱり、復活ライヴから参加するようになったMrs. GREEN APPLE。僕がサポート・ドラマーとして参加するときに一番大事だと思っている“そのアーティストにフィットした演奏をする”という意味で、めちゃくちゃ難しかったです。彼らはずっとバンドでやってきて、サポート・メンバーと一緒に演奏することに慣れているアーティストと違うので、どこにもレシピが存在していないものを分析しながら“なんかちょっと味が違うな”というところをクリアして、そこからブラッシュアップしていきました。その作業にみんなで向き合えたのは大きな経験でした」

Q:ドラムを演奏するとき、他人が叩いたものを真似て正解を探すクセがついていて、自分なりの方向を探すのが怖いです。直した方がいいとは思いますが、正解を目指すことは間違いなのでしょうか。

「そのままで大丈夫。正解は常に探し続けてください。音楽において、真似をして損をすることはありません。自分の個性は、その先に滲み出てくるもので、今の段階でそれをどうやって出そうかとあまり探らない方がいい。たくさんコピーしまくって、世の中で言う“正解”を知り、そのストックを積み重ねていくと、今度は“あなたはどう思う?”という意見を演奏で求められる瞬間が来ます。そこで何を出すかが、その人のセンスなんだと思います」

最後は参加者一人一人へサイン&ツーショット写真撮影に応じ、終始和やかな雰囲気でイベントは終了した。

終演後に神田に話を聞くと、「専門学校でのイベントということで、ミュージシャンを目指す人になるべくたくさんのことを伝えてあげたいと思い、トークとQ&A重視の内容にしました」とのこと。その思いは、参加者にしっかりと届いたに違いない。

「連載を始めた頃は、まさかこんなイベントができるなんて思ってもいませんでした。甲陽にいてよかったと思うし、ご縁に感謝です。引き続き楽しいドラム・ライフを送っていきましょう!」

*本イベントは、神戸・甲陽音楽&ダンス専門学校の公式ブログにも掲載されています!
こちらも併せてチェック!(https://www.music.ac.jp/contents/blogs/event/20230205_6693

【Information】
「神田式 一生使えるグルーヴのレシピ」
定価:2,420円 (本体2,200円+税10%)
著者:神田リョウ 
仕様:A4変形判 / 112ページ
品種:ムック
ISBN:978-4-8456-3802-4
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