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Archive Interview – スティーヴ・ガッド #3

  • Interview & Text:Rhythm & Drums Magazine 
  • Interpretation & Translation:Akira Sakamoto
  • Photo:Eiji Kikuchi
  • Special Thanks:Billboard-LIVE Tokyo、COTTON CLUB

スティーヴ・ガッド×神保 彰
ドラミングの至高へと向かう2人の名手

スティーヴ・ガッドのシグネチャー・スネア “YSS1455SG” 発売記念アーカイヴ・インタビューの第三弾は、リズム&ドラム・マガジン創刊30周年記念として2013年2月号の表紙を飾ったスティーヴ・ガッドと神保 彰のスペシャル対談! ここではドラムの極地を目指す2人が、お互いにどのように影響を受けたのかを語り合ったセクションを公開します!

あなたの演奏が入っているボブ・ジェームスの『はげ山の一夜』
僕はこれを聴いて
ドラムに開眼したんです(神保)

●まず神保さんが影響を受けているというスティーヴのドラミングについてお話を聞いていきたいのですが?

SG 君が僕に影響を受けているというのは、いろんな人から聞いている。それは僕もうれしく思っているよ。でも、僕も君から影響を受けているんだ。お互いに影響し合っているというわけさ。

AJ 光栄です。今日は僕が昔真剣に聴き込んだあなたの演奏が入っているアルバムをいくつか持ってきました……まずボブ・ジェームスの1枚目(『はげ山の一夜』)ですが、この作品のことは覚えていらっしゃいますか?

SG 覚えているよ。「はげ山の一夜(原題:Night On Bald Mountain)」が入っているやつだよね。

AJ そうです。1972年の作品ですが、僕はこれを聴いて(ドラムに)開眼したんです。

リズム・セクションだけで
曲の全体を想像しながら
演奏しなきゃならなかった
そこが難しかったね(スティーヴ)

SG あのアルバムの中で一番よく覚えている曲は、「はげ山の一夜」だね。

AJ あの曲が目玉でしたからね。あなたの演奏も素晴らしかった。

SG あれはまず、リズム・セクションだけで録音して、ホーンは全部オーバー・ダブしたんだ。ボブにはすべてのパートのアレンジがわかっていたけれど、僕らは曲の全体を想像しながら演奏しなきゃならなかった。そこが難しかったね。

AJ アレンジはとても精密でしたよね。

SG ボブ・ジェームスだからね(笑)。

AJ でも、あなたの演奏は完璧で、インプロヴィゼーションも見事にまとまっていましたよね。

SG ボブとの仕事でいつも印象的なのは、彼にはやりたいことがはっきりと見えているということなんだ。彼は自分の求めるものがよくわかっているし、それをミュージシャン達に上手に伝えることができる。お陰で、僕も常に彼のやりたいことが理解できるし、あとで彼がどんなパートを加えるかも予測がつくんだ。あのときにも、彼は「この部分にはホーンが入って……」と説明してくれたから、僕らはビッグ・バンドでやっているような感じの演奏をしたんだ。“この部分は開放的な演奏をして、この部分にはたくさんヒットを入れて……”と考えながらね。そのために、僕らは時間をかけて曲の形式を覚えたんだ。

AJ リハーサルも入念になさったんですか?

SG うん。形式を確認して、演奏しながら細かい部分に変更を加えていった。譜面を見て頭に思い描けることは限られているから、みんなで実際に音を出してリハーサルをしたときに良いアイディアが出れば、彼はそれを取り入れることもあった。

AJ みんなのアイディアも加えていったんですね。

SG そういうところはオープンだよ。彼は耳もすごく良いし、リハーサルで出てくるアイディアを自分のアイディアの中で生かす方法も心得ている。そして、自分の求めるものをバンドに伝える能力にも優れている。アクセントをどこにつけるか、どこで音量を上げるか、どこにソロが入るかといったことをね。でも、あの曲は、あとからたくさんの人達がオーヴァー・ダブすることになっていたから、そのぶん、結果を想像しながら演奏するのは難しかったんだ。