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Archive Interview – スティーヴ・ガッド #2

  • Interview & Text:Fumi Koyasu、Rhythm & Drums Magazine Photo:Taichi Nishimaki

オープンであることが何よりだよ
変な主張をするよりずっといい

●私はベースをプレイするんですが、リズムを作り上げるとき、ベース・プレイヤーへの注文みたいなものはありますか?

○僕は特別にベース・プレイヤーと2人だけで練習したことはないんだ。楽しいかもしれないけど、必要かどうかはわからない。“ベース・プレイヤーはこうあってほしい”みたいなことはないね。あまりにいろいろなタイプの、みんなそれぞれいいベーシストがいるんで、僕には何とも言えない。でも、ともに音楽を楽しめる、そんな相手が好きだ。君はベーシストとしてどんなドラマーが好き?

●どんなタイプでもいいけど、辺に頑固なドラマーがいるでしょう。“俺のポリシーはこういうドラミングだ。周りはこれについてこなきゃダメ”とあるスタイルに固まったような人は嫌ですね。

○うん、それは音楽的じゃないよね。もちろんあるスタイルに夢中になったっていいけど。例えばデイヴ・ウェックルを聴いたあと、感激して彼のフレージングを真似するとか。でもそういう練習はリハーサル・スタジオでやってほしいね。ちょっとマニアックに、ガツガツやりまくる時期は僕にもあったよ。誰にでもある。若いうちはみんなそうなんだ。でもいつかそれを卒業するものだ。僕にだっていろいろ難しいものを叩きたがる時期があった。でも歳をとるほどシンプルになる。そんなもんだ。

●どうやって変化していくんでしょうか?

○他の楽器をよく聴いているうちに、フレキシブルになるんじゃないかな。オープンであることが何よりだよ。変な理想を主張するよりもずっといい。俺はこう、なんて決めつけてたら成長しないじゃない。でも、誰でもいつかはそのことに気がつくんじゃないかと僕は信じてる。でも、もし君がそういう頑固なドラマーに成長を阻まれるようだったら、別のドラマーを探すべきだ。

●多くの若いドラマーがあなたの影響を受けていますよね。代表的なのはデイヴ・ウェックルですが……。

○本当かい? 信じられないよ。だとしたらとても光栄だ。うれしいよ。だって今、僕が彼らから影響を受けてるんだから。デイヴ・ウェックル、デニス・チェンバース、オマ-・ハキム、チャド・ワッカーマン……みんなグレイトなドラマーだ。よく聴いているよ。

●でも、あなたのビート感はとてもスペシャルなものですから、若いドラマーが例えばとてもシンプルなパターンをコピーしようとしても、きっとうまくいかないでしょうね。

○そんなにスペシャルだと思ってくれてとてもうれしいよ。でも僕自身、自分のプレイは分析してはいないんでね。単にいい音楽を吸収して、スペースのあるシンプルなプレイを心がけている。本当はやっぱり周りのミュージシャンのおかげだと思ってるんだ。

●レコーディングのときには、どんなふうに曲あるいはドラム・パターン作りに取りかかるんですか?

○だいたい、みんなでいろいろトライして話し合ってる。僕からドラム・パターンを決め、ベーシストにこうやってくれないかと頼むこともあるし、その反対もある。相手のことを知らないうちにハッキリとイメージづけることはないんだ。それぞれ人間なんだから、その人間性を尊重して音楽を作るんだ。エゴ・トリップのドラミングは左右されるんだ。実は僕はとても影響を受けやすくて、僕はフレディとしかやらないドラミングを自然にやってる。自動的にそうなっちゃうんだ。ベーシストによって僕のプレイもとても変わるんだよ。

●そういう柔軟性のあるドラマーがもっと増えてくれれば。

○どうもありがとう。何度も言うようだが、僕は“音楽”が好きなだけなんだよ。

●日本のドラマーはどう思いますか?

○いろいろな音楽を聴いてることが彼らのプラスになってると思う。ヒノのブラザー(日野元彦氏)を知ってるよ。彼とか、ポンタとか、車椅子のジャズ・ドラマー、トガシ(富樫雅彦氏)。

●富樫さんのようなフリー・ジャズっぽい、ノン・グルーヴものは好きですか?

○好きだよ。僕も昔やってみたことがある。ただ僕にはグルーヴものの方が向いているようだ。

●このライヴのあとは?

○ポール・サイモンのレコードをやる。そのあと彼とツアー。その他に、ガッド・ギャング、リチャード・ティーなどのアルバムに取り組むだろう。でもとりあえずはポール・サイモンで忙しくなりそうだ。ところで、君は富山に住んでいるのか。

●いえ、ゆうべ東京からここへ来ました。

○わざわざこのインタビューのために来てくれてありがとう。あまりちゃんとした答えができたどうか自信がないんだけど、どうかこのために来たことを後悔しないでくれるといいね。

●言葉よりも、あなたは音楽ですべてを表現していますから。いろいろと若手のドラマーの知っておくべきことを教えてくれて、どうもありがとう。

リズム&ドラム・マガジン20年7月号

ヤマハから発売したスティーヴ・ガッドのシグネチャー・ドラムについては、本号のNew Productsでも紹介しています!

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New Product -【YAMAHA】 Steve Gadd Signature Snare Drum【Review】

◎Profile
スティーヴ・ガッド:1945年生まれ。ニューヨーク州ロチェスター出身。チャック・マンジョーネとの共演で頭角を現し、3年間の軍隊生活を経て、スタジオ・ミュージシャンとしての活動を本格始動。チック・コリア、ポール・サイモン、ミシェル・ペトルチアーニ、ジェームス・テイラー、エリック・クラプトンなどの膨大な数のアーティストをサポート。近年は自身がリーダーを務める“スティーヴ・ガッド・バンド”でも活躍。

◎Information
Steve Gadd HP Twitter