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Archive Interview – スティーヴ・ガッド #3

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine 
  • Interpretation & Translation:Akira Sakamoto
  • Photo:Eiji Kikuchi
  • Special Thanks:Billboard-LIVE Tokyo、COTTON CLUB

神保は独自のことをやっているのが素晴らしいと思う
他人に敬意を払える人だしね(スティーヴ)

●スティーヴが神保さんのことを最初に知ったのは、いつ頃のことですか?

SG 彼がヤマハの人達と一緒に初めてアメリカへ来たときだね。ずいぶん昔のことだけれど、あれはいつだったっけ?

AJ 1980年代半ばでしたか。

SG 君のことはハギ(編註:元ヤマハの萩原 尚氏/2004年同社を勇退)から聞いて知ったんだ。絶賛していたからね。「神保はあなたのプレイが大好きなんですよ。神保は素晴らしいプレイヤーです」と言っていた。当時ヤマハはエレクトロニック・ドラムの開発にも取り組んでいたから、君はその意味でも完璧なドラマーだったんじゃないかな。

AJ ありがとうございます。萩原さんには大変お世話になりました。初めてあなたとお会いしたのは、東京プリンスホテルでクインシー・ジョーンズのレセプション・パーティーが開かれたときのことでした。そのとき、あなたはクインシーと演奏されているのではなかったのですが、同じホテルに泊まっていらしたんだと思います。

SG 東京プリンスホテルのことは覚えているね。だけど、ずいぶん昔の話だなあ。

●最初に神保さんのドラミングを聴いたときの印象はいかがでしたか?

SG 恐れおののいたよ(笑)。

AJ またまた、ご冗談を(笑)。

SG 本当さ。素晴らしい演奏だったからね。独自のことをやっているし、いろいろなところから影響を受けている。僕らはみんなそうなんだ。僕も誰かの演奏を取り入れたりしているからね。彼が何か気の利いたことをやるのを聴けば、僕も家でそれを練習してみる。僕がやっていることを同じように叩ける人も何人かいるけれど、神保は独自のことをやっているのが素晴らしいと思う。他人に敬意を払える人だしね。僕にとっては、それも大切なことなんだ。誰かに会ったとき、たとえその人が良いプレイヤーじゃなかったとしても、人物として立派なら、僕にとっては貴重な経験になるから。僕は心根の良い、謙虚な人が好きなんだ。

●だからこそ、他人から学ぶことができるんですね。

SG それもそうだし、僕も気楽でいられるしね。

基本的なドラムの
“ヴォイス”は
あなたから得たもので
それを自分なりにアレンジしたのです
(神保)

SG でも、今は君が僕のセンセイだよ(笑)。

AJ (笑)。僕は特に、チック・コリアのアルバムから多くのことを学びました。「夜の精(原題:Night Sprite)」(『妖精』収録)の演奏とか。覚えていらっしゃいますか?

SG よく覚えているよ。ホーン・セクションなんかも含めて、ライヴと同じ一発録りだったからね。ボブ・ジェームスとはまったく違う。

AJ 編集もなしで?

SG バーニー(カーシュ/エンジニア)がソロの部分をエディットしたかもしれないけれど、基本的には一発録りだよ。あれもまた、挑戦しがいのある仕事だった。譜面を見ながら他の人達と一斉に演奏したんだからね。

AJ ものすごく難しい曲ですよね。「夜の精」は特に。

SG でも、チックの曲は単に難しいだけじゃなく、すべてに音楽的な意味があるんだ。彼のリズムには、僕が聴いて育ったエルヴィン・ジョーンズなんかに通じるものがある。ドラマーでもあるチックは、エルヴィンみたいなリズムが好きだからね。

AJ 『スリー・カルテッツ』のCDのボーナス・トラックには、チックのドラムとマイケル・ブレッカーのデュエット(「コンファメーション」)が入っていますが、素晴らしい演奏ですよね。

SG 素晴らしいよね。

AJ あれは、あなたのドラム・セットを叩いているんですよね?

SG そうだよ。僕はチックがドラムを叩くのを見たお陰で、トニー・ウィリアムスなんかのアプローチが理解できたんだ。トニーは他の誰とも違うやり方でドラムスを叩いていた。でも、僕は彼の演奏をレコードで聴いたことはあっても実際に見たことがなかったから、どうやっているのかよくわからなかったんだ。それで、やはり正統派とは違うチックのドラミングを観察することは、トニーのようなドラマーがやっているような、ルースなやり方を理解するのに役立ったんだ。

リズム&ドラム・マガジン20年7月号

ヤマハから発売したスティーヴ・ガッドのシグネチャー・ドラムについては、本号のNew Productsでも紹介しています!

併せて、ドラマガWebでも製品レビューを公開中! 以下のリンク先で、ぜひチェックしてみてください!

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New Product -【YAMAHA】 Steve Gadd Signature Snare Drum【Review】

◎Profile
スティーヴ・ガッド:1945年生まれ。ニューヨーク州ロチェスター出身。チャック・マンジョーネとの共演で頭角を現し、3年間の軍隊生活を経て、スタジオ・ミュージシャンとしての活動を本格始動。チック・コリア、ポール・サイモン、ミシェル・ペトルチアーニ、ジェームス・テイラー、エリック・クラプトンなどの膨大な数のアーティストをサポート。近年は自身がリーダーを務める“スティーヴ・ガッド・バンド”でも活躍。

◎Information
Steve Gadd HP Twitter